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はぐれ王女と魔術師  作者: 栗須まり
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疑惑

朝食を食べた後、スヴェンに連れられ実験室兼書斎へ入って来た。

「座って」

「はい」

長方形のテーブルに向かい合う形で腰を下ろす。

「さて、君の力を強化する為には、力の出し方とか伝わり方について詳しく知らなければならない。君は普段どうやって力を発動させているんだい?」

「今迄あまり意識していなかったものですから、上手く説明出来ないのですが、まず頭の中でイメージするんです。力を使う相手に対してどうしたいかを。例えば怪我を治す場合、怪我が治っていく様子をイメージして、胸元に意識を集中させます。この力を持つ者は、力を使う時必ず体のどこかに印が現れるのです。私の場合は胸元ですが、印に向かって意識を集中させると、その印から力を全身に広げていけるのです。そして大抵は指先に力を移して相手に近付け癒します」

「ふーん、なるほどね。一つ質問だけど、直接印に相手の癒す箇所を近付けたりする場合もあるのかい?」

「はい。より強い力が必要な場合はそうします。全身に広げる分も相手に使えますので」

「‥そうか‥なるほどね。変な事を聞くけど、昨夜君は僕にそれをしなかったかい?」

「‥正直に申しますと、スヴェンの想像通りです。あの、多分なのですが、私の力が必要だと言うのは、私が昨夜感じた事に関係しているのでしょうか?」


スヴェンは真っ直ぐにキアラを見た。

とても真剣な表情だ。

「その通り。と、いっても君が何を感じて何を行なったのかは分からないんだけどね。キアラ、君は何を感じたのか教えてくれないか?」

キアラは躊躇いながらも話し始める。

「昨夜眠っていると、寝る前にあなたが言った通り、うなされていました。最初は気のせいかもしれないと思いましたが、とても苦しそうな呻き声が聞こえて灯りを点けると、ランプの灯りに照らされたあなたの額辺りに、黒く何やら良からぬ物が見えました」

スヴェンは少し驚いた顔をした。

「‥‥君には見えるんだね。僕に巣食う物の姿が‥」

「見えるというよりは、感じると言った方が正しいかもしれません。あなたの額辺りの黒い影の様な物に手をかざしました。すると鳥肌が立ち、とても嫌な気持ちになったのです。とても根深く強力な負のエネルギーでした。あれではあなたはまともに眠れないのではないかと思い、私の印をあなたの額に近付けて、直接力を流したのです」

「‥‥そうか。そのせいか‥。君のおかげで昨夜はいつもよりまともに眠れたよ」

「あなたはあれが何なのかご存知なのですね?あれが何なのか聞いてもいいですか?」

「あれの正体は‥夢魔だよ。僕はこの身に呪いを受けているんだ。どうしてそうなったかを話すのは、あと29日経ったらにしよう。この呪いに君の力がどう作用するのかは分からないし、呪いを解けるのはかけた術者だけなんだ」

「‥‥その呪いをかけた相手は何処にいるのですか?」

「分からない‥。分かっているのは相手の容姿と、僕が相手につけた傷跡だけなんだ‥‥。今はその手掛かりだけで探してみてはいるんだけどね。相手は多分魔物と契約しているから、探すのはとても難しい」

「魔物!!魔物と契約なんて出来るのですか?」

「今では禁止とされているけど、ラドニアの東側に広がる山岳地帯には、かつて生贄により魔物と契約するという悪しき文化があったんだよ。僕に呪いをかけた女は、多分その禁を犯して魔物と契約したのだと思う」

「女と言われましたね。あなたに呪いをかけた相手は女なのですか?とても信じられません」

「今の僕なら簡単にはそんな目に遭う事はないだろうけど、かけられたのは11年前で僕は8歳の子供だった。まんまと罠に嵌められてね」

「その女はどんな容姿でどの様な傷跡があるのでしょう?魔物と契約しているのなら、魔力も強い筈ですよね?だとしたら魔術師をしている可能性もありますわ」

「‥僕には11年も時間があったんだよ。アルクやラドニアで魔術師と呼ばれる者達は、全て確認済みだ。それに、今魔力を使える者は殆どいなくなった。アルクや近隣諸国には既に魔術師は存在しない。いるのはラドニアにだけ。だから魔術師の線を調査するのは簡単だった。あの女の容姿は目立つから、表立って魔力を使えば直ぐに何かしら噂の的になるだろうしね。ああ、どの様な容姿と聞いたね。黒髪、黒い瞳の美女だよ。禍々しいほどの美しさだった。その女の左手に火傷を負わせたんだ。指輪の形のね」

「‥‥黒髪、黒眼の美女‥ですか。指輪の形の火傷‥‥」

女の特徴は考えれば考える程キアラの良く知る人物に当てはまった。

11年前‥‥

まだ自分は6歳で、母を亡くした頃だ。

今の義母はその2年後に嫁いで来た。

11年前に義母が何をしていたのかは知らない。

ヨルグという国のオライアス公爵夫人であったという情報しか知らないのだ。

憶測で物を言ってはいけないが、スヴェンにはほんの少しの可能性だけでも話しておくべきではないだろうか?

「あの、スヴェン‥」

「うん?他に何か質問?」

「‥‥いいえ。あの、有り得ない事なのですが、私の良く知る人物に、その女の特徴が似ていると思いまして‥‥」

「君の良く知る人物!?いったい誰なんだい?」

「私の義母で、現アルク王妃アラメダ・フォン・アルクです‥‥」

雨が降り過ぎですね。

皆様が災害等で辛い目に遭われません様祈るばかりです。

読んで頂いてありがとうございます。


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