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第17話〜出発前日

俺たちの行く王都には明日の早朝に出発する。この街アイリスからは馬車で5日、ワイバーン便では8時間のところにあるらしい。


ちなみにワイバーンとはドラゴンの一種であるという。まだ実際には見たことはないが…


ドラゴンは種族ごとや力ごとに4段階にランク分けされているそうだ。まずは新生龍。その上が成龍。その上が古龍。その上が神龍だという。これは力の強い順でもあるという。


大体は生まれた種族でこの位が決まるのだが稀に力をつけた龍の位は上がることがあるという。あと、ワイバーンは新生龍だそうです。


「お!いたいたレン!」


「あ、レンさん居ました」


「もう、レンってば絶対に待ち合わせ場所には最初に来るよね」


まぁ、それが礼儀ってもんですからね。おそらくこいつらはダルカンのところへ行ったに違いない。


「まぁ、行こうぜ」


「「はい!」」


俺たちは話し合った結果5日かかる馬車より8時間で行けるワイバーン便を使うことにした。まぁ、その分お金はかかるけど…


そこはグリムの賞金に期待しよう。


「で、まずはどこに行く?」


「そうだな食料買いに行こう。8時間と言っても腹が減るだろう」


そう言っていつもの集合場所であるギルドを出て市場に繰り出す。




ーーー俺たちの目的は明日の準備…そう、食料を買いに来たわけだ。来たわけなんだが…


「レンさん今服可愛くないですか?」


「レン〜、この魔導の指輪チーム結成の証に買わない?綺麗だしちょっとお高めだけど魔力回復が早くなるわよ?」


こんな調子である…


この2人は食料を買うという本来の目的を忘れ、いや、放り出して目につく店の中へと入ってしまう。


「お前ら…」


深いため息をつき片手で頭を押さえる。


こんなことをしていたら日が暮れてしまう…俺はルナに話さなければならないことがあるのに…


「いいじゃないそんな急ぐことでもないし」


「そうですよレンさん。たまには息抜きも必要です」


2人とも頬を緩めお互いのいうことに頷きあう。女子の団結力はこんな時により結束になる。


そしてこの2対1の状況。発言力を失う男子はこういうしかないのだ。


「はい…」


女は強い。これはあちらの世界でもこちらの世界でも変わらない事実のようだ。


「この指輪くださぁい!あ、料金はあちらの男に」


「はいよ!」


「では私はこの服を買ってもらいましょう。お支払いはレンさんで」


「ほいよ!」


「え、えぇー…全部俺…」


ニコニコと俺の・・・で買い物を済ませる2人。全くあんな笑顔見せられちゃ何も言えないか…はっ、何言ってんだ?てか、ルナはもう少し遠慮すると思ったんだが…


この時の俺は気づかなかったがあとから考えてみればこの時のルナの行動はもしかしたらミーナの入れ知恵かもしれないと思った。


ルナは考えてみれば遠慮がちな性格だ。おそらくこのパーティに入る時に嬉しさも感じたが同時に「自分なんかが…」何てことを思ったのかもしれない。


早くここに順応しようとしていたのだろう。まぁ、それが貢がせるってのはちょっと思うところがあるが…まぁ、いいとするか。



そして俺はまんまと2人分のお金と荷物を持たされることとなった。


全く俺はこんなキャラじゃないってのに…


こんな日常が続けばいいと思った。この光景を見ていると前の世界を思い出す。順風満帆な人生。何1つ不自由なく生きてきた17年間…やめておこう。


俺は少し俯いたがすぐに前に向き直る。


「じゃあ次は食料を買いに行くぞ」


「はーい」


「はい…あ、ありがとうございました!」


「まだだぞ、お前らにはしっかり働いてもらう」


しかしお金にゆとりが出るのは良いことだ。さっきの買い物もグリムを倒す前の俺だったらすごい形相で断っていたことだろう。


「着いたわよ!」


そんなことを考えながらも目的地に着く。


それたちが来たのは保存食の売っているとある店だ。


この世界はハンター家業のものも多い。初クエストでも思ったが1つ依頼を受けるのにも命がけで時間もかかる。特に空腹とは耐え難いものだ。


よってこの世界は保存食の売ってある店が多い。まぁ、俺の世界には劣るんだけどね。


「じゃあ何にする?」


「やっぱり乾肉ですかね〜」


「よ、読めないし…」


メニューのような立て札があるのだが読めない。これはこの2人に任せた方が良さそうだな。俺も食べたことないし…


「2人に任せるよ」


「そういえば何で食料買うの?だって8時間くらい我慢できるでしょ?」


「確かに必要ないですよね?」


「おい、お前ら…それ店に入って言うか?普通…」


ムッとする店主の顔色を伺いながら空気を読まない2人をなだめる。


確かに必要か?と聞かれればまったくもって必要はない。たが、俺は快適な空の旅を楽しみたいのだ。


お腹減ったらなんかテイション下がるしね。


俺たちはとりあえずその乾肉を12個買った。

合計は銀貨6枚…そこそこの値段だった。


「次は予約しに行くぞ」


「ワイバーン便?」


「本当に大丈夫なんでしょうか?」


お金がかかると言われているルナはやはり心配そうだ。俺はミーナから1人ゴルド大金貨一枚と聞いている。まぁ、俺の懐には2つあるし、あとはミーナに払って貰えば良い。


グリムの賞金にますます期待がかかる。




ーーーワイバーン便の予約はギルに頼んでここにいる人には話を通してある。だからあとはお金を払うだけだ。


「お?あんたらか?話は領主様から聞いてるぜ。王都に行きたいんだろ?時間は聞いてないんだが…」


「明日の早朝。霧の終わる時間帯より後すぐに来る。で、お金」


俺はそう言い、お金を3人分渡そうとするが…


「いや、料金なら既に領主様から貰ってるよ。ここでもらうのも良いんだが…こっちは信頼命だからな」


「本当!?やったじゃない!」


「領主様には悪いことをさせてしまいましたね…」


まじか…ミスターアイリス…何で太っ腹なんだ…まぁ見た目も太っ腹なんだけどね。


「時間聞けてよかったよ。それだけ分かればもう行けるからな」


「じゃあ、明日は頼んだぞ」、


「任せとけ!【トリモ】ワイバーン質の良いものしかいねぇ。運転手も同じくだ!」


頼もしく胸を叩くトリモというオヤジ。正直運んでくれれば名前なんてどうでも良いがな。




ーーー買い物も済み、ワイバーン便の予約もしっかり取れた。もう俺たちの今日のノルマは達成された。


本当ならワイバーン便の予約は書類とか色々書かなくてはならないし時間のかかることだと聞いていたが、ミスターアイリスの配慮により時間も金も節約できた。


これで長くルナのことを聞ける。


「じゃあ!明日の朝にさっきの場所ね!」


「あぁ」


「ではお二人共今日はありがとうございました」


「ルナは待て」


「え?」


ミーナは別れを告げた後すぐに行ってしまったが俺はルナを引き止める。


「どうしたんですか?」


「ちょっとお前のことを聞いても良いか?」


俺の真剣な表情に多少困惑しながらもルナは口を開く。


「どんな事ですか?」


「お前と家族の事だ。母親、父親の事を教えて欲しい。お前が他人なら放っておくがもうそうはいかない」


ルナは黙り込み、下を向いてしまう。だが、ゆっくりこちらを向く。そしていつもつけたまま外さない両眼の包帯を取り外し自分の事を語る…




ーーー俺はあの後ルナの家までついていき家を確認したのち「明日は迎えに来る」と言ってダルカンの診療所まで帰ってきた。


「はぁ…」


イビルアイとは個体により能力が違うらしい。ルナの母親も当然ルナとは違う能力のイビルアイを保持していた。


だからなのかは知らないがルナの両親は俗に言う政略結婚だったという。なぜだか知らないがルナの母親は領主の命令で今の男と結婚させられたらしい。


だが、ルナの父親はその当時はとても優しく好青年だったそうだ。しかも彼はルナの母親の事を愛していたそうだ。これは後に町の人から聞いたと言っていた。


そして、彼らは式を挙げしばらくして薬草屋を開いたそうだ。しかし、景気は良好とは言えなかったらしい。ギリギリ赤字じゃないくらい。儲けは少ないがそれでも夫婦円満。貧しいながらも幸せな家庭を築いていたそうだ。


そんな時ルナの母親は隣町にも進出し、幅を広げようという話を持ち上げた。それに父親は大賛成。すぐにでもと商人の馬車に品物を乗せてもらい、母親の方がそれに同行したという。


だが、そんな時に事件は起きた。


グリムだ。グリムがあろう事かその馬車を襲ったのだ。


当然馬車の荷物は全て奪われ車掌も殺されルナの母親は自分のイビルアイの能力を使い命からがら逃げ帰ってきたという。


これが4年前の話…


たが、帰ってきた彼女を街のものは歓迎しなかった。


こんな世界だ。前の世界でなら事件やニュースによりグリムが襲った事を報道するだろう。しかしこの世界にはその様な機関はない。


だから街のみんなは荷物が消失したのは彼女のせいだと決めつけていたのだ。


もともとあまり好かれていなったイビルアイ。


だが、それだけで決めつけていたわけではないという。


突然の馬車への同行。そしてイビルアイの能力。とどめを刺したのは貧しい彼女の環境だったという。




ルナの両親の店はこの事件から信用を失い、客足も遠くなって行ってしまったらしい。


経済的負担。周りからの汚いものを見る様な視線。ルナの母親は次第に衰退していき、最後にはストレスと過労で死んでしまったという。


これが2年前…この頃からルナの父親の暴力が始まったという。


あの時の事件はもしかしたらグリムの仕業ではないかと噂され始めたのはこの後すぐだった。


この様な事件は4年前のあの日から度々あったという。それを不審に思った領主は調査隊を派遣し、グリムを発見したからだ。


「はぁ…」


俺は再度ため息をつく。


いかなる理由があれ今のルナの父親の愚行をやめさせなくてはならない。


明日が勝負だ…


そう心の中に思い今日は眠りにつく。











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