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はぐれ王女と魔術師  作者: 栗須まり
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ヨルグへ

ゴーシュが集めた連中は、思いの外忠実に働いてくれた。

中でもトーマの集めた情報は王太子に関する情報で、王太子が普段どの様に過ごしているのかが良く分かった。


王太子は庭園の別荘から出る事は殆ど無い。

1日に二度神殿から聖水が別荘へ運ばれている。

生まれつき体が弱く、公の場には一度も出た事がない。

国王は王太子と一緒に別荘で暮らし、どうしても顔出しが必要な行事以外、国政を放棄して一切顔を出さない。

王太子の顔を見た事がある者は少なく、それについて口を開く者は皆等しく同じ事を言うらしい。

濃い緑色の瞳であると。

それ以外の容姿については、皆が口を噤んだ。

これ以上は話せない。話せばバチが当たると。

王太子に関する謎は深まるばかりだ。


この国は今、宰相と王妃の悪政により、国民は貧困に喘いでいる。

大臣達はいつの間にか入れ替えられ、宰相の息のかかった者達ばかりだ。

このままではこの国はいずれ崩壊か、暴動かが近い将来待っているのではないだろうか?

ラドニアも宰相と王妃が国政に介入してから、頻繁な交流を控えている。

精霊アルクもさぞや嘆かわしいと思っている事だろう。


トーマ以外の者達が調べて来た内容は、おかしな事ばかりだ。

城内で働く者は市井に出る事を許されず、皆城内で暮らしている。

逆らえば即クビで、再就職もままならない。

トーマはその為ゴロツキに身を転じたそうだ。

城内で暮らしてから皆人が変わった。

家族が会いに行っても、貼り付いた様な笑顔で当たり障りのない話を数分して終わる。

まるで操り人形の様だと、面会した家族は口を揃えてその状況を語る。

時々家族が面会に訪れても、会わせて貰えない者もいるらしい。

秘密裏に求人をし、その頻度が年々高くなっているようだ。

アルクの城内はいったい何が起こっているのだろう?

調べれば調べる程謎が深まる。

こうなったら潜入しかないと思ったが、それはラズロ以下全員に止められた。


「旦那、悪いこたぁ言わねぇ、絶対に潜入なんて考えちゃあダメですぜ。あの城は悪い噂があるんです」

「悪い噂?」

「身寄りのない奴や外国人が雇われたら、生きて戻って来ないってね。ここ数年前から言われてるんでさぁ。だから旦那、あんたがどんなに腕が立っても、潜入だけは止めた方がいい。あの城は何か得体の知れない力が働いている気がしまさぁ。こう見えても俺は少しは魔力のあった家系でね。先祖には神官もいたんでさぁね」

ラズロが魔力持ちの家系だというのも驚いたが、城に何かしらの力が及んでいるのは間違いないらしい。

こうなると自分は畑違いだ。

魔力に関してはスヴェン様でないと、解明出来ないだろう。

では次に自分が向かうべき場所は、ヨルグではないだろうか?

ゴーシュはラズロ達に引き続き調査を依頼して報酬を渡し、安宿を引き払いヨルグへ向かう事にした。

今回の調査で得た情報は、手紙に書いてダニールの元へ届く様、スヴェンから渡された転移魔法の施された革袋へ入れた。

これでスヴェンから新たな指示が来るだろう。

そしてゴーシュはヨルグに向けて出発した。

目指すはオライアス公爵家。

かなり遠いが、スヴェンとキアラの添い寝期間が終わる迄には辿り着くだろう。

上手くいっていれば良いが‥‥


読んで頂いてありがとうございます。

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