ⅢーⅨ
今回夏海と一緒にダンジョンに挑むのは、百人ちょっとのプレイヤーたち。
いくら大勢でとはいえ、普通はここまで大勢にはしないだろう。協力で突破せよとは言ったって、協力する人数が可笑し過ぎる。
「夏海の人気が分かりましたか? このように、皆夏海のことを待っていたのです」
自慢げに夏海はそう言った。
その声は子供っぽかったのだが、かなり真剣な顔をしている。俺の方は見ずに画面だけを見つめている。
雑魚敵には構わず、夏海たちはどんどん進んで行った。
洞窟のような所に入って行き、それからの夏海の表情は真剣そのものだった。集中して画面を見ている。全くもって目を逸らしたりはしない。
『援護、お願いできますか? 夏海は攻撃に回りたいと思います』
他の敵よりも、少し強そうな敵が現れる。見た感じは中ボスってところだと思う。
夏海はそう指示をする。誰も逆らえない、夏海様からの指示だった。
当然、夏海の言葉に合わせて動いて行く。半分以上もの人が援護に回り、特に強そうな人達が夏海の隣で武器を構えた。
『誰も死なせたくはありません。回復を優先して下さい』
体力が減ってきた見方を見ると、すかさず夏海は指示を出す。それと同時に、画面はほぼ淡い緑の輝きに包まれていた。
その中でも夏海は闘い続けていた。回復はされていくから、攻撃されるのを恐れずに済むのだろう。
勇敢に夏海は立ち向かっていった。攻撃も出来るだけかわし、華麗なスピードで華麗に攻撃していく。えげつないくらい集中攻撃を受けていたそいつは、遂に体力がなくなり消え去った。
敵と呼ばれるモンスターを倒した、それは喜ぶべきことなのだろう。しかしなぜか俺は、あのモンスターが可哀想に感じて来た。夏海教信者たちの連携プレイにより、ほぼ抵抗すら許されず死んでいったのだから。
「お兄ちゃん、これが夏海の力ですよ。えっへん、凄いでしょう? 褒めて下さい、褒めて下さいよ」
あいつを倒したのが余程嬉しかったのか、夏海は笑顔で振り返る。
真剣な顔をしていた夏海が。視線を少しも逸らさなかった夏海が。それほどまでに、勝利が嬉しかったのだろう。
「さすがだな、夏海」
だから普通に褒めてあげた。モンスターの感情なんて、そんなのを考えるのもやめた。
しかし俺は、ゲームでの強さを褒めた訳ではないから勘違いしないで欲しい。勿論だけど、ファンが沢山いるという点を褒めたのだ。夏海は人気者だなー、って。
「ありがとうございます。お兄ちゃんに褒めて貰えるように、夏海はもっと頑張りますね」




