第24話〜王国の始動
俺はセトレアに言われた通り、グリムを預けた牢獄に向かった。
その間もカシャカシャと音を立てながら俺の後ろをついてくる騎士の姿があった。
(下手くそな尾行だなぁ)
そんなことを思いながら、無事に牢獄に到着した。
「ハンターカードの更新を…ってハイルじゃないか…」
「やぁ、あの時は俺が悪かったよ。で、更新だっけ?」
俺はハイルの前に俺の真っ白なカードを出す。
「で、この水晶に手を乗せてください」
さっきのこともあってか、今のこいつの丁寧な口調は君が悪い。セトレアという魔導騎士に叱られ、心を入れ替えたのなら良いが…
俺はゆっくりと水晶に手を添える。すると初めてカードを作った時のような感覚に襲われる。
「……まさか、そんな…」
ハイルは俺の結果を見た瞬間にその細い目をカッと見開き顔を真っ青に染めた。
「おい、どうし…」
「ちょっと待ってろ」
乱暴な口調で俺にそう言ってくる。そしてあの時のように奥へと入っていく。
やはりすぐに戻ってきて無言で白からブロンズにグレードアップしたハンターカードを手渡してくる。
「そういえば金は?」
「要らない」
「そうか」
俺とハイルの会話はすぐに終わった。あまり歓迎されてないようなのですぐに市場へと戻った。
---レンがハンターカードの更新をして少し経ったころ。王城では国王、上級貴族、王国騎士団長。一部の魔導騎士による会議が開かれた。
議題は勿論レンに関してだ。
「諸君よくぞこのような急な会議に参加してくれた」
「陛下、もったいないお言葉です」
「して、どのようなものが集まったかの?」
その質問を受けたセトレアはゆっくりと口を開く。
「はい、上級貴族は【レオネルト家】【カシロア家】【ミリータル家】【ルートヘート家】【シルヘイト家】そして最後に【マリーフィア家】となっております」
「ほう、上級貴族は全員揃っとるな。魔導騎士は…」
「この私、【セトレア】大魔導士【シートライ】この2人になっております」
セトレアは片膝と片腕を地面につき、うつむいたまま報告を済ませる。その他の貴族たちも国王には頭が上がらないようで同じような行動を取っている。
「頭を上げよ。して、本題に入れ」
「は!」
短く切られた返事と共に扉が開く。そこにはハイルが紙の束を持って入ってきた。
「ハイル…皆様にお渡しして」
一枚一枚丁寧にその紙を配り歩き、みんながその紙に目をやる。すると全員が驚きの表情に変わる。国王も例外ではない。
「こ、これは…すぐに【ジークフリート】を呼ぶのだ!」
「は!」
お付きの兵たちは国王の命令によりすぐさま動き出し、部屋の外へ出る。
彼らが見た内容はこうだ。
名前 ……レン
種族……ヒューマン
魔力値…1200
優属性魔法……無(力)
劣属性魔法……光
固有スキル……なし
その他予備欄……なし
これが今まで記載されていたものだ。ここからがさっき調べた結果だ。
名前……レン
種族……不明
魔力値……6000
優属性魔法……無
劣属性魔法……光
固有スキル……なし
その他予備欄……なし
魔力値の違いと種族の違いだ。
レンは人間と言ったが、この世界の人間と前の世界の人間は違う。それを水晶は見抜いていたのだ。
そして最も大きい違いは魔力値の違いだ。
あり得ないくらいの高さを誇っている。国王もかつてこんなに高い数値を見ることはなかった。国王の知識の中でも4000〜5000だと聞いているからだ。
「異常だ…この国に厄災が降りかかるぞ…」
「その通りでございます」
「10日後の王国誕生祭…そんな場合じゃない」
「しかし、陛下。これはこの王都の誕生当時から何百年も続けられている伝統です。ここで止めてしまうのは…」
「確かに、過去この祭りはどんなことがあっても続けてきた。【死龍ヨルムンガンド】の襲来の時も、【町中で疫病が流行】した時も決して中断することはなかったという」
国王はうつむき、自分の判断が正しいものかどうかを確かめながら言葉を発していく。
「では、なぜ…」
「お前は知らなくて良い。これはこの国の王家、それとその他の王国、帝国の長のみが知ることを許された噂だ」
「噂?」
すると国王はおもむろにその顔を上げ、手のひらをポンッとつく。
「そうじゃ、このものを管理しよう」
「と、言いますと?」
「まずはハンターカードの虚偽により牢獄に入れるのじゃ。それから考えよう」
「しかし、相手の敵意を買ってしまうと…いや、人質を取れば良い。彼は仲間を大切にしているためこの手は有効かと…」
「それでいこう!実行は誕生祭直後じゃ」
決定が下され、セトレアは監視のためこの部屋を出て行った。よってこの部屋には国王ただ1人になった。
「はぁ…このような時期に…」
国王は迷っていた。一度下した決定でもやはり、不安は残るものだ。
この噂は直接はレンというものに関係ないかもしれない。だが、これは警戒せずにはいられないことだ。
---俺があの酒場から出てからずっとつけられている。
俺が食べ物を買っている時も、酒場に入っている時もギルドを探してめげずに声をかけている最中でも休むことはなかった。
「はぁ…」
そして今では見張りは1人だったはずなのに3人にまで増えている。
(一体あの短期間で何があったんだ?)
そう思いながらバレてないと思っている騎士たちの方を見るように後ろを向く。
すると突然前から何者かにぶつかられた。
「す、すみません…」
「あ、ああ」
そう言ってその深紅の髪の少女はすぐに走り去っていった。
(はぁ、なんだったんだ?)
そんな少女の後ろ姿を見ているとこれも突然前から声をかけられた。
「やぁ、レンくん?だっけ?」
「…セトレアだったかな?」
「はは、この国でも私の事を呼び捨てする者は少ないのに君は勇気があるな。私は構わないけど」
そう言って腰に手を当てながら笑う緑の髪の少女。白い制服を着こなし、肩に掛かる髪を後ろに下げる。
「あと、君さっきお金盗まれたよ?」
「ああ、さっきの赤髪の子か?」
「あら?驚かないね?…ああ」
セトレアは俺の左手を見て納得したように頷く。
その俺の手には美しい淡い赤色の刀のような剣が握られていた。
「まさか君…」
「あ、ああ。さっきのやつ明らかに俺との接触時間が長かったから、離れる前に右脇腹に差してあるやつを頂いたんだよ」
そう、さっきの少女は俺とぶつかった時に俺の懐から財布を抜き取ったのだ。それを察知した俺は瞬時に少女の刀を抜き取り、それに気づかない少女はそのまま走り去っていった。
ちなみに少女が盗んだのは最初の俺の財布。
グリムの賞金は別の袋に入れてあるし、すでに三等分してあり、それぞれに分配してある。
「あの少女はハズレを引いたんだよ。もしかしてあれもあんたらの差し金か?」
「まさか、ここに私があの光景を見たのはただの偶然。私は他の用できたの」
お互い腹の探り合いをしながら少しずつ話を進めていく。
「用?」
「そう。王国は今回のことであなたたちにお詫びがしたいと言っているの。私を含めてね」
「へぇ」
腰に手を当て、弾むような声で話すセトレア。
「で、本題に入るとね、あなたたち3人にはこの王都でも指折りの宿への宿泊券が貰えるのです!しかも、ハンターフェスまで」
「マジで?」
「はい」
顔を近づける俺とセトレア。2人の怪しい笑みとともに恐らく口止めとされるこの交渉は成立した。
まあ、恐らくタダで泊めてもらえるわけだし、別にいいよね?
「では、早速宿へ行きましょう」
俺はセトレアに連れられ、罠かもしれない宿へと行く。
「そういえば、あいつらには…」
俺がそれを言い切る前にセトレアは口を開く。
「既に伝えてあります」
「早いな…」
既に伝えてあるということはあいつらもこれを承諾したのだろう。もっともこれに政治的意図が隠されているなんて分かっていないだろう。
とりあえず行ってみよう




