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はぐれ王女と魔術師  作者: 栗須まり
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スヴェン

過去から組み立てていきます。

スヴェン・ファン・フォータム・ラドニア。キアラの名前のフォンとスヴェンのファンは同じ意味で、〜のという意味になる。

かつて両国はそれぞれ先祖を妖精と精霊とし、アルク王国は精霊、ラドニア王国は妖精の血を受け継いでいる。

その為、両王家は代々魔力を持つ者が時々現われ、その者が王位に着くと国は非常に栄えた。

両国は友好関係にあり、国境もあって無い様なもので、商人の出入りや王族の留学等が頻繁に行われている。

キアラの父であるアルク国王も、皇太子時代ラドニアに留学経験がある。

それというのも、ラドニアには魔力に関する資料が膨大にあり、周辺諸国で既に失われた魔法が未だ生かされている為だ。これも一重に王家が代々大切に魔法を保護してきた努力の賜物である。

フォータムは皇太子でラドニアは国名。

つまり、スヴェンの名前はラドニアの皇太子であるという、称号と身分を表す物なのだ。


そんな彼が自分を"魔術師"だと言い、アルクとラドニアの国境付近に広がる通称"魔の森"と呼ばれるこの森にいるのは、11年前のある出来事が原因である。


彼は現在19歳で、あと3カ月で20歳を迎える。彼が産まれた時、待望の男子という事もさる事ながら、近年稀に見る魔力の持ち主だとラドニアの優秀な魔術学者達がこぞって判定を下した。


国王や王妃、国中が喜びに歓喜した。実際彼は非常に優秀で、7歳の時には既に魔術学者達から「もう教える事が何もない」と言われる程だった。


彼は魔術だけでなく、色々な物に興味を示し、剣や弓といった武術や、語学・経済学等手当り次第に吸収し、周辺諸国から「ラドニアの完璧王子」と言われ、脅威の存在になっていった。


そんな彼だが、本人は全くそれらの事は意に介さず、冗談好きのイタズラ好きな同年代の少年達と同じ愉快な性格の持ち主だった。

1つ年上の現在従者であるゴーシュは、度々スヴェンのイタズラの被害に遭っていた。

時には国王もイタズラの被害に遭い、外出禁止を言い渡される事もしばしば。


11年前のあの時も外出禁止を言い渡され、暇潰しに王家所蔵の図書館に籠り、手当り次第に魔術書を読み耽っていた。


王家所蔵の図書館なだけあって、限られた人間しか利用出来ず、人影はまばらでシンとした空気に包まれている。

何冊目かの本を読み終わると、流石に飽きてきた為、何か面白い事はないかと辺りを見回していた。

すると、目深にフードを被り長い黒のローブを纏った人物が目に付いた。


最初はただの好奇心からその人物を観察していたのだが、どうも周囲を警戒しているような、キョロキョロと落ち着かない素振りを見せている。


不審に思ってその人物に見付からない様に、そっと後を付いていくと、本棚の角をその人物が曲がった。

そこでハタと気が付いた。「この先は禁書だ!!行かせてはならない!!」

慌てて追いかけるとその人物は立ち止まり、スヴェンの方へクルリと向き直り、目深に被ったフードを下ろして笑顔でこちらを見て言った。

「聡いのも考え物。全て計画通り。大人しくしていれば全てを手に入れられたのに」


声が出なかった。フードを下ろした人物は腰までの黒髪に鼻筋の通った美しい顔立ちの女性で、黒く大きな目は刺すほどに強い光りを蓄え、口元は笑みを浮かべている。だというのに、あろう事かその笑顔が恐ろしくて、身体中の血が止まったかのように、体温が奪われていく。

スヴェンは生まれて初めて恐怖を感じた‥




読んで頂いてありがとうございます。

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