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第7話〜謎の多い再会

陽が落ち、代わりによるのとばりが降りてくる。窓を開け空を見上げれば満天の星空が広がっている。下に目を向けると昨日の夜のように市場が賑わっている。


「いい光景だな」


俺は窓のふちに肘をつき、顎を持ちながらそう言った。


ーーー帰り道俺はミーナからいろいろなことを聞いた。まず1つ目はこの世界のこと。というか今俺のいる大陸のこと。ここには全部で5つの王国が栄えている。


南…トリニスタ王国

北…リュート王国

東…ティリア王国

西…フェンデル王国

中央…ゴルド帝国


以上の国からなる巨大な円状の大陸らしい。

中央の帝国はこの大陸の通貨の名前にも使われている。その他海の向こうの大陸は行ったことが無いらしい。

ちなみに俺たちがいるのはトリニスタ王国である。


そして2つ目、通貨。ゴルド硬貨のことについてである。この硬貨、全部で4種類あるらしい。3つは知っての通り金、銀、銅、なのだが金の上にはもう1つ大金というものがあるらしい。

換金の相場は、銅貨10枚で銀貨1枚。銀貨10枚で金貨1枚。金貨10枚で大金貨1枚。逆もまた然りである。


そして最後…俺はこれが1番驚いた。彼女の本名についてだが、本当の名前は…

【ミレーナ・ライトネル】らしい。

後からダルカンに聞いたことなのだが、聞いてすぐミーナに「なんで本名言わなかったんだ?」と聞いたが、彼女の返事は「言ってなかったっけ?」だった。

彼女の名前、ミレーナは何だか言いにくかったそうだ。だから縮めてミーナって言っていくうちにそちらの方が定着していったらしい。


「ああ〜腹減った」


今日得た情報を自分の中で整理していると屋台からとてもいい匂いが漂ってくる。

そして屋台から香ってくる香ばしい匂いを嗅ぎながら自分が丸2日ほとんどロクな食事というか食事をしていないことに気づく。


「ヤバイな…あの時一口しか食ってないもんな…」


お腹に手を当て、食べそびれた事を口にするが別に後悔はしていない。それと引き換えに大衆浴場の位置を知れたのだから安いものだ。


そう自分の中で自分に言い聞かせ、ゆっくりと階段を下りていく。扉を開け、ダルカンの診療所の中に入って行く。


「お前さんどっか行くのか?」


メガネを上げ、今まで読んでいたであろう本をパタンと閉じる。


「ちょっと腹が減ってな。屋台まで何か買いに行くんだ。何かいるか?」


「いらんよ。気をつけるんじゃぞ」


最後にそう言われ、玄関のドアに手をかける。そのままガチャリと扉を開け夜の街へと出て行く。


「ダルカンはいい奴だ」


俺は夜空を見上げ、街の雑踏を聞きながらそんな事を口走る。

決してなんとなく行ったんじゃ無い。

街に帰り、泊まるところが無いのでとりあえずダルカンのところに行き、「もう何日か泊めてくれ」と手を合わせお願いする。


なんせ、一回街を出たことにより、戻る時再び金貨を取られたからだ。稼ぐ当ても、借りる当てもほとんど無い俺にはこの出費は痛すぎた。


最初は渋っていたダルカンも俺の必死な気持ちに最後は心打たれたようで結局オーケーがを出してくれた。見た目に似合わず結構優しいもんだ。


そんなくだらない事を考えているうちにも足は止めなかったので、目的地に着く。


「お!昨日のにいちゃん!いらっしゃい!」


ハチマキをつけた筋肉質の男が片手に串を持ち、こちらにもう片方の手を上げてくる。

そう、何を隠そうここはロッドバイソンの串焼きが売っているところ。俺の金が無いために食い逃した一品だった。


「じゃあ、4本くれ!」


元気よく指を4本立てる俺。自分でもなんだか子供のようだと思った。


「ほいよ!銀貨一枚ね!」


直ぐに銀貨2枚を手にし、出された腕にそれを乗っける。


「にいちゃん?聞いてたかい?一枚だぜ?」


「ん?何でだ?」


自分に突き返された銀貨の意味が分からなかった。だって、普通に考えたら誰がこんな屋台で半額にすると思うだろうか?誰も思うはずが無いし、俺も思ってもみなかった。


キョトンとする俺に対し、店主は続ける。


「いいんだよ。俺は旨そうに食う奴が好きなんだ。それに、今度からあんたがうちの常連になってくれればいいさ」


優しく微笑む店主。しかし、俺から出たのは感動でも、喜びでもなかった。ただ、一言自分の中で真っ先に浮かんだ言葉…


「あんたの店潰れるぞ?」


店主は少し顔を赤らめ「黙って持ってけ!」

と言ったのち、袋に入った肉と銀貨一枚を渡してきた。優しさだったのだろうか?

なら、「今度は高く買ってやろう」と心に誓う俺であった。


ーーー肉の袋を抱えダルカンの元へと帰る。


「ただい…」


「お前さん!しっかりせんか!」


扉を開け、帰ってきた事を伝えようと言葉を発した瞬間ダルカンの凄く大きな声が狭い診療所内に響き渡る。


よく見てみれば、一回の診療所のベット2つには怪我した女性が横たわっていた。そして、ダルカンがいつも座っている少し高めの椅子の前には見たことのある顔があった。


「龍弥…」


「れ、蓮!」


腕を押さえたガチムチの男が1人、俺の名前を口にする。その目は怒りではなく安堵の表情が見て取れた。


「良かった…本当に…」


「おい、泣くなよ」


涙を浮かべたその男に歩み寄り、自分が見下ろす体制をとり、頭を軽く叩く。


「いや、俺はお前に言わなければいせないことがある」


叩いた後、瞬時に龍弥の表情は真剣そのものに変わった。


「何だ?」


実はちゃんと予想はついていた。大方何で俺たちを見捨てたのか?とか、勝手に1人で行動するなとかだろう。

しかし、龍弥から放たれた言葉は俺の予想とはあまりにもかけ離れていた。


「あの時な…穂花っていただろ?」


「ん?あ、ああ、いた…ような」


「お前が先生とか何とかで呼んで最後にこかしていったじゃ無いか」


手をポンっとたたき、納得の表情をする。

しかし、龍弥は喋るのをやめない。その声は何だか、怯えているようで、震えていた。


「よ、よく聞いてくれ…あの穂花っていう女は…俺たちの仲間じゃなかったんだ…」


「は?」


ーーーここは平野。森の中にあり、ついさっきまで命がけで戦っていたところだ。辺りは血と肉と汚物が散らばりあげていた。


「おい!蓮!どこ行くんだ!」


龍弥は叫んだ。1人森の中へ入っていく仲間を…たった数十分後前に知り合ったばかりだが、この状況を折角しのぐことができたのにみすみす行かせることはできない。

しかし、追いかけるべきかも龍弥は迷っていた。なぜなら、ここには完全に怯えきった奴らが俺と1人を除いて3人もいるからだ。もし、もう1人勝手な行動をすればパニックになり、蜘蛛の子を散らしたように逃げていくかもしれない。


考え込む龍弥。手を顎に当て、最善の策を絞りだそうとしている。その時…


「あっはっはっはっ!」


こんな緊迫した状態なのにも関わらず、空気も読まない大きな笑い声が辺りにこだました。


「まったく、バカなんじゃ無い?」


声の主は何と穂花だった。彼女はさっきまで喋っていた同じ人はないような印象を与えた。

そして龍弥は彼女に向かって指をさし、声を振り絞る。


「な、何がおかしい!」


「あら、かわいい〜怯えちゃって。私の配下にしたいくらいよ」


ゆっくりと龍弥に近づく穂花。その距離はどんどん縮まる。そして体がくっつくといったところでとまり、上目遣いで龍弥の顎をクイっと下げる。


「でも、残念。あなたたちはイレギュラーなの。だ、か、ら、全滅してもらうわ…」


冷たく言い放たれたセリフはこの場のものを恐怖で凍りつかせた。誰も体が動かない。逃げることも叫ぶことも叶わない。

そんな彼らの様子を見て彼女は不敵な笑みを浮かべさらに喋り出す。


「あ、本当のこの子がどこか気になる?あそこにいるわよ」


そう言って指の指す方向をかろうじて動いた首を一生懸命動かす。

そこには目の前にいるはずの穂花が、両足をもがれ、首を反対方向に向け泡を吐いて倒れていた。


「ふふ、かわいい子達…最後に本当の姿を見せてあげる」


そう言った瞬間彼女の体は白く発光した。体が、服装が、髪型が目の前で瞬時に変わっていく。そして現れたのはウェーブをかけた茶髪の女性。色気を常に発しているような女性だった。しかし、彼らはそれどころでは無い。


「私の名前は【ヒストリア・ヘイム】って言うの。最後に覚えといてね❤️」


彼女はそう言って指をパチンと鳴らす。すると出てきたのは何匹もの蛇。おぞましくうねりながら地面を這ってこちらへ向かってくる。蛇に睨まれたカエル…その言葉が彼らの頭の中によぎった。


「クッソー!」


しかし、彼らは諦めなかった。龍弥の咆哮によって自分の意思で動くようになった足。一斉に同じ方向に逃げる。しかし、蛇は勢いを止めない。


「うわぁあぁぁあ!」


仲間の1人の男が悲痛な悲鳴をあげる。巻きつかれた彼の足は動かない。這いつくばって涙を流す彼を見ないように全力で走る。


走って走って走って走って走って走って走って走って走って走って走ってさらに走る。


蛇が絡み付いてこようともいくら噛まれようともその足を止めてしまえば本当の死が待っている。

その時、隣を入っている女性が急に失速し始めたのに龍弥は気づいた。この時、何を考えていたのか切れ自身は分からない。


女の子だったからなのか、さっきのような思いはしたくなかったのかは分からない。だが

龍弥は確かに失速した2人を両脇に抱え、全力で山を駆け下りた。そして、もうあいつらが追ってきていないことを確認するとそのまま寝ていた。


ーーー起きたのは夕方だった。周りを見渡しても何もいないことに安堵の息を漏らす龍弥。しかし、それもすぐに吹き飛んでしまう。


「おい!大丈夫か!」


明らかに顔色が悪い彼女たち。その時偶然見つけたのは、宿場町アイリスの城壁。夜の間はすぐに寝てしまい気づかなかったが、それは確かに目の前にあった。


龍弥は急いで2人を抱え、壁の中に入ろうとするがそれも止められた。門番だ。甲冑をつけている門番が槍を持ち、こちらへ向けている。


「おい!止まれ!」


制止を聞かずに無理やり入ろうとする龍弥を止める門番。


「お前!こいつらが苦しんでいるのが見えないのか!」


そこに来て、毒にやられた彼女たちを気づく門番。しかし、それを見たところで何もすることは出来ない。規則で決められているからだ。


「確かに可哀想だが…中には入れられない」


「はぁ!?」


怒りの表情に満ちる龍弥。たが、やはり入れようとはしてくれない。


そこへ一台の馬車が通りかかる。白馬が二頭引いている馬車はとても綺麗に装飾が施されており、どれだけ上流階級のものかは一瞬でわかった。


「こ、これは、これは!領主殿!おかえりなさいませ!」


門番の表情が緊張に変わる。槍を持った手とは反対の手で敬礼をしている。

すると扉が開き、中から太った男が出てきた。そいつは自分のちょび髭を親指と人差し指で触りながら口を開く。


「何か揉め事かな?」


「い、いえ!断じてそのようなことは!」


しかしその領主と呼ばれる人は門番の強張った表情と龍弥の腕に抱えられている2人の少女に気づいた。

そして一言。髭をなぞりながら発する。


「その人達を中に入れなさい。そして治療してやるのです」


「し、しかし!」


領主と呼ばれる男は言い返そうとする門番をひと睨みし、簡単に黙らせた。


「わ、わかり…ました…」


そう言って龍弥の前をあげる門番。そして龍弥は深々とお辞儀をし、中へ走って行った。


それからの行動は想像の通り、病院を探し駆け回った。そして、見つけても医者には匙を投げられるばかり…諦めかけ最後に行ったのはドワーフの経営していると言われた診療所。龍弥は最後の望みを託し、中へと入る。


2人の表情を見て血相を変えたちっこい爺さん。急いでベットへ2人を寝かせる。ここまで2人は無言だった。

自分は椅子へと座らされ今更ながら噛まれた腕を気にする。するとガチャリと扉が開いた。そこにはあの時去って行ってしまった蓮の姿があった。

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