⑵ 明里の千夜一夜
入浴を済ませてベッドで横になっていると、明里が部屋をノックした。
「どうぞ」
明里は枕を抱いて入って来た。
「お布団の中でお話ししたい」
「はい」
明里はいつものパジャマ姿で私の布団に入ってきた。
「さっき、伊代から掛かって来た電話で、あの時一緒に居た彼氏さんと、昨日から同棲始めたって」
「そう……伊代さん、その彼氏さんとは、付き合い長いの?」
「高2の文化祭からって言ってました」
「学校で、彼氏の話、良くするの?」
明里は笑みを浮かべて言った。
「女子高での友達との会話、興味あります?」
「明里が友達と、どんな話しをしていたのか……はい興味あります」
「……では……女子校って言っても色々あると思いますが、私の学校って異性に対して閉鎖的なんです」
「名門のお嬢様学校だからね」
「だから、クラスメートで彼氏のいる……男の人と付き合ってる人ってごく少数」
「すばらしい」
「その子達も、彼氏の事は話しません」
「こっそり付き合っているのですね」
「ただ、伊代だけは彼氏がいる事を公表して、昼休みはお弁当食をべながら彼氏の話しをしています」
「キャッハ、ウフフ……みたいな?」
「……」
……あれ? 明里さん……ちょっと私に冷たい眼差し向けている?
「それで、伊代の周りには、そういった事に興味津々な子が集まってきます」
「そうでしょう」
「その一方で、そういった話は、はしたない……って子は、その中に入らない」
「興味津々グループと、その中に入らないグループが出来てしまった訳ですね」
「はい。伊代は興味津々グループのリーダー」
「なるほど」
「私の成績が大きく落ちてしまった時、伊代が話しかけてきて『もしかして明里ちゃん好きな人出来た?』って聞かれて……」
「伊代さんは明里の家庭事情を知らないから、勘違いしたんですね」
「その頃、おじさんとの同居が始まった時で、首を縦にふったら『仲間じゃん』って言って強引に興味津々グループへ入れられてしまった」
「そうですか」
……あれ? 明里さん、またちょっと、冷たい眼差し、向けている?
「それからの昼休みは、みんなでお弁当食べながら、伊代と彼氏さんのお話しを聞かせてもらいました」
「そーなんだぁ」
「でも、グループに入らない子も、自分の席でお弁当食べてると、伊代の話が聞こえてくるので……エッチな話になると困っちゃうよね」
「『そういう話は教室でしないで下さい!』って誰か言わないの?」
「それが誰も言わない」
「本当は聞きたくて……聞き耳立てているに違いありません」
「さあ」
「……で、女子高の伊代さんは、どういった経緯で彼氏さんと知り合ったのでしょう」
「はい。伊代は一人で友達の文化祭に行きました。そこでタイプの人に声をかけて『一人なんですが案内してくれませんか』……って」
「それは……伊代さんは友達の学祭へ漁りに行ったのですね」
「そこで彼を捕まえて、メアド交換してミッション成功」
「伊代さんは肉食系」
「そして、彼との付き合いが始まったけど、なかなかキスしてくれないって」
「……ほう」
「伊代から誘っても、してくれない」
「その彼氏さん。最低ですね」
明里は私をチロッと見た。
私は心に棚を持っている。
「付き合い初めてから3ヵ月後、ようやくキスしてくれたって嬉しそうに話してた」
「彼氏さん頑張った」
「それからは早くて、次の週には彼の家で最後までいっちゃったって」
「……しかし……まあ……なんだねぇ」
「彼は高校のクラブを辞めてアルバイトを始めました」
「ほう」
「週末に行くラブホ代を稼ぐ為です」
「……そうですか」
「彼の趣味で、制服着たまま……」
「けっけしからん! 女子高生が制服着たままぁ?」
……明里は、高校の制服……とってあるだろうか?
「……おじさん?」
「はい。なんでもないです」
「……」
「で、グループの中では、伊代さんが1人で話しをしているの?」
「ええ、それでみんなは伊代に質問攻め」
「すごいなー」
「伊代は、それに何でも答えるから、どんどんエッチな質問になっていく」
「伊代さんすごい」
「おかげで色々教わりました」
「そうですか……で、どんな事、教わったのでしょう」
「女性と違って男の人は、何もしないと溜まってくるって」
「えっ……」
「男の人は、溜まってくると辛くなるって」
「いやっ……それは……」
「それを治めるのは彼女の役目だって」
「……それは……彼氏さんが伊代さんに教えた話しですか?」
「伊代は彼女として、毎週それを治める為に……」
こっこれは……このグループに入っていない子達にとって、聞こえてくるこの話は……頭ん中、沸騰させているに違いない。
明里は私をチロッと見た……やばい!
「おじさんは……」
私は慌てて割り込んだ。
「さて、じゃあそろそろ私は、明日に備えて寝ようかな」
この先、とんでもない質問が待っている。
「……はい。ではおやすみなさい」
明里はベッドから降りた。
「はい、おやすみ」
明里は自分の部屋へ戻って行った。
やれやれ、これだからお嬢様学校の女子高生は……
しかし、明里さんにも困ったものだ。
いいかげんな話しを素直に教わって。
……今晩は、高校の制服を着た明里さんに治めてもらおう……頭の中で。
やれやれ、
明里さんには、困ったものです。
次回:私を買いかぶるなよー




