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第18話〜アイリス編完結!いざ王都へ!

このアイリスという街は早朝になると霧がかかり、街が白く彩られる。空気もうまいし、最高の旅立ち日和になるだろう。


そんな街のとある一軒の家の玄関で…


「おい、ルナどこに行くんだ?」


「お、お父さん…」


「そんなに荷物を持ってどこへ行く気なんだと聞いているんだ」


男の口調は冷静を装ってはいるがその芯からは怒りが見えてくる。その目線の先には荷物を持った銀の短髪の少女…ルナだ。


「まさかお前…レンとかいうガキのところへ行くんじゃないだろうな?」


「な、何でレンさんの名前を…」


「やはりか…俺を出し抜こうとしたな?ならお仕置きだ!」


大きく振りかぶられる手。その手は小刻みに震えている。それを向けられる少女はギュッと包帯したの目を瞑る。


そして頬に向かって繰り出される一撃…


「何だお前?」


「いい加減にしろ」


その平手打ちはルナに届くことはなかった。


男は自分の掴まれている右手に目をやる。その目線の先には自分より少しだけ小さい青年。


「おい放っ…!」


突然自分の視線が低くなり地面に這いつくばる男。何が起きたかわからないといった表情をしている。


ずれたメガネを元に戻しその青年の方へ目をやる。


「レ、レンさん…」


「お前か…俺の娘をたぶらかしたのは!」


そう言いながらゆっくり立とうとする男に容赦のない顔への一撃を繰り出す。


その握り締められた拳には怒りが込められていた。


吹き飛ぶ男。メガネには完全にヒビが入っていた。


「何…しやが…」


再び睨み上げる男は自分の言葉を遮られ、ここに来て初めて口を開く。


「黙れ」


驚くほど冷たく低い声。好印象を持たせるその容姿からは想像がつかない程恐ろしい声と殺気を放っていた。


「おい、何だ俺の娘って言ったか?そんな奴いるのか?どこに?」


小馬鹿にした様なその態度。喋り口調。全てを見下している様な眼差し。


この男は昔この目を見たことがある様な気がした。それと同時に湧いてくる怒りが抑えきれなかった。


「クソッタレが!」


そう言って飛びかかってくる男を軽く避け、ボディに1発入れる。するとたちまちその足はおぼつかなくなりその場にへたり込んでしまった。


「うぅ…うぅぅ」


うめき声を上げる男。


「お、お父さん…」


「立て…俺はこんなもので済ませるわけないだろ」


「レ、レンさんどうしたんですか!」


「何でお前はルナに暴力を振るんだ?」


俺の質問に俯く男。何だかバツの悪い顔つきをしている。さっと答えられない辺りを見ると特に理由もないのかもしれない。


「イライラ…するからだ…」


男はボソリとそう答える。


「なぜだ?」


「それは…」


口ごもる男に拳を振り上げてみせる。


「待て待て!分かった言うから!それは…

ニーシャに似てるからだ…」


「ルナ。ニーシャって誰だ?」


「私の母です」


こいつがミーナの母親のことを恨んでいるってことなのか?


「お前は恨んで…」


俺は言葉を言い切る前に否定された。


「それは違う…俺はニーシャのことを愛していたし今でもそうだ。ただ…」


俺が殴ってからこいつの態度は弱々しくなった。どちらかというと優しいの部類に入る口調になった。


「ただ?」


「悔しかった。俺を置いて先に行ってしまったことが…」


おそらくこれがこいつの本性だろう。もともとは好青年だったと聞く。それが妻が死に、経営もうまくいかずと言った不幸に苛まれいつしか心が荒んで行ったのだろう。


さっき叩くときに起きていた手の震えは、頭でいけないことと分かっていながらも抑えられない葛藤の表れだったのだろう。


「あんたのことは大体聞いている。元はこんな性格でなかったことも」


「誰からだ?街のやつからか?」


「違うルナにだ」


「そう…なのか…」


地面に膝と両手をつきながらも少し表情が柔らかくなった様にも思えた。


「ルナは未だあんたのことを優しい父親として見ている。手を挙げられるのは自分が悪いからだと…」


「……………」


男は黙り込み少し唇を噛み締めた。


「良かった。あんたがこれで何も感じない様だったら殺してたよ」


俺は良い人じゃない。はたから見れば俺の行動は善行の様にも思えるがそれは違う。


これは自分のためなのだ。自分の中でこれはいけないことだということは分かっている。だからこそこんなにも腹立たしいのだ。


しかし俺の行動は自分のイライラを解消するため。そう、偽善なのだ。体罰を止めさせるという建前で自分の鬱憤を晴らす。


だが、別に後悔はしていない。正直楽しかったからだ。相手を屈服させるほど気持ちの良いものはない。


「そう…だな…目が覚めたよ」


彼は眼鏡を取り空を見上げる。そこにはもう霧はなかった。彼の改められた心の様に澄んだ青空が広がっていた。


「ルナ…すまなかった…本当に何もかも…」


そう言って実の娘に頭をさげる男。


本来ならここで大人の意地か何かでこんなことは出来ないだろう。故に心底反省し心を入れ替えたと取るべきだろう。


「だが、まだ話は終わっていない」


「「え?」」


俺は変わらぬ表情で2人を睨みつける。


「ルナ。選べ。俺についてきてこの親父とは今後一生会わない方か、親父につき俺とはここで縁を切るかどちらか選べ」


「おいおい何言って…」


「俺は甘くはないんだ。俺はあんたが嫌いだ。あんたとルナが繋がっている以上パーティには入れたくない」


俺はルナの方へ視線を向ける。


彼女の表情はまさに絶望に満ちていた。それだけ彼女にはどちらも捨てがたい選択ということなのだろう。


「早く答えろ」


俺はルナを威圧する様な口調で答えを催促する。


するとルナは唇を噛み締め拳をギュと握りその手を前で組み深々とお辞儀をする。


「すみません…嬉しい誘いでしたがそういう条件ならお断りさせていただきます…」


彼女の顔はお辞儀のせいで見えなかった。


だが、その地面に落ちてくる雫は彼女の感情。表情がたやすく読み取れた。


「ル、ルナ…」


「良かったなルナ。お前は選択を間違えなかった」


「え…」


もし俺のことを選んでいれば間違いなくここで切り捨てただろう。だが、彼女はちゃんと家族をとった。この選択だけは間違えてはならない。


1番大切にしなくてはいけないものをが見えていていかなる状況でもそちらを取れる様な仲間が欲しい。


「さっきの選択はお前を試しただけだ。冗談だよ」


「じゃ、じゃあ一緒に行っても…」


「もちろんだ。ただし当分の間はお前とこの親父を会わせない」


「な、何で?さっきのは冗談じゃ…ルナとはこれから仲良くやっていきますから」


焦る2人を見ながら少し笑い俺は口を開く。


「一生は冗談だ。だが俺は甘くない。さっきまで暴力を振るっていた奴のところに、はいそうですかと一緒にいることを許すわけないだろ」


「ど、どういうことですか?レンさん」


「お前を預かるってだけだ。いつ返すかは俺のさじ加減だな」


「そ、そんな…せめて条件を…」


俺に情けなくすがってくるルナの父親。やはり心は入れ替えたのか…


「条件か…そうだな…だったら。この先ルナは生涯の伴侶を見つけるとするだろ?」


「えぇ!」


「例えばだ!」


顔を真っ赤にして驚くルナに話の腰を折られない様にする。


「よく聞けよ、ルナが伴侶になる男を見つけた時きっと幸せの最高点にいるだろう。

そんな時に手助けしてやれる様な懐になったら返してやるよ」


「例えばどう手助けしたら良いんだ?」


「そうだな…小さな式でも挙げてやるくらいしてもバチは当たらないと思うぜ」


「ーーーッ!!」


ルナの顔はどんどん赤くなっていく。例えばの話なのに現実の様な態度だ。


「まぁ、勝負だな。ルナが伴侶を見つけるが先か、懐にゆとりを持たせるが先か」


俺は振り返って笑ってみせる。


「じゃあ、俺たちは先に挨拶とか言ってるから、後からちゃんとこいよ」


「はい!ありがとうございました!」


ルナはまたも深々と頭をさげる。そして小声で誰にも聞こえない様につぶやく。


「ふふ…私もう見つけちゃいました…」


「ああ、良い人を見つけたな」


「ーーッ!き、聞いてたの?…」


この恥ずかしい会話はレンの耳には届かない。今はまだ…


「レンって意外と優しいね」


「いや、ただの自己満の偽善者さ」





ーーー俺たち3人は出発前の挨拶回りに行った。こういうのは前日にやっておくものなんだけど…そのせいで俺たちは大幅に時間に遅れてしまった。ワイバーン便のオーナーには多少怒られたが龍乗りの人が許してくれたので良かった…


「では出発します」


「「「はい」」」


ワイバーンは大きな羽音とともに宙に浮く。


そしてほんの数分でアイリスの街全体が見渡せる位置まで来た。


こんなにも大きかったのか…まだ見ていないところも沢山あったろうな…でも今はまだいい。また次回くれば良いさ。


アイリスの街はドンドン小さく遠くなっていく。


俺が来た最初の街。いろいろな出会いがあり、仲間も得た。


第二の故郷…アイリスをそんなふうに思いながら王都を目指す。


どんなことが待っているのか、何があるのか期待に胸を馳せ、俺の人生は新たなステージへと移る。










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