アルクの導き
「アルク様の言った事は、私には半分以上分かりませんでした」
キアラは全てを話し終えて、スヴェンがどの様に思ったのか反応を待つ。
スヴェンは暫くジッと考え込んでいた。
そして溜息を一つ吐くと、静かに話し始めた。
「君に全てを話すのは、30日が過ぎてからにしようと思っていた。でもアルク様はラドニアの子孫と君に言ってしまった。ラドニアの子孫とは、間違いなく僕の事だろう。僕はラドニアでそう呼ばれる身分を持っている」
「待って下さいスヴェン。最初に言った通り、それについては30日間の務めが済んでから話して頂けますか?話せない理由があるのでしょう?」
「‥‥すまない。僕個人の問題が解決しない限り、話しても良い事はないと思っての事なんだ」
キアラはニッコリ笑って頷いた。
スヴェンは少しホッとした様子だ。
「という事は、スヴェンと共に黒い魔物を倒さなければならないという事なのですね。黒い魔物とは何なのでしょう?」
「‥‥おそらくだけど、王妃が生贄を捧げて使役した魔物だろう。それがどの様な魔物なのかは分からないけどね」
キアラは不安げな顔をしている。
いきなり魔物を倒せと言われて、はいそうしますとは言えないだろう。
何をどうすれば倒せるのか、スヴェンにも分からないのだから。
「今ゴーシュはヨルグへ向かっているんだ。アルクで集めた情報だけでは、王妃について詳しく分からなかったから。最初は城へ潜入しようとしたらしいが、それはアルクで出会った仲間達に全力で止められたとか。城には何が起きているんだい?ゴーシュの報告には、城で働く人々がおかしいとあったけど?」
キアラはスヴェンの目を真っ直ぐ見つめて言った。
「それこそ私が行動を起こした理由です。城にいる人達は皆、貼り付けたような笑顔をして、意思の無い人形の様に動いているのです。まるで何かに操られている様に」
「操られている‥‥か。それを危惧して君は魔術を習いたいと言ったんだね。皆を元に戻す為に」
「はい。魔術によって暗示にかかった様な状態を元に戻したいと思いました。でもそれはアルク様の導きがあってこそです。ですから、今日見たアルク様の言う事も、導きだと思うのです。アルク様は弟に会えと言いました。ですが私は弟に会った事がないのです。それを訴えたら黒い魔物の話をされました」
「つまり、王妃をなんとかしないと、王太子には会えないという事か。実はこの所留守にしていたのは、アルク王の留学時代の交友関係を、ラドニアで調べていたからなんだ。もしかして留学時代に、今の王妃と顔見知りになったのではと思ってね。君は侍女達の噂話から、王と王妃は顔見知りであった様だと聞いていたと言ったからね」
「ええ。お父様は義母に"まさかまた会うとは思わなかった"と言ったそうです」
「そこが重要なんだ。王妃が何者で、どうやって魔物の力を手に入れたのか、いったいどんな魔物なのか、そこら辺を知らない事には、戦い様がないからね。幸いあと3日程でラドニアでの交友関係は調べ終わる。そしてゴーシュがヨルグに着いたら、そちらも調査を進められる。だからキアラは無理をしないで欲しい。僕はもう二度と君のあんな姿は見たくない」
「‥‥本当に‥すみませんでした」
「責めているんじゃないよ。僕に頼って欲しいんだ。僕は君のおかげで、呪いが大分緩和されている。だから今度は僕が返す番なんだ」
「私は‥‥お役に立っていますか?」
「君がいなかったら、僕は絶望しか無かった。君がいるから希望が持てるんだ。君には感謝しかない」
スヴェンはキアラの指先に口付けた。
指先から全身に火がついた様に熱くなる。
スヴェンはこういう事をさらっとやってのけるが、キアラはどう返していいのか分からなかった。
出来ればこういう事はやめてほしい。
スヴェンにとっての自分は、必要な存在であるだけなのに、特別な存在であるかの様に、勘違いしてしまいそうになるのだから‥‥
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