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⑴ パパ活?

次回:明里の千夜一夜

 引き継ぎ作業も無事に終え、いよいよ新しいプロジェクトが始まる。

 絶対、大変なプロジェクトに違いない。


 このプロジェクトに参加するチームの代表が2名ずつ、第1研の会議室に集められた。


 ストロベリーからは私と碧で会議室に向かった。

 今日は単に顔合わせである。


 会議室に入ると机が四角形の形に並べられており、向かい合う形で座るように配置されている。

 全部で30席ぐらいだろうか。

 各チームの代表2人ずつの参加からみると、10チーム以上で進めるプロジェクトのようだ。

 事業部ならともかく、研究所の中でこれだけの人数を専任させるプロジェクトは初めてである。


 各机には、このプロジェクトに招集されたチームの名札が置かれている。

 正面の一辺は取締役、所長、部長の席で、左右の両辺は正面から離れるに従い、格下のチームといった序列で並ばれている。


 さて、私のチームの席は? と、下から探していった。

 元々第1研のプロジェクトである。

 第1研に常駐している第3研の私達は、言わばお手伝い。

 お手軽実験で結果を出して、このプロジェクトを成功させたい。


 ところが、ストロベリーの名札が無い。

 碧が左列一番前の席で手を振っている。

 いやーな予感しかしない。

 そこにストロベリーの名札があった。


 会議が始まった。

 分厚い資料が配られる。

 各チームのメンバーには、電子データーをダウンロードするようにとの事。


 そして各チームの紹介。

 ここは第1研なので青色のストラップ。

 私と碧だけは第3研なので紺色ストラップ。

 私は『お手伝いですよー』を賢明にアピールする。


 今回のプロジェクトの統括は、右側の最上席に座っているチームスコッチの主任。

 元、碧の上司だ。

 紹介とともに拍手がわいた。


 そして、副統括として私の名前があげられた。

 いやいやいや、冗談はやめましょうよ。

 会議室は静まり返った。


 そりゃそうだ、なんなんでしょう。

 これは、私に対する嫌がらせですかぁ?

 こういった事、普通は前もって、連絡来ますよね。


 そして、具体的な内容の説明がスコッチの主任から行われた。

 このプロジェクトは、スコッチの主任が立ち上げたようだ。

 彼が統括になるのは当然である。

 しかし、何で私が副統括?


 説明が続いた。

 すると突然、碧が手を挙げた。

「この右下のグラフ、どのように測定されたのでしょう」

 スコッチの主任が慌てている。


「このような結果にはならないはずです」

 あ、碧さん?

「ここは非常に重要な所です。このプロジェクトの根幹に関わる事です」

 慌てて所長が間に入った。

 会議は中断し、解散となった……なんなんだろう。


 どうやらこのプロジェクト、碧が博士号を取った研究内容が基礎になっているようだ。

 なるほど、だからこのプロジェクト、碧の参加が大前提。

 碧の上司である私が副統括。

 ……やれやれ。


 私は解散した後、会議室に残った。

 所長の前でスコッチの主任が碧に説明している。


「こんな感じになるだろう」

「いえ、これはそんなに簡単な問題ではありません」

 まあ、この件に関しては、碧が神様だ。


 そして、このプロジェクトの骨格を見直す事になった。

 それを、なんとチーム・ストロベリーに回ってきた。

 はい、そこ、おかしいから……そーでしょー


 私と碧は深刻な表情を浮かべて会議室を後にした。

 研究室に戻り、メンバーに概要を説明した。


 碧が言った。

「3日下さい。確認項目と今後のスケジュールを組み立てます」

「ああ、よろしくお願いします。みんなはこの資料に目を通しておいてください」

 そんな感じで解散した。


・・・・・・


 明里にとって、試験が終わり、学祭も終わった。

 私も、デモを無事に終える事が出来た。

 そこで今日、仕事が終わったら食事に行こうと誘ったら、明里は喜んでくれた。

 店内での待ち合わせ。

 明里は既に来ていた。


「おつかれさまです」

「明里こそ、お疲れ様」

「一度マンションに戻って、着替えて来ました」

「ああ、たしか以前、高校卒業祝いでレストランに行った時の装いだよね」

「はい。あの時は、援交に見られないように」

「そうだね」

 明里は静かに笑った。


 私と明里はパスタとピザを注文し、小皿に分けて二人で食べた。

 他愛のない会話をしながらゆっくりと食事を終え、店を出て駅に向かった。


 二人で歩いていると、目の前に一組のカップルが立ち止まり、女性が明里に声を掛けた。

「……あかり?」

 明里もその女性に返した。

伊代いよ! こんな所で、偶然!」


 どうやら明里の友達のようだ。

 相手の男性は、私を見て気まずそうな表情をしている。

 これはいかんと思い、明里に声を掛けた。

「お友達?」

「ええ、高校の時の」


 私は二人に挨拶をした。

「初めまして。私は明里の叔父です」

「あ……はい……初めまして」


 明里が割り込んだ。

「伊代、ごめん。今度ゆっくり。今日はおじさんとデートなの!」

「あ、ははは……」

 伊代さんは愛想笑いを浮かべて返した。

「はい。ではまた今度、私達は失礼します」

 そして彼氏を引っ張って立ち去った。


 やれやれ……私がもっと若ければ……。

 自宅に戻り、リビングでくつろいでいると明里のスマホが鳴った。

 明里は相手の名前を確認して電話に出た。


「伊代。さっきはどうも……」

 どうやら先ほどの伊代さんのようだ。

 明里は私をチラッと見て、電話したまま自分の部屋に入った。


 明里の部屋から笑い声が聞こえてくれば良いのだが、静まり返っている。

 明里が部屋から出て来た。

 しばらくの沈黙の後、明里が話し始めた。

「高校時代、仲の良いグループがあって、その中の1人が今日会った伊代です」

「……そう」

 ……伊代さん……明里とは対照的に、コントラストの強い印象を受けた。


「いろいろ、心配されました」

「……心配?」

「色々、詮索されました」

「……そう」

「素敵な叔父さんですねって」

「……そう?」


「……ごめんなさい」

「……なんで?」

「パパ活じゃないよねって……」


 私は軽く息を吐いた。

 援交の次は……パパ活……

「明里が謝る事じゃないよ」

「……ごめんなさい」


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