⑴ ネックストラップ
会議室に各主任が集められ、管理部から妙なお達しを受けた。
各社員は会社の正門、及び各フロアーの扉に対して社員証をかざす事で入出が可能となる。
この社員証は通常首からぶら下げているのだが、そのヒモ(ネックストラップ)に対して組織別に色分けを行う事となった。
ネックストラップは幅9mmの帯のような形状で、帯の色は部としての識別を表し、真ん中に入る3mmの線の色は課としての識別を表す。
この2種類の色によって、社員証のヒモを見ただけで、人事部○○課の人だ。経理部○○課の人だ。と解るようだ。
私の第3研究所は、全ての部に対して帯の色に紺色が割り充てられた。
次に真ん中に入る色についてだが、研究所は課としての組織はなく、主任(主任研究員)を中心とした班がその位置付けにある。
よって、主任単位でチームネーム(班名)とチームカラーを決めてほしいとの事だ。
チームネームは何でもいいのですか? という質問に対して
「チームネームは社外に公表するものではありません。社内での管理を目的とした、言わば記号ですので本当に何でも良いです……例えばチーム・エベレストとか」
会議室にお付き合いの笑いがぽつぽつと出た。
「本来、仕事の内容がイメージしやすいチーム・ビデオカメラとか、チーム・ドローン、等といった名前が付けられれば良いのですが、研究開発のチームは事業部と違ってそれのみを行うチームではないと理解しています。今までは各主任の名前で佐藤班とか鈴木班と呼んでいましたが、主任が異動の際、引き継いだ主任にチームを継承してもらいたい事からチームネームを付けてもらう事になりました」
次に、チームカラーの色が別のチームと重なった場合はどうするのですか? という質問に対して
「藍色、青色、水色は、別の色として扱いますので、原色に近い色よりも混合色にして、なるべく他のチームと重ならないように色を選んで下さい。それでも似ている色の場合は話し合いの上で色を変えて下さい。こちらでは色と名前で登録します」
遠い昔、小学生の頃、班決め等を行った時の記憶が蘇る。
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チームネームとチームカラーを部下に丸投げしている主任もいる。
評判悪くても、自分は責められない計算である。
私も部下に丸投げしたいのだが、新人の綾乃では困らせてしまうだろう。
リーダー君か、インテリ君か……なんか2人とも私に目を合わせない。
自分に振られないよう警戒しているのか?
4人しかいないんだ。皆で話し合ってみよう。
私は3人の部下に向けてチームネームとチームカラーの件を説明し、アイディア募集のメールを送った。
リーダー君:『主任にお任せします。私、ネーミングセンス良くないと、よく言われますので』
インテリ君:『チームネームといっても単に記号との事ですので、主任が適当に付けて下さい』
綾乃さん:『主任にお願いします。主任のセンス、興味あります。楽しみにしています』
んー後で不愉快な顔、向けないでくれよー。
しょうがないので私が考える事にした。
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昼食時、いつものように碧を混ぜて、5人でテーブルを囲んだ。
インテリ君が遠慮がちに碧に訊ねた。
「第3研へ毎日来られて、大丈夫でしょうか? いえ、私はご一緒出来て嬉しいのですが、第1研の皆さんが水瀬さんをどのように見ておられるのか?」
それに対して碧は平然と答えた。
「ご心配頂きましてありがとうございます……いいんですよ、私は来年、第3研の主任の下へ異動願いを出しますから」
「ええっ!」
私を除いた3人は、一斉に声を上げた。
リーダー君が訊ねた。
「主任、そういった話になっているんですか?」
「いや、そんな事、通る訳ないだろ!」
すると碧が返した。
「通らなければ退職願い出すだけです」
3人は言葉を失った。
「ですので、来年度からは皆さんが先輩ですので、よろしくお願い致します」
3人は碧の言葉に固まった。
次回:幸せな時間




