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第25話〜マリーフィア家への招待状

扉を開けるとまるで外とはかけ離れた世界だった。



床に敷かれた赤い絨毯。その横にはメイドや執事かずらりと並んでいる。



何十人いるかは分からないが皆一斉にお辞儀をし、「いらっしゃいませ」という声が合唱のように響く。



「レ、レンさん…私こんなところに泊まったこと…」



「確かに俺もこんな待遇は初めてだな」



さすがにこんなあからさまなお客様待遇は受けたことがない。



「だ、大丈夫?お金とか…」



「大丈夫だろ?お金は王都持ちだろうし、いざとなったらグリムの賞金もあるからな」



俺たちはボソボソと小声でそんなやり取りをしていると絨毯の先。湾曲した階段が左右にある。その階段の上から1人の小太りのおじさんがゆっくりゆっくり歩いてきた。



「やあ、話は聞いてるよー」



階段を頑張って降りてくる男。それはなぜか懐かしいような、見たことあるような…どことなく見たことのある顔に思えた。



男は手を振りながらそう言ってくるが、少し距離感を間違えたのかだいぶ声が遠い。



「はぁ、はぁ、ご、ごめんね…ち、ちょっと…運動不足なもんで」



階段を降りてくるだけでこのフルマラソンのラストのような雰囲気を出している彼は少しの沈黙の後に口を開いた。



「ふぅ〜…では、お客様こちらへ」



急にキリッとした顔つきになる小太りのおじさん。階段の方へ腕を向ける。時折額から流れてくる汗を布でふく。



「彼はこの宿の経営者。【ホーランド・アイリス】だよ。ヴァイト・アイリスの弟さんだよ」



「「「あ〜」」」



どうやら他の2人も同じことを思っていたらしい。セトレアの言ったことに思わず相槌を打ってしまう。



「荷物をお持ちします…こ、これだけですか?」



俺たちの姿を見て失礼なことを言うメイド服の女性。まぁ、無理もないかもしれない。なんて言ったって俺は剣が二本と財布。ミーナは大剣一本財布。ルナに関しては俺が報酬を分ける前は何も持っていなかった。



しかし、思っても口に出さないのが一流の人だと俺は思う。



なので俺はこの発言に対し、少しだけ顔をしかめる。



すると…



「すみません…失礼いたしました」



深く頭を下げ俺たちの荷物を部屋へと運ぶ。



「客室へと参りましょう」



ホーランドは俺たちを引き連れ客室へと向かう。








---それから3日後



俺たちはこの空間に慣れてしまった。



最初はあらゆるところに回されている気遣いに戸惑っていたルナも宿の食事を食べづらそうにしていたミーナも今では慣れ、少しだけ気品に満ちていた。




表面だけ…



ただ、1つ気に食わなかったのが部屋は3人で人部屋だったことだ。



明らかにベッドでは2人しか寝られないし、まぁ、それはソファがあったから大丈夫だったんだけど…



やはり、大した関係でもない男女が1つ屋根の下というのは…問題だろ?



だが、これも慣れてしまった。慣れとは恐ろしいものだ。



「じゃあ!レン行ってくるね!」



「レンさん行ってきます」



「ああ」



2人は扉を開け、外へ出て行く。



何をしているかは分からないが、この三日間ずっとこの調子だ。



別に興味もないので詮索もしないが…



「ふぅ…今日はここまで」



俺は現在ある実験をしている。



それはこのドレインという剣に関する実験だ。



話によるとこの剣は魔力値1000でも扱うのが厳しいと聞く。そして俺の魔力値は1200…



到底バンバン発動できるものではない…と思っていた。



しかし、あの酒場の一件の時に気付いた。あの時連続で発動できていたのだ。



そこで俺は仮説を幾つか立てた。まず1つ目。ドレインとは日によって、時間によって吸収する魔力に差が出ているのではないか。



2つ目、俺の魔力値の回復が異常に早いか…こればかりは分からない。



そして最後…これはあまり現実味のない話だが…俺の記載されていた魔力値がなんらかの理由で偽証されていたか…



今日も連続で4回発動させることができた。



グリムの技は一回の発動につき、約10分といったところだろうか…戦闘には十分使える。



「まぁ、いいか」



そんなことを考えているとドアのノックする音が聞こえてきた。するとドアが開き、そこからはセトレアの姿が見える。



「俺は何も言ってないぞ」



「まあまあ、今日は君にいいものを持ってきたよ」



「ん?」



するとおもむろにセトレアは自分の胸の谷間に手を入れ、3枚の手紙を取り出した。俺は真顔のまま目を思いっきりそらす。



「これこれ!」



「なんなんだ?これ…」



「招待状だよ。マリーフィア家のパーティーのね」



「なんで俺に?」



「ああ、マリーフィア家ってのはこの国でいちばんの財力を誇っているからね、この宿に泊まっている人も誘って大きなパーティーをするようだよ?」



そう言いながら俺の手を握り、無理やりその招待状を持たせる。それからは任務を終えたかのように扉を抜け、足早に去っていった。



「俺…文字読めないんだが…」



すると再び扉が開き、セトレアが顔をのぞかせた。



「それ、今日の夜からだから」



「はぁ?」



「じゃ!」



パタンとそれだけを言い残し行ってしまった。



俺は行っても行かなくても良いんだが、後からあいつらにはなんて言われるか…面倒だが、探しに行くしかないか…



俺はミスターアイリスから貰った装備に着替え、王都へ出る。







---これはレン達に招待状が渡る前の話。



「あのもの達をマリーフィア家のパーティーへ呼ぶのですか?」


「さよう。あの者は頭がキレる。やはり理由を積み立てていった上で監視できる場所に誘き寄せねばな」



そんな話をするのは王座に座ったこの国の王。そしてその正面に片手片膝をついたセトレア。



これを見れば誰でも、セトレアがいかに信頼されているかわかるだろう。



「なぜ、マリーフィアへ?」



「誰もこの役をやりたがらんのだ。気持ちは分かるがな」



やはり、この王国を揺るがすような危険人物。誰も自分たちの屋敷へ招きたくはないのだろう。



「それにマリーフィアでやれば今日にでも実行できる。ちょうど良い」



「しかし、マリーフィア家への許可は取っているのですか?」



不安そうに見上げるセトレア。それを王は鼻で笑い、続ける。



「奴らは断れんよ。魔導騎士の後ろ盾がなければな。いくら財力がこの国一だろうと武力では底辺の存在。政治的には無力といえよう」



「そうですか。分かりました。では、招待状か何かを作ってはいかがでしょう?」



「招待状?そんなものマリーフィアでは扱っておらんかったはず…あそこでは顔見知りしか招かんからの」



「だからなのです。これは平民どもにもしれている事。どこから情報を得ているかわかりません。なので今回は特別だという事をたとえばれなくてもやっておく方が良いかと」



王はこの答えに大満足し、両手を打ち、お互いに口元を緩める。



「セトレアお主は策士よの。おそらく近々東の国と戦争になる。その時はジークではなく、お主に任せるとしよう」



「ティリア王国と…ですか…奴等は魔力の高い騎士を多く集めております。それに対し、我々は騎士の数も少なく弱小王国と呼ばれるほどです」



「それは気にせんで良い。それより、マリーフィアへ招待状を書かせて来い」



「は!」



扉を開け、セトレアが外に出る。



それからセトレアはマリーフィア家へ行き、招待状を書いてもらった。



それからレンのところへ行き、それを渡した。










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