第29話〜王国誕生祭
「なぁ、誤解だって」
「いいんです。良いんですけど…その日にあった人と…その…」
「もう、レンって最低ね!」
口ごもるルナ。その三歩後ろで事の真相を話そうとしている俺を見ながらルナと並行して歩いているミーナが怒った口調でそう言いだした。
「だから、聞いてくれって、誤解なんだって」
「もう、知りません!」
「行こ!」
「待てって」
彼女たちは少し早歩きになり、俺を置いていこうとする。それに引き剥がされない様ついていく。
なんだかはたから見れば浮気の言い訳をしている様にしか見えない。そんな自分が情けない。
「はぁ…どうするかな…」
---これはまずいことになった。
帰る途中も距離を取っていた2人だが、この高級宿に帰ってきてからも変わらない。いくら広いとはいえ、限度はある。
「なんでそんなに距離を取るんだ?」
「自分の胸に聞いてください!」
「そうそう」
俺の問いかけに答えるルナ。それに同調し、首を縦にふる。
そんな彼女たちは部屋の隅で身を固めている。
それに俺の胸にいくら聞いたところで、悪いことは何1つしていない。
「あのなぁ…」
俺は隅で固まる2人に無理やり近く。
「な、何ですか…」
「な、なに?」
「話を…聞け!」
「「痛っ!」」
聞く耳を持たない2人に軽くゲンコツをくれてやる。そして、その場に正座させ、この茶番を終わらせるためにあの夜の出来事を話す。
「…これで全部だ」
「それって本当?」
「本当…ですか?」
「ああ、あれは王国の策略。何か関係を待たせて問題にする気だろ?」
「え?それだったら、今回のことはまずいんじゃないの?」
「ん?…あ…」
情に溺れるのは良くない。彼女の事を気にかけたばかりに、自分の立場が不利になっていることに気づかなかった。
目先のことに集中しすぎていて、肝心な展開が見えていなかった。
これでは得をしたのは彼女、マネアだけ。
体を売らずに、事実をでっち上げることができたのだから。
「ヘマしたな…やはりあの時は冷静で無かった…」
「考えても仕方ないわね。王国誕生祭も7日後に迫ってきたし、そのために準備しよ?」
「ハンターフェスは過酷を極めると聞きます。しっかり用意はしておいたほうがいいかもしれません」
誤解もしっかり解け、なぜか怒っている2人もなだめられ俺たちは7日後の王国誕生祭、ハンターフェスに備える。
「ほっ…良かったです…」
「良かった…」
そんな彼女たちのつぶやきはレンには聞こえなかった。
---それから7日後…
「準備はできたか?」
「はい!」
「バッチリよ!」
気合十分。俺たちは新しく買った袋に食料、ポーション、その他必需品を入れて、宿の扉を開ける。
眩しい光と賑やかな声がこの宿へ入ってくる。
「祭だ祭りだぁ!」
「もう直ぐ開会式だぞ!王城前の広場に集まれ!」
扉を開けるとすごい勢いで走っていく人の姿があった。男女、子供も年寄りも関係なく、走っていく。
やはりこの王国最大の祭り、国民全員が楽しみにしていたということだろう。
話によればここに来ているのは王都の人たちだけではなく、この日を目指して港の方からも、山岳地帯の街からも集まってくるそうだ。
前の世界では特に不思議なことはない。
だが、それは交通手段があるからだ。どんなところにでも1日2日、場合によってはもう少しかかる所もあるかもしれない。
だけどここでは5日、とか10日かかるところがほとんどだ。
ワイバーン便と言うものもあるが、人数が限られているし、何より高い。
そんな場所に来るくらいだから、相当この日を楽しみにしていたのだろう。
そんなことを考えながら、人が流れる方向に
向かい歩いていく。すると…
「おぉ…これはすごい…」
目的地の王城前の広場…そこでは物凄くたくさんの人が集まっていた。その視線の先には王らしき人とその他上級貴族。そして魔導騎士が立っていた。
マリーフィア、セトレアまで…
結構離れているが奴らの姿ははっきりとわかった。嫌な奴ってのはだいたい覚えるし、視界にも入りやすい。
すると王らしき人が一歩前に出てきて口を開く。すると、その場のみんなが一瞬で静かになる。
「諸君!今年もこの日がやって来た!この王国、誕生を祝う最大の祭り」
ここにいる全員が王の言葉に耳傾け、固唾を飲んでいる。
「王国誕生祭…その余興!ハンターフェスの開催をここに宣言する!」
王がここに宣言したことにより、祭りは始まった。
その瞬間耳が痛いくらいの大歓声が広場…いや、この王都中に響き渡る。
「凄いな…」
「そう…ですね…私も見たのは初めてです」
「テイション上がってきたね!」
場の盛り上がりは最高潮。これはいたるところに伝染し、一人一人のテイションは現在MAXだ。
そんな広場に高い声が響く。その声は拡声器を用いた声のようだ。
「では、参加者の皆さんはここの受付で捕獲用クリスタルを受け取ってください」
「な、なんだ?今の声…なんか変じゃ無かったか?」
そう言って横のミーナに問う。
「広声石っていうの。あれで小さな声でも石の中で反響して大きくなるって代物よ」
「異世界凄いな…」
思えばこのような鉱石が多いから、科学というものが進歩しなかったのかもしれない。
「じゃあ、捕獲用クリスタルとは?」
「あれはね、魔力を込めて、対象にも魔力を送るのそうすることでね、自分以外のものを無限に吸収することができるの」
「無限大だな…」
こんなものがあったら科学なんて必要ない。
それに1番恐ろしいのは、こんな物を参加者全員に無料で貸し出される。
「い、行くか…」
「そうね」
「そうですね」
俺たちは死ぬほど長い行列に並んで、クリスタルを受け取る。
後に聞いた話、これを破損、紛失すると大金貨10枚払わないといけないらしい。
「よし、行くか」
「じゃあね!」
「ではまた夜に…」
「へ?一緒じゃないの?」
「当然でしょ?優勝者はたった1人なんだから」
まじか…てか、夜までって短すぎるような気がするんだが?
「よし…行くか…」
これたちはここで一旦別れる。この短時間でどんなドラゴンを倒せるかは分からないが、とりあえず参加者たちについていく。
これから王国誕生祭が始まる。




