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第6話〜初めての魔法

夢を見た。一瞬で分かるというくらいくだらなく夢に満ち溢れた夢。内容はこうだ。

ダンプに轢かれて死んだら、なぜか、中世、魔法、モンスター、そんなもので有名な異世界と呼ばれるようなところに行く夢だ。


「ははは…ははは…はは……」


見慣れない天井。白一色で綺麗な天井だ。横の窓からは眩しい陽の光が差し込んでいる。

窓辺には鳥が2羽ほどさえずりながらテクテクと可愛らしく歩いている。

窓を開け、下を見てみる。どうやら二階らしい。

人々の行き交う姿が見える。まるでコスプレの会場に来たかのような…


「夢じゃなかったな…」


寝癖のついた髪の毛を触り、少しだけ笑みをこぼす。ほっぺたをつねり、ここが夢でないことを確認する。


「痛ッ!現実か…」


ホッと、一息つき辺りを見回してみる。そこでやっと一部始終をすべて見守っていたちっこい老人と目があう。


「どうじゃ、目が覚めたかの?」


白衣を着て、メガネをかけ、口が見えないくらい白い髭を生やした老人が立っていた。

その髭をゆっくり、上から下へと撫でながら俺に向かって口を開く。


「爺さんちっこいな」


最初に出たのはお礼でも、驚きでもなく、今思った素直な気持ちだった。

それに対し、その爺さんはもさもさの眉をムッと上に釣り上げ「余計な御世話じゃ」と言った後こちらへ近づいてきた。


「お主相当タフじゃの〜、ミーナの雷を食らって数時間で起きるとは」


そこで全てを俺は思い出した。流れで大衆浴場に連れて行かれ、最後には電撃をくらい、

ノックダウンしたことを…


するとドアが「バンッ!」という音を立てたのち、勢いよく人が入ってきた。


「だ、大丈夫だった!?」


正体はミーナだった。彼女は入ってくるなり、物凄いスピードで近づいてきたのち、手や頭、足、いろんなところをペタペタと触り始め、何も傷跡がないとわかるとホッとして離れていった。


「ご、ごめんね!私、その、お酒飲みすぎると変わるっていうか…」


彼女は腕を下で組んで上目遣いでチラチラとこちらを見ながら謝罪の言葉を並べる。

しかし、俺はまったく怒ってはいない。なぜなら彼女には魔法の一端に触れさせてもらったのだから。だから、俺は交渉をする。


「ただでは許さないが、魔法を俺に教えてくれたら許す」


「え!そんなことでいいの?でも…」


彼女は最初は嬉しそうな表情をしたものの、

その表情は長くは続かなくすぐに陰ってしまった。その表情で彼女はしっかりと説明をしてくれた。


「あのね、魔法っていうのは一朝一夕ではできないの。だから…」


「いや、教えてくれ」


彼女の言葉を待つ前に俺は言い放った。俺の真剣な表情を受け取ってくれたのか、彼女は

少しだけため息をついて仕方ないとでもいうかのような顔をした。


「じゃあ説明するわよ。まずは魔法からよね!」


「宜しくお願いします」


「まずは基本から!魔力値、属性、優劣属性

形状変化、エンチャント」


彼女はそんな単語を一個一個言った後、指を一本ずつ立てていった。


「魔力値から、魔力値とはね人が生まれながら、持っているものなの。その大きさは生まれた時に決まるんだけどね。これが高ければ高いほど次のやつが重要になってくるの」


「て事は俺はこの世界に来て初めての魔力値が発生したのか?」


俺は小声で聞こえないように自分の状況を整理する。


「で、2つ目属性について。属性はね多くの種類があるの。炎、水、土、風、雷、光、闇、無、の8種類あるの。その中でも分類できるんだけど長くなっちゃうからね。そして、この属性は全員が持っているの。少なからずね。そして魔力値に分けられていくの」


「は、はぁ…魔法は深いな…」


「で、3つ目が優、劣属性について。これは魔力値の中で最も多いか、少ないかで分類されるわ。色んな魔法を使えるけど魔力値の中で最も多いものは強力でたくさん使えるわ。

逆もまた然りだけどね」


「振り分けが少なければすぐにガス欠になるってことか。威力も比べてしまえばないと」


「そして4つ目。魔法はね、「スペル」っていう言葉をベースにそれぞれの属性を唱えるの。それで球体が出るんだけどね、それはあくまでベース。そこから、バリアとかに変換していくの。こればっかりは想像力の問題だけど」


あぁ、あの時見たのはベースの状態で攻撃したのか…それに魔法の形状を変化させるには

それだけのイメージが必要ということか。


「最後にエンチャント。これは、体や、武器に属性魔法を付与できる魔法よ。これも、魔法と対象が交わるイメージをしなくちゃだけど。あと、シンプルに発動するよりは威力は劣るわ」


魔法だけの攻撃に対し、エンチャントは物体に付与する魔法なのか…だから、攻撃力が上がる分魔法本来の力が弱まってしまうのか…


「以上よ!それから手本を見せるから見てて…スペル・サンダー!」


手のひらに丸くて、黄色い球体が現れた。


「私くらいになるとこの球体の魔力も調節できるからね」


「スペル・サンダー」


とりあえず唱えてみる。予想に反しその球体は1発で出てきた。俺の優属性は「力」と言われたがとりあえずわからないので真似をしてみることにする。


「凄い!こんなに密度の高い物を1発で…」


集中している俺にはその声は届かない。まず最初に選んだものはエンチャント。体に雷がまとうような想像を、イメージをする。


「エンチャント!」


ドクンッ!と体の中で音がする感覚に襲われた。体が軽い、力が溢れる。そして何かが、溢れていく。失われていくような感じがする。

ゆっくりと動き出し、自分の手を見ながら、グッパーグッパーしながら感覚を楽しむ。


「で、どうやって抑えるんだ?」


「あ、えっと…力を抜くように心を落ち着かせるの」


「フゥ〜」っと力を抜き、高ぶった心を胸に手を当て落ち着かせていく。すると不思議なことに全身にまとった雷はだんだん消えていった。


「す、凄い!本当に魔法知らなかったの!?嘘でしょ!?」


「今日初めて使ったけど…」


「本当に?こんなにスムーズに行くなんて!」


彼女の言葉に力が入り、拳はギュッとしている。興奮した様子でこちらにどんどん詰め寄ってくる。


「ねぇ!私とパーティを組もう!」


ガシッと肩を掴み、熱を帯びた手のひらの温度を感じながら、彼女は俺の顔のあと数センチにまで顔を近づけて、そういった。


「まあ、待つのじゃ。まだ1つしか魔法を見とらんじゃろ?ここでもう少し練習していくといい。でも、破壊はするでないぞ」


爺さんは自分の顎髭をゆっくりゆっくり上下に撫でながら、もう片方の手でとある分厚い本を渡してきた。


「文字は読めないんだが…」


「任せて!私が読み聞かせてあげる!」


そんな俺の小言を聞きつけてミーナは俺のベットの横に座ってきて顔を近づける。

俺は少し赤面して情けなくもお願いすることにした。


「そういえば、わしの名前を言っとらんかったの。わしは【ダルカン・スレート】。ドワーフじゃ」


「俺はレン、人間だ」


「私は…いいか別に」


彼女は笑いながら頬をぽりぽりと掻き、少し恥ずかしそうにした。


ーーーここは南門前。街の外にいる。

俺はミーナに誘われ、あの診療所では危険だからと外に連れ出された。


どうやらここで魔法の練習をするようだ。

彼女は来るやいなや即座に呪文を唱え手のひらに黄色の球体を作る。そして、 平野に無造作に転がっている岩を指差す。


「今からあの岩を壊すから見ててね」


コクリと頷き、あの岩と彼女の魔法を見れる位置までゆっくりと動き、見守る。


「カッター!」


平野に叫ぶ声が響く。そしてこの瞬間例の球体から三日月型のものが分離する。それは一直線に岩めがけて飛んでいく。

「ヴァン」という鈍い効果音とともに直撃した岩は見事なくらいスッパリと真っ二つになり、上部分はドスンと地面に落ちた。


「マジかよ…」


そんな光景を見た俺は唖然とする。まさか魔法がこんなにも強力だとは思わなかった。

しかし彼女はさらに続ける。


「スペル・サンダー!」


次は手のひら以外にもいろんなところに球体は現れた。そして数も1つじゃなく8つほどある。


「こうやって、イメージすれば手以外のところも出せるよ!やってみて!」


「お、おう!」


拳を強く握り、柄にもなく勢いよく返事を返す。そしてまずは手を前に出し、呪文を唱える。


「スペル・サンダー!」



ーーーそれから俺たちは休むことなく練習に励んだ。今日教えられたものは「サンダーカッター」「ファイアカーテン」「グランドウォール」この3つだったがすぐにマスターし、質を高めるためにどんどん練習を重ねていく。そして…


「つ、疲れた〜!」


「はぁ〜、俺よ、よく頑張った…」


足を投げ出し、両手をついく2人の男女。表情は疲れ切っているが、しかし爽やかでやりきった感のある顔だ。

ふと空を見上げてみるとすでに夕暮れだった。そして 昨日発行してもらったハンターカードと通行証を忘れていたこと今更ながら気づいた。


明日はちゃんと取りに行こう。そう思い、再びダルカンの家へと行くことにした。


宿で金とられるよりも少し知り合ったところでタダで泊まらせてもらいたいと思うのは別に変なことじゃ無い。


「さて、どうやって頼むかな…」


ーーー小話ーーー


朝起きると見慣れない天井だった。そういえば昨日は風呂場で電撃を食らったんだっけ?

ふと体を起こしてみる。そして、自分がちょっとした白いローブに着替えさせられているのに気がつく。

昨日は制服を着ていた。でも、風呂場で倒れたということは全裸だったはず…でも今は履いている…どういうことだ?


その時1人の老人に気づく。


「どうした?」


「いや、服が…」


「ああ、昨日わしもあの浴場に行っての、その時倒れたお前さんを見つけたんじゃ」


「誰が着せてくれたんだ?」


「ああ、ミーナがパンツを買って来て履かせよったわ。洗濯物ならちゃんとあるぞ」


その言葉を聞いた瞬間、かつて無いほど赤面した。顔の前に両手を置き、外界からの全てを遮断する。布団の上をのたうち回り、足をバタバタさせる。


そしてしばらくして悟った。「別にいいじゃ無いか」「悔いることは無いじゃ無いか」と…俺はこの結論に至った時、この世界にきて初めて早くも浴場に行ったことを後悔した。


そして、次の瞬間、自分でも信じられないことを口にする。


「爺さん…テイク2やろう」


「ん?なんじゃそりゃ?」


「もう一回ってことだよ」


「わ、分かったわい」


実は最初の場面はテイク2なのであった…



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