表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/48

第3話〜宿場町アイリス

赤く染まった空。木々の間から差す光。それにより森全体が赤いオーラに包まれ、ここに来た時とはまた違う景色が広がっていた。

しかし、綺麗だというのは変わらない。


「洞窟を抜けるとそこは夕焼けだったってか?」


有名な一節を少し変え、今の自分の状況に合うように言葉に出し、頭を掻いた。


やっぱり、この世界は俺の知っている世界とは違うようだ。見たことのない生物。動き回り、人に危害を加える石。そして見たこともない通貨ときたものだ。

でも、だからと言って言葉が通じないわけじゃない。会話はできるがものの価値観が違う。


「ふぅ、困ったな」


腰に手を当て、どんどん落ち始めている陽を見ながら俺の足は速まって行った。

何とか陽が沈む前には言われた街まで行かなければならない。陽が落ちてしまえばこんな森ではすぐに方向感覚を失ってしまう。


今日はまだ終わらない。長い長い1日だ。本当にいろんなことがあった。殺されたり、囮に使われたり、追い剝ぎまがいのことをしたりと、普段の日常には絶対に味わえないことのてんこ盛りだ。


「お!」


俺が見つけたのは、森の出口であろうところだった。木々はそこで終わり、代わりに目が痛くなるほどの光が差し込んでいる。


「マジかよ…」


そこに広がるのはすごい光景だった。いや、ここが森じゃなくて変わった形の山だったってことにも驚いたけど…

しかし、そんなものじゃない。

一言で言えば巨大な壁だ。それが街を取り囲むように設置されている場所がある。距離はそこそこあるし、今は上から見下ろしているがそう見ても相当でかい。


「行くか…」


目を細め、遠くにある壁を見つめながらそこそこ急な斜面を降りて行った。


ーーー斜面を降りること数分後…


「邪魔だ…」


俺は右手に握り締められた自分の剣を見ながら言った。

この剣がなければ今頃は死んでいただろう。だからと言って守ってくれたのも違う気がするが…でも、とにかく邪魔だ。鞘のない剣がこんなにも足手まといになるとは思わなかった。


「危ないから走れないし、時々木に引っかかるし、体と同じくらいあるし…捨てれないし…」


俺はだんだん茜色から暗闇へと変わる空とそれと並行し、視界が暗く染まっていく森を見ながらそう思った。

この山はとても危険だ。それは俺がこの世界に来た時から感じていたことだ。

危険なモンスターはいるし、このまま暗闇になり、視界が確保できなくなってしまったら絶体絶命だろう。

見たところ俺のいる位置はまだ斜面の半分といったところ。この調子では完全に陽が暮れてしまう。


「さ〜て…どうしたものか…」


足は止められない。止めれば命が危ない。なかなか味わえないこのスリルな感じを楽しみながらレンはどんどん下って行った。


ーーー暗くなった森。静かな坂道。ガサガサと葉っぱを踏み分けどんどん下へ進む足音。

それをこの山のハンターは聞き逃さなかった。山の麓まではあと少し。この機を逃してはいけないと陣形を組む。


この闇には少し目立つ白色の毛並みをした狼。この世界でホワイトウルフと呼ばれている生物だ。

本来の狩りの時期は冬場。その毛が雪と混じる時に行うと言う。しかし、それだけで生きていけるほど自然は甘くはない。

なのにこれまで彼らが生きて行ける理由はその瞬発力と高い知能にある。

獲物を狩る時は常に陣形を整え、確実に相手を狩れるようにする。


今日もいつものように動きの鈍い相手。人間を狩る。自分たちの作戦がはまった時彼らは最高の喜びを得る。

確かに人間は自分たちより多少力は強いだがここは彼らのテリトリー。木々が邪魔をして人間はうまく戦えないのに対し、彼らは持ち前の賢さで効率よく弱らせることができる。


そしてその獲物が、自分たちの定めたライン。ここに通ったら作戦開始のラインにどんどん近づいていく。一歩、二歩、三歩…


「ワゥ!」


小さな声で合図し舌なめずりをして残り一歩を踏み出すまで静かに待つ。


ガサッ!


その時、ターゲットの動きが止まった。あと半歩のところで…

そしてこちらを見ているような気がする。彼らは身をかがめ、木の後ろへ後退した。

すると夜の静かな森に風を裂く音が響いてくる。こちらへ近づいてくる。すごいスピードで。


ガンッ!


「キャン!」


仲間の1人が悲鳴を上げた。あたりはしなかったもののその投げられた剣は木にしっかりと刺さっていた。

そして、陣形がその剣に気を取られ一瞬だけ崩れた。


そこにはもう獲物の姿はなかった。


ーーー山を駆け下りる。走ればどうってことはなかった。剣を投げ出した俺は走った。このスリルに笑みを浮かべて…


「よっしゃ!」


小さく拳を握り、自分にしかわからない程度でガッツポーズをする。


「危なかった!これは割とマジで!」


俺を囲んでいたよく分からないが生物がいた。1匹2匹じゃない。10匹はいた。

あれに気付けたのは俺も運がいいと思った。

あのまま行っていたら間違いなく襲われていただろう。最悪死ぬかもしれない。

あの状況は不利すぎた。剣は振れない、前は見えないで最悪だった。


「ふぅ…」


腰に手を当てながら深く息を吐いた。


壁はもう目の前だ。門のようなところも見えてきている。明かりもあり、ここは安全だと思う。


「おい、止まれ」


壁の中に入ろうとした瞬間声をかけられた。

鎧を着ている。まるで金持ちの屋敷に置いてあるような鉄のような素材でできた鎧だ。

その表情はフルヘルムのおかげで読み取れない。


「通行証を見せろ」


その門番は左手に槍を持ち、右手を出し俺にそう言ってきた。もう1人の男も同じような格好をして横に立っている。

それに、門の上には弓兵だろうか?弓を携えている鎧を着た門番がいる。


「いや、持ってない」


「そうか、じゃあ通行料ゴルド金貨1枚だ」


門番は俺へと出された手を引っ込めることなく持ってないことを知ると瞬時に切り替えてきた。


俺は渋々シャナからもらった袋を開け、中身を出した。そして、金色の硬貨を1枚取り出し、手渡した。


「ようこそ、旅人が集う街。宿場町アイリスへ」


彼の顔の表情は読み取れないが、声のトーンから察するに歓迎されていないわけじゃないとわかった。


俺はキュッと袋を締め、中に入った。

すると後方からまた声が聞こえる。


「まず、ギルドに行って通行証をもらってくるんだぞ!」


俺はお辞儀の意味で手を挙げ感謝の気持ちを不器用ながらも表す。


入ってみて驚いた。


「まるで中世のヨーロッパのようだ」


頭に手を置き、周りを見渡す。


石畳を踏みしめる音。白じゃなくてオレンジ色の光、そして賑わう市場のようなところ。

そして、様々な人種。犬のようなやつ。ちっこいやつ。耳の長いやつ。様々だ。

そして、俺は初めてここにきて、こう思った。


「ここが異世界か…」


高鳴る鼓動と、フワフワした感情を自分の中で噛み締め、胸に置いたを握り誓う。


俺はここから新たな人生を始める。後悔しない最高の人生を。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ