⑺ 私にだってプライドがある
新たな1週間が始まった。
このプロジェクトの統括、スコッチの主任が私と打合せをしたいと言ってきた。
私は予約した会議室で彼と向き合って座った。
最初に彼が切り出した。
「今回のプロジェクトで、私は統括を降りようと思う」
しばらく沈黙が続いた。
そう、今回のプロジェクト、私はポンコツだが、彼は私同様ダメダメである。
いや、正しく言うと、今回のプロジェクト、碧以外、深いところへは誰も手が出せない。
私が言った。
「このプロジェクトが失敗した時、その責任を取る為に貴方は居るのです」
「……」
「まあ、私も副統括という事で、ただで済むとは思っていませんが」
「……すまない」
「大丈夫ですよ。何と言っても水瀬碧が監督ですから」
「……」
「このプロジェクト、成功させれば貴方の業績です。ですので絶対に成功させましょう」
彼が私に聞いた。
「私に出来る事を教えて欲しい」
私は答えた。
「私の下に就いて下さい」
しばらく沈黙が続いた後、彼は答えた。
「了解しました」
その答えを聞いて、私は確信した。
彼にとって、今回のプロジェックトからの評価等、眼中にないのだろう。
成功させる為なら何でもする。
彼から見て、格下である私の下に就いてでも……
このプライド、私は好きだ。
私は提案した
「今回のプロジェクト、水瀬さん以外、誰も手が出せない。しかしこのままでは困ります。水瀬さんの基礎検討が一段落したら、勉強会を開きましょう。そして、今後はもっと密に、情報の共有を図りましょう」
この様な話し合いのもとで、ストロベリーとスコッチのメンバーは、1日1回、合同で打合せを行う事となった。
それ以降、話がスムーズに進む。
このプロジェクトに参加している人達の認識が変わったのだ。
碧とスコッチ主任との関係が復活した。
第3研である碧の指示は、スコッチ主任とコンセンサスが取れている。
それは、彼らにとって、安心して受ける事の出来る指示となった。
私は、言ってみればお飾りの副統括である。
私にだってプライドがある。
ここは1つ、プロジェクト成功の為、お飾り役を演じよう。
・・・・・・
しかし、ストロベリーのメンバーは、それを許さなかった。
千広は私を見下す第1研の研究員に対して『なんなんですかあなた達は……』と言い放ったらしい。
千広さーん。
人それぞれ役割分担ありますから、私の見下され役、壊さないで下さーい。
するとリーダー君が、怖い顔して言った。
「見下され役は私が担当しますから、主任にはもっとやるべき事、あるでしょう」
……こそーっと楽しようとしていた事、ばれていたようだ。
・・・・・・
そして、いよいよプロジェクトの骨格が完成した。
改めて全体会議を開く事となった。
会議は2部構成、第1部は各グループの代表に集まってもらい、全体の構成とロードマップの確認。
そして第2部は、このプロジェクトに参加している研究員全員に参加してもらい、このプロジェクトの基礎となっている碧の論文のレクチャーである。
以前、私のチームで行った勉強会を、プロジェクトに参加している研究員全員に対して行う。
ただし、私の話はしないように。
その事だけ碧に頼んだ。
そしてプロジェクトは動き出した。
当初の予定の3ヶ月遅れ。
しかし、私の見立てとしては直ぐに取り戻せるだろう。
プロジェクトは軌道に乗せるまでが大変だが、今回はしっかりと基礎検討を行っている。
順調に進むだろう。
次回:避けていた領域




