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⑹ 深夜の検討会議

 会社に着くと、みんなテンションが高い。

 なんだろう、過酷な毎日がこれから始まるというのに。


・・・・・・


 主に碧と助手役の綾乃は実験棟で実験している。

 午前0時に近づいた頃、私は二人がいる実験棟へ行った。


「どんな感じ?」

「あ、主任、お疲れ様です」

 綾乃が応えてくれた。


「今、4回目のデーター取りを行っています。後30分ほどで終わります」

「じゃあ、今日はそのぐらいにして、寮の食堂で今の状況、聞かせてもらえるかな」

「了解しました」


「軽く、飲み物でも用意して」

 綾乃との会話に碧が割り込んできた。

「宴会ですね」

「あ、ああ。明日にひびかない程度に」

 作業が終了したらメールを送ってもらう事にして、それをみんなに伝えて解散した。


 各自、自分の部屋へ向かった。

 そして、綾乃から実験終了のメールが届いた。

 私は自分の部屋で楽な恰好に着替え、寮の食堂へ向かった。


 食堂は午後8時までの営業となっているが、それ以降でもテーブルや椅子は自由に利用して良い。

 だが、さすがに午前0時を過ぎた深夜、利用している人はいない。


 私は落とされた照明の中で端の照明だけ点灯し、その下のテーブルに座った。

 するとリーダー君とインテリ君と千広の3人が、途中のコンビニで食べ物を買い込んで現れた。

 ああ、やはり宴会を始めるつもりだ。


 そして碧と綾乃も現れた。

 二人とも急いで来た様で、職場での服装のままである。


 碧はいきなりカップの清酒を取り出した。

 それだけは、しっかりと買ってきたようだ。


「では、お疲れ様でした」

 私が挨拶すると、宴会が始まってしまった。

 お酒を飲みながら仕事の意見交換を行う。


 以前、みんなから出て来たアイディアは、何か的外れだった。

 だが、先日行った碧のレクチャーのお陰で、出て来るアイディアはピントが合っている。

 有意義な議論が繰り広げられるようになった。


 しばらくすると、警備員が懐中電灯を照らして現れた。

 私は慌てて警備員に伝えた。

「あ、すみません。今、仕事から上がりました。後30分ぐらいで解散します」


 それに対して警備員は、笑顔で返してくれた。

「了解しました。会社から皆さんの特例対応、連絡を受けています。お疲れ様です」

 そう言って、彼は去っていった。


 それからというもの、深夜の宴会は毎日となった。

 日に日にお酒と食べ物が増えてくる。


 なんだろう、会社帰りに行う飲み会と何かが違う。

 そう、後は寝るだけというところだ。


 では、自宅で飲むお酒と何が違う?

 それは、明里がまだ飲めない為、私一人で飲んでいるという事だ。

 今は一緒に飲める仲間がいる。

 すばらしい。


 いやいや、我々は宴会する為に、ここへ寝泊りしている訳ではない。

 睡眠時間をきちんと取る為、深夜宴会は午前2時までとした。


 充実した毎日である。

 社員寮で深夜の宴会を始めてから、基礎実験も目的とした結果が得られるようになってきた。


・・・・・・


 日曜の昼過ぎ、自宅へ帰ると明里は切ない表情で迎えてくれた。


 明里と一緒に夕食を頂く。

 そして月曜の朝、明里は会社に向かう私に声を掛けた。


「おじさん本当に……体を壊さないようにね」

「ああ、ありがとう」


 明里は私を心配してくれている。

 私はその言葉に甘えていた。

 大切な事を見落としていた。


 心配しなければいけないのは、私の方だった。


次回:私にだってプライドがある

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