第4話
2人の後について入った部屋は、小さめなキッチンがあり、4人程が座れるダイニングテーブルがあった。
一般庶民の家よりいくらか広く、少し裕福な商人の家といった感じの建物の様だ。
「君はまだまともな食事を摂るのはやめておいた方が良い。胃がびっくりしてしまうだろうから」
と、輝くばかりの柔らかい笑顔でアレス様が言った。
テーブルには既に料理が用意されており、部屋中美味しそうないい匂いが充満している。
アレス様に誘導されるまま、私の為に用意してくれた席に着くと、固形物が殆どないスープの様な物が席の前にあった。
「‥ありがとうございます」
「遠慮はしなくていい。さあ、食べよう。我々も腹ペコなんだ」
茶色い髪の男性がそう言い、アレス様の向かいの席に着き、既にパンを手にしていた。
食べ終わった後、またアレス様についていく形で隣の部屋へ入った。
どうやらここはリビングの様だ。2人掛けソファが一つと1人掛けソファが二つ、真ん中に四角いテーブルが置いてある。
「さ、掛けて」
「‥はい」
私は1人掛けソファへ腰を下ろした。ちょうどそのタイミングで、茶色い髪の男性がトレーにお茶を3つ乗せて入ってきた。
「私も手伝います」と言って席を立とうとしたら、アレス様に静止されたので、仕方なく座ったまま渡されたお茶を口にした。
甘い香りの不思議なお茶だ。目をパチパチさせていると
「君のお茶は体力回復の薬草茶だよ」
とアレス様が説明してくれた。
お茶を飲みながら、暫くの沈黙の後、アレス様が口を開いた。
「さて、それでは本題に入ろう。今から君にはいくつか質問をするが、絶対に嘘をつかないと誓って貰いたい。どうしても答えられない事柄があった場合は、直ちにここから出て行って貰う。約束してくれるかい?」
「‥はい‥」
もっともだ!とキアラは思った。見ず知らずの自分を拾って食事まで与えてくれたのだ。その上事情まで聞いてくれようとしている相手に、答えられないとはあまりにも失礼だ。今は何も恩返し出来ない変わりに、せめて正直に答えようと思った。
信じてくれるかどうかは分からないが‥
「最初の質問だ。君の名前は?」
「キアラです」
「年齢は?」
「17になりました」
「ふーん。姓はなんていうんだい?」
「‥私の正式な名前は、キアラ・フォン・アルクといいます」
アレス様の顔色が変わった。
そばに立っていた茶色い髪の男性は訝しげな表情を浮かべている。
「誓って嘘偽りを申しません。私はアルク王国の王女キアラ・フォン・アルクと申します」
どんな反応が返ってくるかとドキドキしながら2人を見る。自分で王女だと言っても、庶民の男の子の薄汚れた服を着て、夜中に森で倒れている王女など聞いた事がない。髪はきっちりまとめて帽子を被っていたのだが、助けられた時なのか?いつのまにか解けて、胸までの長さの緩いウエーブがかったシルバーブロンドが、辛うじて女であるという事を主張している。
「合格!!」
突然アレス様が大きな声で叫んだ。
これ以上ないくらいまばゆい満面の笑みだった。隣で立っている茶色い髪の男性は、困惑した様な複雑な表情をしている。
とりあえず嘘をついていないとは認めてくれた様だ。
「では質問を変えるよ。なぜ森にいたんだい?」
少し躊躇いはしたが、正直に答えよう。
「魔術師を探していたのです。祖母の夢のお告げに従い、ここへやって来たのです」
アレス様は一瞬驚いた顔をしたが、すぐ元通りの笑顔で言った。
「君は非常に運がいい」
茶色い髪の男性がアレス様を見て片方の眉をピクッと上げる。何か言いたげな表情だ。
「僕がその魔術師だ」
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