目覚めると
「‥‥ラ」
誰かの声が聞こえる。
またアルク様だろうか?
でもさっきアルク様は「時間切れ」だと言っていた。
「‥‥アラ‥!」
また声が聞こえる。
聞き覚えのある声だ。
いや、もしかしたら私は都合よく解釈しているだけで、聞き覚えはないのかもしれない。
「キアラ!!」
その声にハッとして目を開けると、スヴェンの心配そうな顔が覗き込んでいた。
キアラはいつのまにかベッドに寝かされていた。
「‥‥夢‥だったのかしら‥?」
ふと呟いて瞬きをすると、スヴェンが手を強く握った。
「‥‥良かった‥。君が目を開けてくれて。倒れている君を見た時は、心臓が止まるかと思った‥」
スヴェンに言われて、限界を超えて意識を無くした事を思い出した。
もちろんその間見た事も、鮮明に覚えている。
キアラはガバッと起き上がり、スヴェンを見て言った。
「ごめんなさい!私はまたご迷惑を‥‥」
言っている途中でスヴェンはキアラをギュッと抱きしめた。
えっ!?
「‥‥キアラごめん!君の体調に気付けず1人にした。僕のせいだ!本当にごめん!」
スヴェンはキアラが倒れたのは、自分のせいだと思っている様だった。
「いいえ、いいえ違いますスヴェン!これは私が自分の限界を知らず、それ以上の力を使って訓練したせいです。全て私の責任です!」
「それなら尚更1人にした僕の責任だ。君の訓練に付き合うべきだったんだ。君は僕の弟子なのだから」
「いいえ、私がきちんとスヴェンに確認すれは良かったのです。継続可能な訓練時間を。本当にご迷惑をおかけしてしまいました。不甲斐ない弟子で申し訳ございません」
スヴェンの腕に力が入って、一層強く抱きしめる。
「‥‥倒れている君が呼吸をしていない事に気付いて、このまま死んでしまうのではないかと‥‥そう思って怖かった‥!」
スヴェンの肩は小刻みに震えている。
確かにアルク様が言った通り、死にかけていた様だ。
キアラはスヴェンの背中をポンポンとあやすように軽く叩いて、何度も大丈夫だと囁いた。
漸く肩の震えが落ち着くと、ハッとしたようにスヴェンは離れた。
「ご、ごめん!!意識を取り戻したばかりなのに、苦しかったよね?」
取り乱したのが恥ずかしかったのか、スヴェンは真っ赤になって狼狽えた。
キアラもスヴェンに抱きしめられていた事が、今更ながら恥ずかしくなり、顔から火が出そうな程熱くなった。
「苦しくはありませんでした。そして心配して頂いた事をとても嬉しく思います。心配されるという事が、私には良く分かっていなかったのだと思います」
スヴェンはまたキアラを抱きしめたくなったが、変わりに手を握った。
「僕は君を心配する。これから先もずっとだ。それだけは覚えておいて。君を心配する人間がいるのだという事を」
「はい。ありがとうございます」
キアラはフワリと微笑んだ。
その顔が儚げで、消えてしまいそうな気がして、存在を確認する様に、キアラの頬にそっと触れた。
「体温が戻ったみたいだね。食事は出来そうかい?」
「あ、は、はい。そういえばお腹が空きました。すぐ用意をしますね」
「ダメだよ。君はそのまま寝ていて。僕が何か作ってくるから待ってて。簡単な物になると思うけど」
「いえ、本当にもう大丈夫なのです。アルク様が助けて下さいました。少しは回復しているだろうと仰って、その後にすぐ目覚めたのですから」
「アルク様?どういう事だい?」
キアラはさっきまでの「夢はないが、夢とも言える」世界について話し始めた。
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