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第12話〜グリム再来

日が暮れ、暗闇に飲み込まれたアイリス南の平原。黒一色の光景に暖かい炎が点々としている。その数10や20ではない。下手すれば100はありそうな火の玉は一直線にアイリスへ向かっている。


「お頭!見えてきましたぜ!」


「そうだな…楽しみだ」


不敵な笑みを浮かべながら手下の声に応える男は松明を片手に進む。


もうすぐでアイリスへ到着する。


「おい止まれ!通行…ガハッ!」


アイリスの城壁。南門前…そこに来た謎の集団は突然門番を斬りつける。恐ろしいのは鉄の鎧を着ているのにもかかわらずそれを紙のように切り裂き、門番の命を一瞬で散らしたところだ。


闇からの突然の一撃。右肩から左脇腹に抜ける大鉈。2つに割れる同胞。4人一組のグループの3人は声すら出なかった。


「う、うぁぁぁあぁぁあ!!」


1人が大声で叫ぶ。しかし残り2人は腰を抜かす。そして1人がやっとの思いで警鐘を鳴らそうと手をかける。


「ーーーッ!!」


「グハッ!」


突如喉に突き刺さる弓矢。警鐘を鳴らそうとした門番はあっけなく高台から落ちる。


「おら行くぞ」


台の上のもう1人と横で震えてるやつを射抜き殺し、切り捨て、先へ進んでいく。


街はとても静かだった。いつもの様子が想像できないくらいに。恐らく門近くのものが全員に伝へ逃げたのだろう。


屋台の品物や食べ物はそのままにしてあり、ついさっきまでいたことが丸分かりだった。


「奴は恐らくギルドだ」


不気味な笑みを浮かべギルドへと向かう。


ーーー ギーッとギルドの扉がひらく


そこから現れたのは憲兵だった。


「ふぅ〜、なんだ驚かせ…」


「助け…」


バタン…


フルヘルムの憲兵は鎧に突然亀裂が入り、真っ二つになっている。床一面には血が飛び散っている。


「「え…?」」


「くそっ!」


ガタッと1人が席を立つ。俺以外の全員が今この状況を理解はしていなかったがこの1人のおかげでギルド内はパニックになる。


俺、ルナ、ミーナ以外は狂ったように叫びながらギルドの裏口から我先にと逃げていく。


「くっくっく…ギルドには3人か〜、お前含めて…」


にたつきながら入ってくるグリム。その後ろからは数え切れないほどの群勢が待機していた。皆同じような山賊以上に包まれている。


「レン…アレ100人はいるわよ?」


「….……」


不安そうに俺に語りかけるミーナ。

恐怖で黙るルナ…

それはそうだ。こちらは3人で敵はおよそ100人…確かに不安になる。


俺も内心これは予想外だ。


どうする…ヤバイな…正直あの山道でも死ぬかと思ったのにそれを優に超える数ときた。

正直そんな策は持ち合わせてないし、勝てる気も当然ない。


「もし、あるとすれば…」


イビルアイってのに賭けるか?いや、そんなに強い能力なら最初から依頼なんかに出していないはずだ。


「ふん、獲物が勝手にのこのこ現れるのは都合がいいな」


ここでは相手に自分が無策なことを悟らせてはいけない。


そう思い、あえて余裕の体制でいく。片手を腰に当て、顔を背ける。


「ほう?随分と余裕だな?」


「ちょっとレン!」


「やれ」


あの時のように片手を上げ、背を向けるグリム。しかしあの時と違うのは敵の量。尋常でない数が押し寄せてくる。


俺とミーナは腰を低くし、剣を持ち戦いに備える。サーベルを大きく振り上げながら襲いかかってくる男たち。それを見ているグリム。


「行くぞ…」


俺が小声で自分を奮い立たせる。雄叫びがギルド全体に響き渡る。しかし…


「「「え?」」」


俺とミーナとグリムまで驚きが隠せなかった。止まったのだ。前衛でこちらに向かってきた男たちが…ピタリと息を合わせたように、まるで時間が止まったように…


「レンさん、ミーナさん。この人たちは私が引き受けます。なのでグリムを」


聞き覚えのある声。しかし、イメージがそのものとはかけ離れていた。いつもは弱々しく、臆病な奴。しかし今の彼女は勇ましさをも感じさせるオーラをまとっている。

そして、両眼の包帯を外し、その真紅の目をあらわにしている。


「チッ!イビルアイか?」


「グリム・ハーヴェー…あなたはこの目に見覚えが…ありますか」


途端に声が震えだすルナ。やはり相当無理をしていたのだろう。今ルナは自分の中の恐怖と戦っているのだ。


「この手は使いたくなかったがな」


グリムはそう言いながら3本の瓶を取り出した。その間も止まった盗賊たちは動かない。


するとおもむろにその瓶を叩き割り出した。中身は何も入ってはいなく、ただ煙がギルド全体に充満した。


「なんのつもりだ?」


「時期にわかるさ」


「その前に終わらせます!」


そう言った瞬間止まっていた奴らが動き出す。それらは急に止まっていない仲間を斬りつける。それにたじろぐ盗賊たち。さっきまで止まっていた奴らはまるで操られているようだ。


「どうなってるの?」


ミーナがやっと声を出す。

10人ほどが自分の仲間を斬りつける異様な光景。それによりさっきより人数は大分減っている。


「形勢逆転だな」


「さて、それはどうかな?」


立ち上がったグリムに先制の人たちを浴びせるが難なくガードされてしまう。自慢の大鉈を横に振るうが、俺も剣を使いその上を舞う。一進一退の攻防。


俺の攻撃は力で完全に防がれ、グリムの強力で素早い攻撃も俺は受け流し、次への攻撃へと移る。


他の盗賊の方は恐らくルナのイビルアイの効果により仲間割れを始めている。ミーナも戦っている。

魔法は使わないが…


周りの状況を冷静に判断しているとグリムの横からの一撃を流しきれず吹き飛ばされた。


「痛ッ!クソが!」


「おい、どうした?動きが鈍くなってきたぞ?」


確かに言われてみれば体が重たい。反応が少し遅れる。恐らく今の一撃であばらが何本か折れた。激痛だが今はそんなことを気にしている暇はない。


このまま行けば負けてしまう。


「ミーナ!魔法使えるか?」


「む、無理!さっきので大分吸われちゃったから!」


「はぁ!?」


サーベルを受け止めながら早口で応えるミーナ。魔力値とはMPの事なのだろうか?だが、今使えないとなるとミーナの魔法の使える数は大分少ないかもしれない。


「もともと3個しかサンダーは出せないのにドレインなんか持たせるから!」


サーベルを跳ね返し、腹を切り裂く。次々とかかってくる山賊の数に比例し、3人ともどんどん疲れが見え始める。特にルナはひどい。最初操っていた数が10人に対し今は5人ほどにまで下がっていた。


「いや、それだけじゃない…」


手足がしびれる。視界が歪む。吐き気がする…立っていられない。


「やっと効いてきたか」


かつてないほど顔をにんまりとさせるグリム。まるでその顔は昆虫が餌にかかった時のような無邪気な子供のような笑顔だった。


だが、膝をついたのは俺だけではなかった。後ろのミーナもルナもみんな立ってはいられなくなっていた。操る人数はすでにいなくなっていた。


俺たちがこのような状況に対し、盗賊どもはみなピンピンしている。


「何故だ…?」


「まだ分かんねーのか?くっくっく…特別に教えてやるよ」


ゆっくりと口元を上げ、指を一本立てる。そして目をカッと見開きさらに続ける。


「毒だよ」


マジかよ…コレはマジでまずいな


額の汗がさらにひどくなり、自分の状態は過去最悪になっている。


さて、どうしたものか…




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