↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
はぐれ王女と魔術師  作者: 栗須まり
PR
36/37

オライアス領

レガーラ城を出発したゴーシュ達は、オライアス領を目指していた。

先を急ぎたいであろうゴーシュにとって、馬車のメリダは足手まといだろうと、メリダは終始気にして、申し訳なさそうな顔をしている。

しかしゴーシュは苛立ちもせず、細やかにメリダに声をかけては体調を気遣っていた。


「メリダ殿、疲れていませんか?」

メリダは表情や仕草で「大丈夫」と「ありがとう」を伝えてくる。

途中休憩しようかというゴーシュの提案に、メリダは首を横に振った。

これ以上遅れるのは、申し訳ないと思っているのが伝わって来る。

これがもしゴーシュの姉妹達であったならば、やれ腰が痛いだの退屈だのと文句を言っただろう。

慣れない遠出で疲れている筈だが、メリダは疲れた素振りも見せず、終始笑顔でゴーシュの問いに筆談で答えた。


もし、口がきけたなら‥もっと彼女の事を、知る事が出来るのに‥


ゴーシュはそう考えている自分にハッとして、思わず苦笑いを噛み締める。


あの姉妹達に囲まれて育ったのだ。

女性の事はよく分かっているつもりだし、今迄知りたいと思う事も無かった。

しかし彼女に至っては、知りたいと思うのだから、不思議なものだな。

余程私はこの、憐れな彼女に同情しているのだろう。

だが、1人の人間にあまり思い入れるべきではない。

私のするべき事は、任務の遂行なのだから。

私の守るべき相手は、スヴェン様只一人なのだ。


ゴーシュは自分の感情の変化に蓋をして、任務を遂行する事に集中した。


メリダが無理をしたお陰で、陽が沈む少し前にはオライアス領に到着する事が出来た。

オライアス城は黒色の石がふんだんに使われた、低い岩山の頂に建っている。

遠くから見ると、まるで黒くそびえ立つ山の様で、容易に他者を近付けない威圧感の様な物を感じた。

城の入り口までは、馬車が一台通るのがやっとの、細い道が続いている。

裏側は断崖絶壁で、天然の要塞になっていた。


「姉上!おかえりなさい!疲れたでしょう?」

城の城門が開いた途端、黒髪の少年が駆け寄って来た。

14、5歳位の、まだあどけなさの残る、可愛らしい少年だ。

黒髪に茶色い瞳で、どことなくメリダに似た顔立ちをしており、姉上と呼んだ事から、この少年が現オライアス公爵である事は間違いない。

ゴーシュは出迎えに来ていた騎士の一人に馬を預け、オライアス公爵の前に膝をついた。


「お初にお目にかかります。私はラドニアの親善大使として参った、ゴーシュ・ベインと申す者です。国王陛下の命により、この度オライアス領に滞在させて頂く事となりました」

「疾風のベイン!本物だ!!陛下から聞いて、楽しみに待っていたんだよ!膝などつかず、立ち上がって。オライアス領にようこそ!僕はセスク・オライアス。一応このオライアス領を受け継ぐ者だよ」

セスクはゴーシュの手を引いて立ち上がらせ、固く握手を交わした。

「その名で呼ばれるのは、少々気恥ずかしいのですが、歓迎頂き光栄に存じます」

「そんな畏まらないでよ。僕の事はセスクと呼んで!僕もゴーシュと呼ばせて貰うけど、構わないかな?」

「ええ、構いません。ではセスク殿、改めてよろしく!」

「嬉しいな!あの疾風のベインが僕の目の前にいるんだ!ねえゴーシュ、折角だから僕に剣を教えてよ!」

セスクがゴーシュにねだると、メリダは首を振ってセスクを止めた。

「えーなんで駄目なの姉上?こんな機会逃したら、僕は絶対後悔するよ!」

するとメリダは手を動かして、手話で意思を伝えている。

どうやら普段は手話で会話をしている様だ。


「分かったよ姉上、今日はこれ以上我儘を言わない。明日改めて頼んでみるけど、それならいいよね?」

今度はメリダも納得した様で頷いている。

セスクは会話の内容が分からないゴーシュに、メリダの意思を伝えてくれた。

「姉上が、疲れているだろうから、ゴーシュを休ませてあげてって言うんだ。ごめんねゴーシュ、僕は興奮して客人に気遣いを忘れていたよ」

「いいえ、突然押しかけた私に、気遣いなどいりません。私で良かったら、喜んで剣をお教え致しましょう。只、それと引き換えと言ってはなんですが、私の頼みも聞いて頂けますか?」

「もちろんだよ!!ゴーシュに稽古を着けて貰えるなんて、こんな凄い事は無い!で、頼みって‥」

セスクがそこまで言うと、メリダは又手話でセスクに意思を伝えた。

「姉上に怒られた。立ち話もいい加減にしなさいだって。姉上の言う通りだ。悪かったねゴーシュ、部屋に案内させるから、夕食の席でゆっくり聞かせて」

「はい。ありがとうございます」

セスクは初老の執事を呼んで、ゴーシュの荷物と案内を頼んだ。

ゴーシュは執事に案内されるまま、客室へと進んで行った。

客室はシンプルな作りで、あまり派手な装飾はない。

しかしその分、上質な素材をふんだんに使って、内装を仕上げている事が伺える。

大きなベッドの支柱は黒檀だし、壁のタペストリーは見事な織物だった。

タペストリーの模様は、何かの物語を題材に織られている様で、四方の壁に同じ人物がいて、壁ごとに背景と仕草が違う。

ゴーシュは見事な作りに、繁々とタペストリーを見ていたが、その中の一枚に目を止めると、心臓がドクンと跳ね上がった。


これは‥‥!

この真ん中にいる黒い生き物!

これこそがスヴェン様の探している、魔物なのではないか‥?


ゴーシュは鼓動が早くなるのを感じながら、魔物とオライアス城の関係を確信した。

大分ご無沙汰になってしまいましたね。

ブクマ登録して下さっている方、申し訳ございません!

スローペースですが、最後まで頑張って書くつもりですので、お付き合い頂けたらありがたいです。


読んで頂いてありがとうございます!


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。