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112.ドラゴンの威を借る龍

ランツィロットのリクエスト通り、ダンジョンで無事ミノタウルスのスポットを発生させたヤマト。スポットを発生させたのは下層なので、他の冒険者は巻き込まれていない。


階層内にはSに近いAランクパーティーが居たので忠告はしたし、首を傾げられた。当然の反応である。


実質個人Sランクと正真正銘ソロSランク、ドラゴン・スレイヤー。ロイドが『Sでも死ぬ』と言ったミノタウルスのスポットは、この強火力トリオにより攻略。


しかしヴォルフとランツィロットは中級のポーションを使用したので、「ソロで発生されたらやっぱ死ぬな」と。改めて。


討伐したミノタウルス全てを冒険者ギルドに持ち込んだヤマトは、解体してもらいご満悦。自分が討伐した分の魔石はプルへ。全体分の内臓は、5体分を料理用に確保して残りをプルへ。


内臓を料理して食べる。――その事実にドン引きされたが、美味しいので気にしない。『美味しい』は手軽な幸福。


解体待ちの間、ヴォルフはギルド長から呼ばれ事実確認。面倒臭いと言いたげに眉を寄せつつも、ヤマトをランツィロットに任せ応接室へ向かっていた。


既に『保護者』だと認識されている。解せない。


それが――昨日の事。







現在。


珍しく早起きしてしっかりと朝食を済ませたヤマトは、


「お花。手入れが行き届いていますね」


上機嫌。門から校舎までの石畳を彩るのは計算された人工的な自然だが、やはり『自然』は素晴らしいと。


貴族の学園――普段よりも警備が厳しくなる、学園祭。なのに冒険者どころか流れ者が闊歩するこの光景は、果たして『非日常』程度の言葉で済ませて良いものか。


因みに。学園の敷地内へ足を踏み入れるに値する最も簡単な証明として、ひとり金貨5枚を支払い済み。生徒の関係者以外に課せられた、入場料のようなもの。ヤマトの我儘なので、ふたりの分は勿論ヤマトが支払った。


遊びや嫌がらせだけでなく『わがまま』にも全力を出していて、少し引いた。


「あ。見てください、これ。『子供達によるティータイム給仕』――使用人を使う側が、使用人の心得を理解する為……ですかね。行ってみましょう」


平たく言うと『メイド・執事喫茶』。確実に元の世界のコンセプトとは真逆の静謐なものだが、それはそれで楽しみたい。


レオンハルト付きの筆頭メイド。彼女がどれ程に洗練されているのかも知れて、この話題でレオンハルトを褒めることも出来る。部下への褒め言葉は主人への称賛と理解しているのだから、やはり王族や貴族に向いているのだろう。絶対に成らないが。


つまり、レオンハルトを褒めたいが為だけの選択。ヤマトは“友人”に甘い。


「やめとけ。面倒臭ぇ事なんぞ」


「めんどくさい」


「どうせ“っぽく”褒めんだろ。ガキ共には刺激強過ぎる」


「自慢の造形美ですからね。残念です」


それでも“友人”の中ではヴォルフを最優先にしているので、大人しく諦めた。理由も納得出来たから文句は無い。面倒事は回避するに限る。


指摘をされない限りは無意識で“っぽく”振る舞ってしまうのだが。自覚が無いので改善の兆しは無い。


その時は、ヴォルフが眉を顰めイラつくだけである。


「ではどこを見学しましょうか」


「あ。この『バザー』は? 売上は孤児院に寄付するらしいし」


「なぜ私が中古品を購入して、あまつさえ国が管理しなければならない施設に施さないといけないんです?」


「……」


「うん?」


「いや、なんか……そう言われたら“そう”としか思えないのが、ヤマトの凄いとこだよな」


「褒めてます?」


「半々」


「では、ありがとうございます」


なぜ当然のように『褒め言葉』として受け取るのか。それを指摘したところで首を傾げるだけだと察したので、ランツィロットは口を噤む。


半分は褒めているので間違ってはいない。正しくもないが、もういい。なげやり。


諦めとも言う。


「でも俺行きたいから行こーぜ。バザー、めちゃくちゃ稀に暗器と知らずに売ってんのよ」


「それはちょっと気になります。行きましょう」


「やりぃ!」


機嫌良く足を進めるランツィロットは、今の短時間で案内図を暗記したらしい。これは『流石Sランク冒険者』と云う訳ではなく、単純にランツィロットの記憶力が良いから。


現に。実質個人Sランクのヴォルフが、案内図と周囲を交互に観察している。不測の事態に備え避難ルートの確認。こちらは、日々『死』と隣り合わせな『冒険者』としての能力なのだろう。


ヴォルフの場合、そもそも“貴族だらけの施設”を暗記する気が無いだけなのだが。


ランツィロットに先導を任せ、難なく目的地の部屋に到着。足を踏み入れれば、ざわりと空気が変わった感覚。


ソロSランク冒険者と、生粋の“貴族嫌い”の冒険者は勿論。先日……往来で男性貴族からのプロポーズをあしらった“黒髪黒目”――ドラゴン・スレイヤー。


『美』を追求する“彼”が、往来でプロポーズをしてしまう程の衝動。その衝動が理解出来てしまう絶対的な造形美。美術品。


「恋愛に慣れていない子供が集まると、婚約者がいても浮気心は生まれそうですよね」


その『美術品』の口から発せられた言葉に数秒程硬直してしまった。一体どんな会話をしていたのだろうか。


単純に、今ふと思い付いたので口にしただけ。


ヴォルフもランツィロットも「いつものやつか」と享受するだけなので、その事実を生徒達が知ることは無かった。


並べられた品を手に取り観察し始めるランツィロットは、子供でも貴族に囲まれ不機嫌なヴォルフの代わりに口を開く。


「別に良いんじゃね。貴族の結婚なんてほぼ政略だし、浮気された方は尻に敷けるってだけだろ」


「お家騒動さえ回避出来れば良いですもんね」


「そゆこと。――つーか。あんた、ヒトに物申せる程恋愛経験あんの?」


「どうでしょう。人並みだと思います」


「その“顔”で『人並み』て。因みに今気になってんのは?」


「ランチはどうしようかと」


「なんのはなし」


「あれ?」


案内図にはしっかりとした食事の出し物は無かった。果たして食堂は解放されるのだろうか。食いしん坊のヤマトからすると、確かに『今』一番気になっていること。


しかし恋愛についての会話をしていたのに、なぜ話題が『ランチ』に飛んだのか……やはりその思考回路は謎だなと。再認識。


ブレない食欲。食いしん坊で、なにより。


首を傾げるヤマトは、不意に合った視線。ひとりの女子生徒へ口を開く。目元を緩めて。流れ者だけど怖くないよー、と言うように。


「食堂は生徒以外にも解放されますか?」


「……」


「あの」


「……ぁ――は、ぃ。その……相応の、料金で……」


「良かった。おすすめの料理をお訊きしても?」


「、ひっ」


「ぇ」


なぜ悲鳴を上げられたのか。ちょっと傷付く。


恐らくは、胸元に手を置いての首傾げ……の所為。目元を緩めたままに、怖がらせないように紳士的な柔らかさで。


思春期。多感な年頃の女の子にとってその『美』は、圧倒的な暴力でしかないのに。現にその女子生徒は顔を真っ赤にし、数歩程後退っている。


かわいそうに。


「あんたどうせ色々食うでしょ。訊くだけ無駄じゃん」


流石に酷だなと思ったランツィロットによる助け舟のお陰で、この女子生徒の尊厳は保たれた。きゃあきゃあと黄色い声を上げる隙も無い、言葉を失い見惚れることしか出来ない美しさ。


もし……後退って開いた距離を縮められでもしたら、奇声を発していた自信がある。社会的――社交界的に死んでいたので、この女子生徒はランツィロットへ感謝の念を抱いているだろう。


「沢山食べても良いんです?」


「ミノタウルス流したから大丈夫じゃん? ちゃんと金払うんだし。つーかドラゴン・スレイヤーに文句なんて言えねー」


「たしかに」


満足。女子生徒から意識を外し楽しみだと上機嫌なヤマトに、よし。と一安心。自分の“顔”の破壊力を、もっときちんと自覚してほしい。


それでも殆ど諦めながら。そして特に暗器も無いので、ふたりに声を掛け退出。


「次はどこを見ましょうか」


「劇とか好きなんじゃね?」


「興味はありますが、暇になるのでは?」


「寝てるから別に」


「無礼千万ですね。――ヴォルフさんは?」


「寝る」


「やっぱり無礼千万。開演は……30分後ですね。ゆっくり行きましょう」


その口で『無礼千万』と言ったのに。恐らく、いつも魔物討伐や後輩育成で疲れてそうだから良い休息になりそうだ。――との気遣い。


休息の場に選んだ場所が場所なので、明らかにズレた気遣いではある。どうせ浅い眠りだとは分かっているが、少しでも休めるのならそれで良いと思っているのだろう。


教師。生徒。保護者と、その付き添いの使用人。


周囲からの視線は気にも留めず。


「貴族が劇をするって、大丈夫なのでしょうか」


「あー……“学び”ってのじゃね?」


「……なるほど。貴族だからこそ、将来への制限はありますからね。本格的に社交界へ出る前なら、“学び”を免罪符に『様々な職業の理解を深める機会』として許されていると。『学園』と云う特殊な場を設けたことで、この国は他国より“理解”に寛容となったようですね。素晴らしい」


「だからあんた、まじどの立場なのよ」


「? 流れ者です」


「なんで」


「え」


割と長い期間共に居るのに、なぜ今更『なんで』と言われたのか。よく分からないと首を傾げるヤマトは、ランツィロットに説明する様子が無いので「まあいいか」と。その疑問を思考の端においておく。


話さないなら訊かない。いつものこと。


歩き続けること、5分……程か。


大ホールに到着した一行は、邪魔になるといけないので出入り口から数m離れた場所で待機中。開演までの時間をどう潰そうかと考えていると、


「お待ち下さい! 今日っ……せめて今日だけは! このままでは公爵家の嫡男としてのお立場が……!」


目の前を歩いて行く男女。を追う、女子生徒。男女の方を見ると、男子生徒の腕に胸を押し付け腕を組む女子生徒。徹底的な教育を受けた筈の『淑女』に在るまじき暴挙。


追い掛ける女子生徒が男子生徒の袖を掴むと、


「鬱陶しい」


がっ――!


振り解こうと勢い良く動かされた腕。その腕が顔に当たり足をもつれさせたその子は、驚愕により小さな悲鳴すら出せず。


しかし、転倒の痛みは無い。


バクバクと暴れる心臓を落ち着かせながら、身体に感じる温もりへゆっくりと見上げると……絶対的な『美術品』の微笑み。


つまり。ヤマトの腕の中。


「……っ――も……申し訳御座いません。ドラゴン・スレイヤーの御方に無礼を働いた事、後日に父を通し謝罪致します」


「構いませんよ。貴女は悪くありませんから。お怪我は――装飾品が引っ掛かったのでしょうか。頬から血が」


「!――っか、ぉ……わたしの、かお……っ」


「大丈夫。落ち着いて。――ほら。治りましたよ」


「……ぇ」


ほわりっ。頬が温かくなる感覚と、その直ぐ後に石鹸のような香りを嗅覚が感知。『治癒魔法』と『クリーン』。


アイテムボックスから取り出したハンカチで女子生徒の頬に触れたヤマトは、その面を女子生徒に見せてやる。


「ね? 何も変わらず、綺麗なお肌です。――大丈夫。私しか見ておらず、周りにも聞こえていません。貴女の『価値』は揺らいでいない。これが事実(・・)です」


「っ……こ、心より感謝申し上げます。どうか、お礼の品を贈らせて下さい」


「調味料。沢山欲しいです」


「ちょ、ぅ……みりょう?」


「美味しいご飯は手軽に幸福を得られますから。料理も楽しいですし」


それは『あなたの“お礼”は私に幸福をもたらします』――と言っていると同義。まるで貴族“らしく”忍ばせたその言葉を汲み取った女子生徒は、ぽかんっ……と口を空けてしまった。


しかし数秒もせず、頬を緩めての安堵の笑み。


「ふふっ。承知致しました。当家の総力を挙げ、様々な調味料をお贈りさせて頂きます」


「楽しみです」


のほほんと。花が舞っているように見える、のんびりさ。『造形美』が表情を緩めているので癒やしですらある。


その“癒やし”の光景を崩せる者は、いっそ勇者なのかもしれない。


「ハッ! 俺に相手にされないからと、そんな黒尽くめのファッションセンスの無い男に媚びるとはな」


どうあっても蛮勇――『愚者』でしかないが。


さあっ……


脊髄反射。“癒やし”を構成するひとりの女子生徒が顔を真っ青にさせ、それは周囲の生徒や大人達も同様に。


ちゃきりっ――


その金属が擦れた僅かな音が、煩い程に鼓膜を揺らした感覚。


『黒』――“黒髪黒目”――その存在を至上とする国と、崇拝者が蔓延る国。その事実があるのに、なぜ。そんな言葉を口にできるのか。


目の前に“貴族嫌い”だからこそ貴族が周知している、“あの国”出身の『ヴォルフ』が居るのに。




もしかして……知らない?




ほぼ確信。剣の鞘を親指で押し出したヴォルフをちらりと見上げたヤマトは、しかし何も言わず。反対隣から聞こえた「あーぁ」との呟きに、少し笑いそうになりながら。


目の前の顔面蒼白の女子生徒が注意――警告の為に振り向こうとしたので、……しぃっ。腰を屈め、唇に人差し指を当てた。


こてりと首を傾げながら。


やはり、脊髄反射。真っ青だった顔を真っ赤にさせたその女子生徒は、それでも身体を動かし控える(・・・)姿勢に。


何が……起きたのか。


よく分からずに眉を寄せる男子生徒。しかしゆったりとした動作で向かい合うヤマトの『造形美』に息を呑み、硬直。


それは男子生徒の腕に絡みついていた女子生徒も。ぽーっと顔を赤らめ、見惚れている様子。


その『美術品』は両の口角を上げ、


「威光を借りてしまいますが。どうやら貴方は“黒”を敬愛する国も、“黒”を崇拝する国も知らない無知のようですね。――まあ。家門により決められた婚約者が居ながら不誠実にも他の女性を侍らせ、あまつさえ公衆の面前で婚約者へ暴力を奮い貶す非常識さは到底“無知”では収まらない愚行で……ふふっ。虫唾が走りますね。貴方のご両親は大層ご立派な教育(・・)を施しているようで。あぁ、いえ。この国でも、公爵家ならマナー教育は家庭教師の仕事でしょうか。その家庭教師はどの家紋に属し、歴代の教え子達は現在どのような人間性を持ちどのような地位に就いているのか。さぞかし、……いえ。憶測で物事を語ってはいけませんよね」


買った。グリフィスへ宣言した通り、『売られた喧嘩は積極的に買っていく主義』の有言実行。素晴らしい精神。


絶句。


言葉を受けた男子生徒も、その腕に絡みつく女子生徒も。控えた女子生徒も、周囲も。


まさか絶対的造形美の『美術品』から、こんな……貴族からすると罵詈雑言の言葉が飛び出すなんて。目が笑っていないその微笑みが、まるで造り物のようで。


とても、おそろしい。


「あぁ。そうだ。エルフ王にも泣きつきましょうか。『私の祖国でありふれた色を馬鹿にされてとても悲しいです。この傷付いた心が癒える方法を、一緒に考えてくれますか?』と。エルフ王なら嬉々として力になってくれますし。――うん。ドワーフ王に泣きつくのも面白そうですね。彼は遠回りは好まないので『ムカついたので10年程国交を断絶してください。代わりの国が必要なら用意します』と。ドラゴン1体を手土産にすれば、呆れながらも稀少なドラゴン素材を取る筈ですし。本当に、あたたかい縁に恵まれた私は幸せ者です。そう思うでしょう?」


無垢な少女のように。両手を合わせ、小首も傾げて言って許されることではない。


漸く……目の前の“黒”が、どのような存在か分かったのだろう。かたかたと震え始めた男子生徒。


その様子に気付いたヤマトは、すっ……と表情を変えて。の、追い打ち。


「ねえ。もう分かりますよね。己の立場を正しく理解しないたったひとりにより、家紋の信用がどうなるか。家庭教師とその歴代の教え子達がどのような目で見られ、どのような評価を受けるのか。高が王家の血筋でしかない公爵家の嫡男如きが『“黒髪黒目”のドラゴン・スレイヤー』を敵に回せば、どのような書簡が届きどのような対応を取らざるを得ないか。後継者の変更は意外と簡単なんですよ。更に――面白くするなら、この“造形美”に傾倒する一部の冒険者やギルド職員へ『傷付きました』と嘆いてみせましょうか。冒険者は自由を愛しているので活動する理由も場所も自由。しかし『美しいものこそ正義』との無意識は有しているようなので、私の心を慰めようと忖度してくれる筈です」


そう言うと男子生徒は顔を真っ青に。脳内に巡る様々な“未来”。その全てが希望を見出せる隙も無く、行き着くのは最悪の末路。


ふ――と。


“なにか”へ思い至ったのか令嬢とヤマトを交互に見て口を開き……開いたが、その“なにか”が音になる前にヤマトが更に口を開いた。


「一応、言いますが。私は只、貴方の暴力を発端に巻き込まれた私へ謝罪するどころか侮辱した事が不快だっただけです。まさか……こんな事さえ説明しないといけないお貴族様が存在するとは、夢にも思いませんでした。本当に、どのような教育を受けたのか。もし――これでも理解が出来ないと言うのなら、後ろ盾を得てからまた喧嘩を売って頂いて構いませんよ。最初は舌戦だとしても行き着く先は武力行使でしょうから、存分に叩き潰して差し上げます。復讐心すら抱けない程、徹底的に。まあ『私』が出る前に、私の“友人”達が知らぬ内に手を下すでしょうが。ちょっと可哀想なので、半日程度なら貴方の事は覚えておくように努力してみますね」


笑っていない目。綺麗に弧を描く口元。――造形美。


青を通り越し真っ白な男子生徒へ更に言葉を続け、


「これ以上はご両親の仕事ですが、ひとつ。『歴史』を紡ぐ者が浅はかな欲に溺れては、紡ぐべき歴史は途絶えます。――弁えなさい」


圧倒的な存在感で。絶対的な存在としての言葉。


しかし、漠然と……どことなく“叱られて”いるような感覚。背筋が凍るような恐怖と同時に、なぜか覚えてしまった『大人』のあたたかさ。


理解が出来ない感覚。


かくんっ……力が抜け座り込んだ男子生徒を一瞥したヤマトは、その横で立ち尽くす女子生徒へは一瞥もなく。


そろそろ開演かな。と、悠々と足を動かした。


「優しめじゃねえか」


「まあ。ここは『学びの場』ですから。大人として、やり直しのチャンスは与えてあげませんと」


「あ、そ」


「拗ねないでくださいよ」


「拗ねてねえ」


「いや拗ねてんだろ。――っにしても、ヴォルフ。お前よく堪えたな」


「潰して良いなら潰す」


「こっわー」


けらけら笑うランツィロットは、当然ながら怖いとは思っていない。彼が思うのは、『ヴォルフが暴れなくて良かった』とだけ。


その会話に目元を緩めたヤマトは口を開き、一応のフォローを。


「心配してくれたんですよね。大丈夫ですよ。“黒”へ懸想しない国のお貴族様への傷害は、流石に軋轢を生むでしょう?」


「……どうせ、揉み消したろ」


「出方によっては、この国自体を消して差し上げたかも」


「ヤマトが言うと出来そうなのが怖いんだよなあ」


「……一応、訊くが。どうやって」


「一夜にして国が水の底に沈む伝承って、原因不明で説明が不可能だからこそ。恐怖と同時に、人類のロマンだと思うんです」


「ヒト、殺すなっつったよな」


「地盤沈下は前兆があるので避難可能ですし、そもそも。『自然』の導きですよ」


「それ水の精霊に頼む気だろ」


「気に入られて良かったです」


「だから神族疑惑出んだよ」


「何故でしょう。私は只人でしかないのに。不思議ですよね」


「あーそうだな」


なげやり。いつも通り、思考を投げての享受。


周りはこの会話の全てを聞けてはいないが、この後自然に集まり内容を擦り合わせるのだろう。ヤマトのこのとんでも発言の報告を、王へ上げる為にも。


劇は大変楽しめたし、ヴォルフとランツィロットの良い休息となった。


ご飯も美味しかった。流石、貴族の学園。良いシェフを雇っている。感心。




閲覧ありがとうございます。

気に入ったら↓の☆をぽちっとする序でに、リアクションやブクマお願いしますー。


『ロマン』で国ひとつ水の底に沈めようとする思考にドン引きな作者です。どうも。


今回はオタク特有のマシンガントークでの公開侮辱。

未遂ですが、よくある『婚約破棄もの』を入れてみたよ。

“黒髪黒目”でドラゴン・スレイヤーなので通用した、反論を許さない正論のような極論のような持論で戦争仄めかしのお叱り。

恐怖過ぎて泣いちゃう。

やべえやべえ。

マシンガントークの所為で文字数ちょっと多くなっちゃったけど、作者が楽しめたから許されたい。


いやお前流れ者じゃなかったっけ???

『貴族』云々について詳しくね???

(困惑)

(今更)


それでも“子供好き”なので優しめに叱るだけに留めました。

優しめだよ?

や……やさしめ、だもん……(目逸らし)


この男子生徒に弟が居るのなら後継者の変更は楽でしょうね。

弟は居なくとも、養子となりたい血縁者は大勢いますし。

手っ取り早く現在の王弟が養子になって、『新たな公爵家』を紡いでの“清算”も有り得そうですよね。

現在の公爵家よりも“王家の血”が濃くなりますし。


まあ“黒髪黒目”の『ドラゴン・スレイヤー』が「やり直しのチャンス〜」と公言したので、暫くは様子見すると思います。

テオドールの時のように「『若気の至り』だったんだよね。これからは婚約者を大切に出来るよね」的な。

両家の両親から、威圧付きで。


この男子生徒は、ちゃんと心を入れ替えていくと思います。

でも“様子見”の後にどうなるかは分かりません。

主人公が気になったら書くかもですが、恐らく気にならないと思います。

人間関係が希薄な冒険者よりも他人に興味が無い、性格破綻者なので。

だがこいつはこれで良い。


例に漏れず戦闘シーンは書けませんでした。申し訳ねえ。

脳内アニメでは全員人外級に動いてましたが、文字に落とし込めないな……と潔く諦めましたね。

戦闘シーンの描写が苦手な私には無理。

むりむり。無理難題。


メイド・執事喫茶書きたかった(´・ω・`)


次回、一応アフターケア。

またの名を越権行為。

渇望。


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