朝を迎えて
「うううっ‥‥!うう!‥」
何処からか苦しそうな呻き声が聞こえる。
いつの間に寝てしまったのか、微かに目を開けると、真夜中の森に響くフクロウの鳴き声が聞こえ、真っ暗な闇が広がる。
手探りでベッドサイドのチェスト上のランプを探し当て、灯りをつけた。
部屋の中には仄かなオレンジ色の光が広がる。
それからキアラはさっきの呻き声の正体を探る事にした。
スヴェンを起こさない様、そっと上半身を起こし、辺りを見回す。
しんとした空気に包まれた部屋は、沈黙を保っている。
「気のせいだったのかしら?」
そう思って、また寝直そうとランプに手を近付けた時、スヴェンのいる辺りから呻き声が聞こえた。
キアラは仄かな光に目を凝らし、スヴェンの顔を覗き込む。
スヴェンは眉間に皺を寄せて、苦悶の表情をし、浅い息で眠っていた。
時折、さっき聞いたのと同じ呻き声を上げている。
キアラは心配になり、スヴェンを見守っているべきか、起こすべきかと何度もスヴェンの顔を見ては考えていたが、スヴェンの額辺りに何やら黒い影の様な物が浮かんでいるのに気が付いた。
最初、それはランプの光を何かが遮断して出来た影だと思ったが、どう見ても角度がおかしい。
額に手をかざしてみると、何やら良くない気配がして、鳥肌が立った。
「僕がうなされていても気にしないで」
それは、こういう意味があったのかと初めて気が付いた。
この正体が何だか分からないが、少なくとも"添い寝"と関係しているのではないだろうか?
ならば、私に出来る事は?
キアラは意を決して、スヴェンの頭を抱き締め、額を自分の胸の辺りに近付けた。
そうして懸命に祈りながら、癒しの力を胸元へ集中させる。
胸元から白い光がゆっくりと広がり、スヴェンの額から頭、そして全身を包む。
キアラはそのまま自分の意識が続く限り、スヴェンを抱き締め祈った。
‥‥
「これは夢だ」
11年間見続けてきた景色を、また今日も見ている。
夢だと分かっていても、どうしようもなく受け入れ難いドロドロとした闇に飲まれながら、ただ目覚めを待つしかないのだ。
「いっそこのまま狂ってしまった方が楽なのにね」
闇が自分を形作り、甘言で誘ってくる。
その度に「諦めない!」と強い気持ちでやり過ごしてきた。
ああ、早く目覚めたい。この冷たい闇の世界から抜け出したい。
冷たい?
いや、今日は冷たくない。
むしろ暖かい。
何か暖かい物に包まれている様だ。
いつも耳元で騒ぎ立てる悲鳴や呻き声の代わりに、トクントクンと規則正しい鼓動が聞こえる。
その音は酷く安心出来、自然と安らぎを覚えた。
しばらくその音に耳を傾けていると、瞼に微かな光を感じて、やっと朝が来た事を知らせる。
スヴェンは静かに目を開けてみる。
何やら白い布が目の前にあり、ふっくらとした双丘に顔を埋める様な形になっていた。
驚いて目を見開くと、それがキアラの胸であり、自分が抱き締められている事を知る。
身体中の血が駆け巡り、全身が熱くなる。
困った事に下半身に自制が効かない。
スヴェンは動揺しながらも、そっとキアラの腕の中から抜け出して、心を落ち着かせる為外へ出た。
多少名残惜しいと思いながら‥‥
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