学校生活
昨日のことがまだ夢のようで、一晩寝ても頭がぼんやりしている。
あの佐々木は本当に佐々木だったのだろうか。
いや、佐々木なのだから佐々木なことに間違いはないのだけれど、学校の姿とクロコダイルがあまりにも違くて頭が混乱している。
ぼーっとする頭でメガネを手繰り寄せ、洗面所に降りていく。
顔に水をかけて雑念も洗い流しながらコンタクトをつける。
「父さん、朝ごはん作るね」
「おう、ありがとう。」
朝はいつも味噌汁に白米、そして夕飯の余り物の健康的で簡単なメニューだ。
母さんが入院し始めた日から、ずっと僕が作り続けている。
「いってきます」
「行ってらっしゃい」
他愛ない朝の落ち着いた雰囲気に、頭がスッキリしてきた。
今日は早く行こう。
朝早く登校したからか、教室には誰もいなかっ‥‥いた。
「お、瀬戸じゃん!朝早いなー」
いやそっちは早すぎだろ!?
なんで、なんで津田がここに。
そしてその津田と親しそうな石井がここに。
佐々木とデジャヴだ。
「あー俺津田ね!よろしくっす☆」
「私は石井。こいつのお守りとでも思っておいて」
「おもりってなんだよー。バブー」
「うわぁ気持ち悪」
「っ地味に刺さる」
「ふふっあはははは」
津田も石井も警戒してたような人じゃない。
僕が、世の中を、人間関係を悲観しすぎているだけだったのかもしれない。
一方津田は、「何こいつ!うわ静かそうなやつ喋りずれぇって思ってたら普通にめちゃくちゃ話しやすい!?」と感動してしまっていた。
そのため絡まれ続けた僕は、田淵がくるまで解放されなかったのだった。
「田淵ぃぃぃぃぃ」
「…どした?」
「津田が怖い、陽のオーラが怖い」
「その割りには、楽しそうだったけど」
「ううううううう」
やはりいくら話せても僕にあそこはきつい。
そういえば、昨日の佐々木とも似た感じだったな。
その瞬間急に背中を思いっきり叩かれた。
「おはよう瀬戸!」
「お、おはよう」
「朝からゆうとが困らせたんだって?ごめんねー」
「ゆう、と?」
「津、田、ゆ、う、と!あー、幼馴染なんだよね」
幼馴染はキャラまで似てくるのだろうか。
「ねぇ佐々木〜」
「あ、ありにゃんだ!じゃあね〜」
まさか学校でも同じようにハイテンションで話してくれるとは思わなかったから驚いた。
こちらが意識しすぎなだけだろうか。
僕とは違くて明るい彼女が昨日、「jkは資格」だなんていっていたことが信じられない。
気になる。もっと知りたい。
「とー、瀬戸ー?」
「あ、ごめん」
この気持ちは多分よくある恋とかじゃなくて、ただの好奇心だ。
いまはまだ本当に。
「朝礼始めるぞー!」
「ギリセーーーフ」
「いやアウトだろ!」
先生が笑って遅刻欄に印をつけながら突っ込むと、教室がどっと湧いた。
先生と同時に同じ扉から押し入るようにして入ってきたまことが、こちらににっと笑いかける。
いいなぁ、人を笑顔にする才能あって。
「今日は、早速だがもうすぐある社会科見学の反決めするぞー」
「おおおおおおお!」
歓声に溢れかえるクラスの中には、誰と班を組むか見渡している人なんかもいる。
「まぁ、親睦を深める的な意味でも好きな人と組んでくれ。男子4人、女子4人が一番理想的だな」
ぱっと振り返ったまことが
「蒼とゆうき、一緒に組も!」
「うん」
そう言った瞬間
「俺も混ぜてー」
「津田」
驚きに固まる。
「なんだよその顔ー!いいだろ」
「オレたちは別にいいけど〜」
「津田くんならもっと他に組めるところあるんじゃない?」
ナイス田淵!
「いーや、ここがいい!なんていうか寒いこと言ってもサラ〜っと流してくれそうな雰囲気が気に入った!」
「ふっ、なんだよそれ」
会話をしているうちにもう班はだいたい決まっていて、抵抗の仕様はなさそうだった。
津田はまぁ話してるとやなやつではない。
ハッピーボーイって感じだ。
ただ、赤染した髪の毛の存在感が強い‥。
「ゆうとー!そっちの班の女子私たちでいい?」
「あーオレはいいけど。3人は?」
「別に、誰でも」
「いいよ〜」
「あ、うん」
「じゃあよろしくぅ!私が佐々木舞雪でー、これがい」
「勝手に『これ』扱いで自己紹介横取りすな。石井亜里沙。」
「私、あの、その、上田美穂といって…」
「あたいは上田心穂だよん。心に稲穂の穂でここほっ」
気だるげな雰囲気のある石井、おどおどした雰囲気のメガネで真面目そうな美穂、元気が有り余っていそうな、佐々木とはまた別のガヤっぽい心穂。
美穂は左に垂らして結んでいて、心穂は右にサイドポニーだ。
二人とも栗色だけど‥
「この髪の毛地毛なんだよん。いいでしょー」
なんだか僕だけが視覚的に大きく浮いている気がする‥。
「はーい、ひろちゃん、ここ班決まったよ〜」
「おう、そうか」
まだ何もわからないけれど楽しそうな班だ。




