其の一
第四話開始となります。
短いので、其の二も一緒に投稿。
鴻臚館の前庭で、赤々と火柱が立ち上っていた。
井桁型に組み上げられた薪が、天を焦がす勢いで燃え盛る。
その周囲では、いくつもの影が踊っていた。
たとえば、火柱を挟んで、ぐるぐると回る馬と兎。
馬は男。馬の頭に赤の褌ひとつ。双の剣を振るい、火の粉を裂いて舞い踊る。
兎は女。兎の耳に肩も露な艶姿。白銀の扇を振るい、火の粉を従え舞い踊る。
たとえば、篝火の四方で回転する、輝く坊主。
頭を地に、足を天に。逆しま姿で、独楽のように狂々と。
黄金の輝きを身にまとい、陀羅尼を唱えて狂々と。
その周りに雷が落ち、火柱が上がるのは、果たして神仏の加護か魔性の業か。
たとえば、それらを取り囲む混沌。
侍がいる。僧侶がいる。陰陽師がいる。巫女がいる。修験者がいる。鍛冶師がいる。薬師がいる。よく分からない姿の者達もいる。
皆一様に浮かれていた。地べたに座り込み、酒や肴、菓子を手に笑い合う。
誰かの調子外れな歌声が、妙なる調べと混じり合う。
琵琶をかき鳴らし、女が金切り声を上げる傍らで、男が敦盛を舞っていた。
雷が落ちて、炎が吹き上がった。荒ぶる風が、氷竜巻となって暴れ狂っている。
剣の群れが宙を飛び回り、放たれた矢が雲に当たって爆散した。
それを見た酔漢どもから、やんややんやと喝采が上がる。
「サバトかな?」
「新歓コンパです」
鴻臚館の前庭―――大石柱の前に【縮地】によって転移してきた少女の呟きに、セキは端的に言葉を返した。
少女が信じられないといった目を向けてくる。
「……なんて?」
「新歓コンパ」
中堅層のマレビト数名が、とある新参マレビトと仲良くするために開いた宴。
題して『新人マレビト歓迎コンパ』
当初は十名に満たない、ちょっとした食事会程度のものだったのだが、参加者の一人が「キャンプファイヤーをやるでござる」とか言い出したせいで酷いことになった。
まず、何事かと近寄った者が宴に引きずり込まれ、それを見た物好きが飛び入りを宣言。さらに、我もと続く者が現れ、気が付いた時にはご覧のあり様だ。
眼前で荒れ狂う炎と雹と雷から目を逸らし、セキはそんな経緯を説明した。
(鴻臚館の中で良かった)
ここが東市だったなら、今頃は検非違使達による大捕り物となっていただろう。
話が終わると、少女は一つ頷いた。
「さっぱり分からん」
「ですよね」
と、再び大石柱が青い輝きを放つ。
光が弾けると、今度は男が一人現れた。
彼は、目前の光景にぎょっとした表情を浮かべ。
「ええと、悪魔でも喚ぶのかな?」
「新歓コンパです」
セキはため息をついて、同じ台詞を繰り返した。
―――男は、なるほどとうなずくと、奇声を上げながら飛び込んでいった。




