スヴェン4
1.2話辺りを大幅に変更しました。
母親である王妃はワッと泣き始めた。
「呪いとは、いったいどの様な呪いなのだ?」
「分かりません父上。ただ、あの女は"ステキな夜を"と言っていました。それが意味する物が何であるのか、どんな作用があるのかを僕は知らなければなりません」
「う〜む‥」
と唸って国王はしばらく考え込む。それからスヴェンの顔を見て言った。
「明日朝一番に神殿へ向かいなさい。ラドウィグには話をしておくから。お前の言う通り、早急に呪いを知る必要がある」
「分かりました。ラドウィグ叔父上の力を借ります」
「今日は大変な目に遭ったのだから、もう休みなさい。明日は早い。さあ、お前ももう泣き止んで、スヴェンにキスをして休ませよう」
父に言われ母は涙を拭き、スヴェンの頬、額にキスをして抱きしめた。
「あなたがどうなろうと、私はあなたの母親で、あなたを愛しているわ。おやすみなさいスヴェン‥」
「おやすみなさい母上。僕も愛してるよ」
国王もスヴェンを軽く抱きしめ、そうして2人は部屋から出ていった。
部屋に残ったゴーシュに
「お前ももう休め。明日は早い」と言うと、ゴーシュは被りを振り動かない。
「お前がいたんじゃ眠れないだろ」と、ちょっと頬を膨らませてみせると、ゴーシュは渋々スヴェンの言う事を聞いた。
但し、続きの間で眠るという条件で。
寝る前に軽く軽食を摂り、入浴してホットミルクを飲んだ。
安眠出来る様、ゴーシュが用意してくれたのだ。
ゴーシュは多少頑固な所はあるが、歳の割に大人びて博識であり、文武両道に優れていた。
最もそうでなければ、王子の従者には選ばれないのだが。
最初は4人いた従者をゴーシュだけにしたのは、スヴェンの希望だった。
スヴェン自身も腕に覚えがあり、特に従者を必要としなかったからだ。
ゴーシュはスヴェンのお気に入りであり、スヴェンにとって兄の様な存在なのだ。
何でも出来るスヴェンを「油断は禁物です」と言って、いつも諭してくれる。
今日ほどゴーシュの言葉が身に染みた事はない。
完全に油断していた。
あの時、せめてゴーシュが隣にいてくれたら‥
過ぎた事を悔やんでも今更だ。
二度と同じ失敗はしない!!そして必ず呪いを解いて、あの女から禁書を奪い返す!!
そう硬く誓って、スヴェンは眠りについた。
‥‥
「又だ‥」と、スヴェンは思った。
絶望的な闇に飲まれ、ズブズブと闇の底無し沼へ飲み込まれていく。
呻き声は耳じゃなく、頭に直接響いてくる。
もがいても身体の自由は奪われたまま、ただこの状況を受け入れる他、成す術がない。
深い深い絶望感に飲み込まれそうになる。
息が苦しい。誰か助けて‥
「‥さ‥ま‥!!」
「ス‥ェン‥様!!」
「スヴェン様!!」
ゴーシュの顔が目の前にある。
ヒューと喉を鳴らし、激しく咳込む。
ゴホゴホとやっている背中を、ゴーシュが優しく摩り、水差しから水をコップに注いで渡してくれた。
一気に水を飲み込み、肩で息をする。
「大分うなされておりました。それに、ご自身で首を絞められて‥私は慌てて叩き起こしました」
急いでベッドから降りて姿見を覗くと、首に赤い指の跡がくっきりと残っている。それに頬も赤く、いくらかの痛みがある。
ゴーシュは文字通り"叩き起こした"のだ。外は朝焼け。まだ夜は明け切っていない。
「‥ゴーシュ」
「はい」
「痛かったが助かった。でも次は別の方法にしてくれ」
「次と、言いますと?」
「まだはっきりとは分からないが、夜とは悪夢の事らしい」
「!!!!」
「僕に掛けられた呪いは、どうやら悪夢のようだ」
2人はそのまま眠らずに、出掛ける準備を始めた。
空が白み始めた頃、2人は早目の朝食を摂る。
ゴーシュはどんな時でも、必ず食事を摂る様にスヴェンに言う。
何でも「腹が減っては戦が出来ない」からだそうだ。
朝食を済ませてから、馬車の用意が出来次第乗り込むと、近衛騎士達が5人馬に乗ってやって来た。
「本日は我々が護衛させて頂きます」
普段こういった大袈裟な護衛は嫌いだったので、大抵ゴーシュと2人で出掛けていたのだが、ゴーシュに「油断は禁物です」と言われ、それを受け入れる事にした。
何と言っても昨日の今日だ。
「これからはこれが当たり前になるんだろうな‥」
そう呟き、スヴェンは少しウンザリした。
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