表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/10

クロコダイルの入塾生 No.1

「えと、父を呼んで来ますっ」

嫌いないタイプではないはずだ。

嫌なのはそう‥ズカズカ心に踏み込んでくる感じ。

でも彼女は、ぴっと伸ばした背筋にほとんど表情が読めない顔の威圧感がすごかった。

奥の部屋にテキストを取りに行ってしまった父に思わず縋ってしまう。

「父さん」

「どうした?

 あ‥新しい子ちょっと癖があるだろ」

「ちょっとどころじゃないって‥僕、部屋に帰ってていい?」

「あーうん」



2階に上がった途端、言い知れぬ安心感が押し寄せた。

やはり自室で一人の空間にいるのは、自分のテリトリーを守れているようで落ち着く。

勢いよくベッドに腰掛けると、机の上の編みかけのレース編みが目に入った。

紺色のシンプルな作りで、体育着を入れる巾着にしようと思っているものだ。

ぼんやりと眺めてから手にとって、続きを編み始めた。

ざくざく太めの毛糸で成形しながら、ふと田淵とまことを思い出した。

あの二人ならなんていうかな、この趣味のこと。

しばらくは話せそうにないけど、いつかわかってもらえる日が来るといい。



「いー、蒼ー」

「あっ」

「蒼ってほんとに、趣味にハマると抜けないよな‥‥」

「‥ごめん」

「いや、いいよ。それよりご飯お願いしてもいいか?」

「うん」


家事の中でも料理に関しては全て任されている。

繕い物なんかもそうだ。

家にいると家事して偉い!なのに、外ではいつも…

「うわっ、火出てるぞ!」

「え?うわぁぁあ」

考え事をしているとダメだ。しっかりしよう。


「はい、回鍋肉」

「ありがとさん」

明日から本格的に学校が始まる。

支度をして早めの就寝に入るうちに、クロコダイルの少女のことなんかすっかり忘れてしまっていた。




学校の最寄駅から学校までに、たった一つしかない交差点にはたくさんの我が校の生徒が集まっている。

あれは‥確か佐々木、とか言ったっけな‥。

「よう」

「ぅわっ」

カツアゲかと思った‥

「また口に出てる」

「ごめんて」

「ゆうき〜、あおい〜」

遠くで手を振りながら歩いてくる、なぜかビタミンカラーを連想させる少年‥って、まこと!?

「とおっ」

小柄だから、後ろから飛びついてきても僕たちは倒れないけど、それよりも‥

「髪色どうした!?」

「あーこのレモンイエローいいでしょ〜。」

「いや、なんで染めたの?昨日まで黒髪だったよね!?」

「髪染めオッケーだって知ったから〜、インパクトを出すために染めてきました〜!」

「いや、まぁインパクトあるし似合ってるけど‥」

「すごく、いいと思う‥」

こんな二人と絡んでて僕、不良だと思われないか!?




こんなまことだけど、そんなに浮いていない。

みんな結構華やかで賑やかな感じだ。

朝の静けさ、なんて言葉を口にも出せないくらい。

「結構派手な人多いよね〜」

「ね」

「ほんとだよね、怖い‥」

「大丈夫、見た目は田淵が一番怖い」

「え」

軽口を叩きながら教室を観察する。

すでに派手なとこは結構固まってるな。

「誰が目立つ〜?」

「えっ?‥佐々木とか石井とか」

「あーそこか。実は、オレと同じ小学校なんだよね〜」

「へぇ」

「ちなみにどこ行ってたの?」

「清心初等学校」

「ほんと!?」

「超名門じゃん!?」

「ここの学校も結構頭良くはあるけど‥なんでそのまま中等部進まなかったの?」

「あー、なんていうか。まぁどうでもいいだろ」

「‥‥なんか、ごめん」

小学校の話を始めたのはまことだとはいえ、踏み込んでは行けないとこだったようだ。

 他人とは、距離を取らないと。

 近づきすぎちゃいけないんだ。

「朝礼はじめるぞー」





今から始まるのは地獄の時間。

そう、自己紹介!!

大丈夫、趣味とかは捏造してきた。

しっかり資料も用意済みだ。

「じゃあ、名前、誕生日、趣味、一言アピールよろしく!」

一言アピール!?

そんなの、よろしくお願いしますだけじゃダメなのか。

考えてない、まずい。どうしよう、ほんとにどうしよう。

「小林太郎です。誕生日は6月25日、趣味は‥ないです。こんなわたくしですが布教とかも全然大丈夫なので、気軽に話しかけてください」

どんどん順番は近づいてくる。

太郎が、名前にしてはキャラが濃い!

緊張が解けない‥

「佐々木まいです!誕生日は8月16日で、趣味は‥食べることでしょ、kーpop聞くことでしょ、あ、あとダンスと‥。まーとにかく、mbtiは主人公タイプです!よろ〜」

あー、どうしよう。

「鈴木まことで〜す。誕生日は3月3日、趣味は、ソシャゲとお絵描きかな。よろしくね!」

一気に前のまことがハードルを下げてくれた!

「瀬戸蒼です。誕生日は8月16日、趣味はイラストやゲーム、後バラエティ番組とか。割と手先の器用さには自信があります。よろしくお願いします」

変なことは言ってない‥よな?

後ろを向いてグッと親指を立ててくれたまことに笑顔を返す。

「田淵祐希です。誕生日は4月5日、趣味はバスケ、よろしくお願いします」

「田淵もう13歳だったのか!?」

「うん」

『おめでとー』

みんなが田淵のバースデーソングを歌いだして、自己紹介どころじゃない盛り上がりよう。

だから僕本人ですら、手紙が筆箱に入れられたのに気づかなかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ