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陰陽洲~和風VRMMORPG、闇鍋仕立て~  作者: 鉢棲金魚
第五話 新参巫女と出戻り武士
34/37

其の六

何とかここまでたどり着けました。

お付き合いいただいた皆様、本当にありがとうございます。


本日は、4回更新。2回目以降は、19時頃の予定です。

できれば、最後までお付き合いただけると幸いです。

◆◇◆◇◆








 ―――そろそろ再戦(リベンジ)するか、とセキは言った。


    今度は勝ちましょう、とツカサはうなずいた。









◆◇◆◇◆



 宵闇の中、はらはらと雪が舞っている。


 風が吹いて、薄っすらと橋を覆っていた雪が舞い上がる。

 立ち上った雪煙の向こうには、いつもと変わらぬ様子で佇む人影がひとつ。


「ちゃんといるみたいだな」

「はい」


 橋の中ほどにその姿を捉えて、セキとツカサは、ほっと息をついた。

 それなりに意気込んで来たのだ。

 これで誰かに狩られていたりしたら、出鼻をくじかれるどころの話ではない。


 橋の中ほど。六〇から七〇メートルほど先に、その姿はあった。

 白麻の五条袈裟で頭を包み、黒い僧衣の上に黒糸威の胴巻きを身に着けた巨漢。

 その手に大薙刀を持ち、腰に大太刀を一振り佩いている。


『鬼若之残影/脅威度:四』


 前回とは逆方向、平安京側から橋を渡り始めた二人に、厄災の名が告げられる。

 同時、ツカサがそっと龍笛を手に取った。


 ―――夜の静寂(しじま)に、神へと捧げる調べが波紋を広げる。


 橋をゆっくりと進みながら、少女は笛の音を響かせる。

 いよいよ牛若丸じみてきたなと、セキはこっそりと口の端をつり上げた。

 新調したばかりの太刀に触れながら思う。


(負けられないな)


 以前とは違う。

 初期装備だった前回に対し、いま身に着けているのは、初伝級のマレビトとしては十二分な逸品だ。


 心技体の総計は、八から十二へと増している。

 増えた特技枠には、速度による威力補正を引き上げる【疾風剣】、鉄輪ノ井での反省から身に着けた対霊攻撃【御魂断ち】、そして、今回の戦いを見越して取得した重攻撃【剛の一閃】が備わっている。

 また、新たに【連継足(れんけいそく)】を取得、実装したことで、歩法の技も使い方に幅が広がった。


 さらには、八幡大神の加護もあるのだ。

 これで負けては、さすがに情けない。


 笛の音が止まる。

 視線を向ければ、傍らの少女は薄っすらと光をまとっていた。


 ―――【神道】の術法を行使した巫女が、こちらへと目を向ける。


 闇の中、淡く浮かび上がる金色の瞳。

 憑霊―――神の威を借りて強化状態にある彼女は、わずかに微笑んでうなずいた。

 その手には、弓が握られている。


「よし」


 うなずきを返して、セキは、ツカサを背後に先行する。

 そして、五条大橋の中ほどで厄災と対峙した。

 

 源九郎義経が郎党、武蔵坊弁慶を模した厄災―――鬼若之残影が告げる。


「この橋通りたくば、その刀、此処に置いていけ」

「はン」


 獣の唸り声のような低く、圧のある恫喝。

 それを受けて、セキは鼻で笑ってみせた。太刀を抜き放ち、切っ先を厄災へと向ける。


「むしろ、お前が置いていけ」


 前回と同じ問答。

 その内容を受けて、鬼若之残影はひとつうなずいた。

 うなずいて、次の瞬間、橋板を蹴って飛び掛かってきた。


「――――」


 大薙刀を振り上げて、宙高く跳ねる荒法師。

 前回は、セキとツカサが左右に分かれるように回避した一撃だ。

 それを、今回はセキ一人で迎え撃つ。

 否。


 ひょう、と夜の静寂に音が響いた。

 直後、跳躍の頂点で荒法師が姿勢を崩す。

 大薙刀の構えが解かれ、代わりに頭を庇うような姿勢を取っている。

 その腕には、矢が三つ刺さっていた。


(さすが―――)


 弓矢の神たる八幡大神の威を借りる【神道】が憑霊術。

 その効果の一つは、【武器習熟/弓】による【行動支援】の大幅な強化となる。

 その力を最大限に活用し、ツカサが一呼吸で三射を行ったのだ。


 狙っていたとはいえ、彼女が魅せた技に舌を巻きながら、セキは橋板を強く蹴った。

 見据えるのは、こちらへと落下中の荒法師。

 ―――【疾風足】起動。

 大加速の勢いを上方へと捻じ曲げて、セキは矢のように荒法師へと瞬発した。


「―――らぁ!!」


 事前の打ち合わせどおり、最初の大跳躍を狙って初撃を叩き込む。

 すでに姿勢を崩している荒法師は対応できない。

 セキの太刀が、胴を薙いで背後に抜けた。

 【疾風剣】の一撃に、ダメージエフェクトが盛大に飛び散った。


「が、ァ!?」


 橋上に墜落した荒法師が、膝をつく。

 それを空中から見下ろして、セキは思う。


(ツカサの【風踏足(ふうとうそく)】があったら、追撃できたな)


 まあ、ないものねだりをしても仕方がない。

 そう考えて苦笑するセキの耳に、ひょうと再び矢音が届いた。


 落下直後の荒法師へと、ツカサが矢を射かけている。

 一息で三射。

 だが、流石に甘くはないらしい。膝をついたまま、荒法師が大薙刀で一掃する。


(さて、タゲはどっちに向いているかな)


 思いながら、着地する。

 今は、挟み撃ちの状態だ。ツカサが矢を射かけ、反対側からセキが太刀を手に斬り込む。


「まあ、そうなるよな」


 さすがに、一方に背を向けたままという選択肢はないらしい。

 荒法師は、欄干を背にするよう立ち位置を変える。

 その瞳が、自分に向いているのを見て取って、セキは「そりゃそうだ」と笑った。


 矢の三射よりも、セキの一撃の方がダメージが大きい。

 何しろ交差法(カウンター)で【疾風剣】を叩き込んだのだ。

 荒法師の落下速度を喰って叩き込まれた一撃は、ただ【疾風足】の加速を載せるよりも大きく威力を増している。

 まして、今のセキの手には、新調された太刀がある。


『鋼之太刀/等級:大業物(・・・)


 本来は、最下級の束物がほとんどで、一級上の業物が上限となる鋼之太刀。

 その限界を超えた規格外品である。


 神鋼製の太刀などには当然及ばないものの、初期装備どころか鉄輪ノ井で使用したレンタル刀よりも強力な逸品だ。単純な攻撃力で言えば、初期装備の倍に届く。

 まったく、とセキは胸中で苦笑する。


(新人マレビトに何て代物を持たせるんだ)


 新人が持つ武器としては、考え得る最大限。

 上限突破の規格外品を用意した宗近に感謝して、セキは真っ直ぐに突撃した。





◆ステータスについて

 名前:セキ 

  心:2 技:4→7 体:3

   体力:1075

   気力:1075→1625

   力:50→72 速:50→72 耐:43

   意:43→65 識:36→54 霊:24

   巧:40→70 知:40→70

 特技

  心:【堅志】【霊視】

  技:【武器習熟/太刀(初伝)】

    【軽業(初伝)】【疾風足】

    【疾風剣】【御魂断ち】New!

    【剛の一閃】New!【連継足】New!

  体:【大力】【迅速】【頑強】


 名前:ツカサ 

  心:3 技:4→7 体:2

   体力:600

   気力:1250→1800

   力:43→65 速:43→65 耐:24

   意:50→72 識:42→60 霊:43

   巧:40→70 知:40→70

 特技

  心:【堅志】【大霊】【霊視】

  技:【武器習熟/薙刀(初伝)】

    【神道/修祓】【神道/憑霊】

    【風薙ぎ】【風踏足】New!

    【楽器演奏】New!

    【武器習熟/弓(初伝)】New!

  体:【大力】【迅速】


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