ミランダ
キアラが倒れてから3日が過ぎた。
あれ以来スヴェンは、キアラの訓練時間を2時間に定めて、訓練用の装置を時間が来ると動かない様に設定した。
キアラは甘える事を知らない。
だから自分にも決して甘く出来ないのだ。
それが今回の限界を超えるという事態を引き起こした。
倒れていたキアラを見つけた時の恐怖を、思い出すだけで全身の震えが止まらなくなる。
呼吸をしていなかったので、すぐ人工呼吸をしたのだが、これはキアラには言わないでおこう。
本人の知らないうちに口付けをした事になるのだから。
今回の事でスヴェンはハッキリと自覚した。
キアラが愛しいのだという事を。
自分の呪いを解く為に必要だとか、そんな事はどうでも良かった。
キアラが必要だと強く思ったのだ。
例え呪いが解けなくとも、キアラさえ生きていてくれたらそれでいい。
だけどこの気持ちは、今は胸に閉まっておこう。
こんな気持ちを押し付けても、キアラが迷惑するだけだ。
ダニールが候補に挙げた女性は当初3人いた。
そして、その中で消息不明だったのが1人。
ミランダ・トゥバリ伯爵令嬢だった。
トゥバリ家はミランダの両親は既に亡く、遠縁の親戚筋に代替わりしていた。
トゥバリ家の現当主は、ミランダとの面識は殆ど無く、当然消息についても有力な情報は得られなかった。
そこでダニールは、前当主時代の使用人を探し出し、ミランダについての情報を集めた。
使用人を探すのはかなり骨が折れたらしい。
代替わりの際、使用人達は総入替され、かつての使用人達は散り散りになってしまったそうだ。
探し出してもその殆どが亡くなっているか、国内にいないかだったという。
そうやってダニールが苦労して集めた情報はこうだ。
ミランダという令嬢は、かなり思い込みが激しい女性だった。
学生時代に想いを寄せていた相手がいたそうだが、一方的で見込みがないから諦めろと、どんなに両親に説得されても諦めなかった。
結婚適齢期が過ぎても諦めず、見兼ねた両親に他国の貴族へ後妻として嫁がされた。
前トゥバリ伯爵夫人はブレリア共和国の出身で、ブレリアと繋がりのある国がミランダの嫁ぎ先となった。
嫁いで半年後に一度だけ実家に顔を出し、あっという間に帰って行ったが、その時見たミランダは髪と瞳の色が黒に変わっていたそうだ。
元々ミランダはブルネットで、瞳は茶色だった。
ミランダが訪れた3ヶ月後、両親は事故で亡くなり、その後ミランダが訪れる事は一度も無かった。
「ダニール、ご苦労だった。さすがはダニールといった所か。これだけ情報が得られれば充分だ」
「お役に立ち、何よりです。まあ、私もかなり仕事を片付けて貰いましたので、本腰を入れて調査しました。で、スヴェン様、ミランダで間違いないのでしょうか?」
「ああ、間違いない。ミランダが実家に帰って来たのはあの時だろう。ミランダはその為に帰って来たのだ」
「‥あの時‥‥と、いうと?」
「僕に呪いをかけた時だ。ダニール、ミランダの想い人とは誰だ?」
「使用人は詳しく分からないと言っていました。ただ、ミランダがよく呟いていたのは、ソル様という名前だったそうです」
「‥‥ソル‥なるほどな。段々と背景が見えてきたぞ」
「スヴェン様はソルが誰なのか分かっているのですか?」
「ソルとは、ソーシャル・フォン・アルク。現アルク王の事だ」
ダニールは珍しく顔色を変えた。
思い込みが激しい。
それだけで済まさせれる問題ではなくなってきたようだ‥‥
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