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リコレクション  作者: 空犬
第二章 『四事依頼』
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第二章2 「胸の中にある想い」

 通行人の女性二人の会話を聞き、一番に蓮が口を開く。


「皆はさ、知ってる? 最近有名な事件について」


「そりゃあそうですよ。テレビを付ければ話題はそれで持ちきりなんですから」


 当たり前といった様子で琉依は頷き答える。

 叶愛も美琴も、この事件についてちゃんと知っているらしい。


 ここ最近有名になっている事件がある。それは『建物倒壊事件』『物品入れ替わり事件』『偽物事件』の三つ。


 『建物倒壊事件』は空き家やずっと放置されている家を何者かの襲撃により、破壊される事件。


 『物品入れ替わり事件』はスーパーや飲食店の品物がどこかの店と入れ替わって届く事件。


 『偽物事件』は『物品入れ替わり事件』と似ており、届く品物がただの石ころやそこら辺に生えている葉っぱが入っていたりする事件。


 そんな事件が今蓮達が住んでいる東京で起こっていた。


「こう……死人が出たり、僕たちに何らかの形で悪影響を及ぼすような感じではないんですよね」


 琉依の言う通り、この三つの事件が起きているからと言って、殺人犯が逃亡しているとかなど、自分達が危険な目に合う訳ではない。被害に合っている人達は大変だろうが。

 だけど一般人にとってはただ一言、大変だなで終わる。


「そうだよね。大変だけどすごく怖い事件って訳ではないんだよね。建物倒壊事件だって確か、誰も家の管理をしていない空き家だけを狙ってるっぽいし」


 叶愛の発言はニュースで実際に報道されていたものだった。大人による建物倒壊事件の調べの結果だ。


「そうだけど、早く解決するに越したことはないと思う……私は一日でも早く解決してほしいなって、思う」


 そんな美琴はやっぱり意図が分からない事件はどれも怖く、いち早く解決してほしいという気持ちがあった。


「まあ、俺たちが話したところで事件が解決する訳じゃないし……切り替えてボウリング場に行こうか」


 美琴に少し暗い空気を感じた蓮は事件についての話を一旦切り、ボウリング場に行こうと三人に促す。

 美琴はほんの少し顔が明るくなり、ボウリング場へ歩き出す三人の横に並び、共に足を進めた。



・・・・・・


 ボウリング場で遊びに遊びまくった四人は駅に行くため歩いていた。勝敗はというと、一位、琉依。二位、叶愛。三位、蓮。四位、美琴。


 琉依は正に文武両道というべきか。琉依の頭の良さと身体能力は三人をとても驚かせ、見事圧倒的な一位で勝利を納めた。

 だけど二位の叶愛もそんな琉依を驚かすぐらい点数を取っている。叶愛は運動がとても大好きらしく、学校の成績は体育だけすごく良かったと言っていた。

 三位の蓮は身体能力は男子にしては普通なため、安定と言っていい点数を取っている。途中、ガンガン点数を取っていく叶愛を見て、焦って何回か失敗したのは内緒だ。

 四位の美琴は投げる速度も、力も女子にしてはある方だったのだが、ボールコントロールが悪く、何回もガーターに突っ込んでいた。


「うう……ボウリングは久しぶりだったけど、あそこまでガーターになるなんて……」


 四位だった美琴は表情に分かるくらいにボウリング場での出来事を嘆いていた。


「まあまあ、そんなこともあるって!」


「叶愛の言う通りだよ。俺達が時々教えたらガーターじゃないときもあったし!」


 叶愛と蓮はそれぞれ美琴の隣で慰めていた。

 実はあまりに美琴がガーターになっていたため、三人で美琴にボールの投げ方を教えていたのだ。三人の指導を受けて、毎回ガーターではなくなったが、ちゃんとボールがピンに当たったのは指で数えられるくらいだった。


「そうですよ。久しぶりなら仕方ないです」


「あー、一位の人がなんか言ってるー! 圧倒的だったくせにー!」


「ええ!?」


 美琴を慰めている二人に対し、琉依も後からフォローの言葉を投げかけたが、嫌味のようなものを叶愛から言われた。予想外な言葉が返ってきて、琉依自身とても驚いている。


「それを言うなら叶愛も結構圧倒的だったけどね……」


「えー、そうかな?」


「そうだよ。俺叶愛にまあまあな差を付けられて負けちゃったし……」


「えへへ! まあ運動は得意だから!」


 蓮の言葉を褒め言葉として受け取り、叶愛は胸を張り得意気になっていた。


「ふふっ」


 そんな様子を見ていた美琴は思わず笑みを溢した。

 今、この空間がとても楽しいからだろうか。叶愛と二人きりだったときとは違う満足感と心地よさがそこにはあった。


(皆といるのすごい楽しい……今日だってとても楽しかった。まだ会って日が浅いのに変なの。――けど、ずっとこんな関係が続けられたら……毎日がとても楽しいだろうな)


 美琴はそう思った。今日の出来事を振り返って、今の三人を見て、自分の胸に問いかけて、そう感じたのだ。


 四人は駅に着くとそれぞれ別れる。叶愛と美琴以外、帰りの電車は別なのだ。

 夕方の電車内は人も多かったが、空いている席を見つけ即座に座る。座れたことにラッキーと思いながら、窓から見える景色を見て今日一日を思い返していた。


(なんか、こうやって四人で遊ぶの新鮮だな。二人で遊ぶときとは違う感じがする。……そういえば)


 ふと思ったことは、自分の親友についてのことだった。

 蓮の親友は今一ヶ月の停学中だ。学校に戻れるまで後二週間くらい。元気にしてるかな、そんなことを考える。


(冤罪とはいえ一応停学を言い渡されたからって、学校に来れるまで連絡しないって言ってたっけ……本当は誰よりも真面目で、友達思いで優しいのに)


 蓮の親友は誰よりも真面目で友達思いで、そして優しいのだ。その優しさに蓮はいつも助けられている。


(戻ってきたら、学校を無期限で休んでるって言わないとな)



・・・・・・



 ある古いビルの中。そのビルは長らく使われてなく、誰もいないはずのその空間の中に、四人程の人影があった。


「計画は順調か?」


 その中の一人に青髪の男がいた。


「ああ、順調だ。蒼炎卿」


 そう答えた男性は茶髪で赤い瞳、髪は肩まで伸ばしている。


爆裂卿(ばくれつきょう)のやつは結構派手だもんなぁー」


 茶髪の男性に続くように、正面にいた黒髪の男性は答える。


「まあ、それでいうなら俺達の方が陰湿な感じするよな」


 黒髪の男性の隣にいた金髪の男性は、黒髪の男性の肩に腕を乗せ、そのまま答える。


「順調ならそれでいい。報告は以上だ、各自解散しろ」


 報告とやらを聞いた四人の男性は、青髪の男――蒼炎卿の言葉でそれぞれ解散しようと四人はビルの入口に向かう。


 その道中の会話は愚痴に近いものだった。

 蒼炎卿と茶髪の男性――爆裂卿を前に、他二人は横で歩き、入口に向かっていた。


「それにしても、上のクラスの人達俺らのこと使い勝手のいい駒にしか思ってないんじゃね?」


「そうか?」


 隣にいた金髪の男性は、黒髪の男性に疑問を聞き返す。


「そうだろ。スピリツメタルの売買の任務が終わったと思ったら、今度はその依頼を中断して異能探偵事務所ってところの新入社員の実力を見る任務。闇に生きる俺達に堂々と表に出て実力を見ろって言ってんだぜ?」


「――そうぐちぐち言うなよ。これも仕事だ。俺達はただ任務をこなせばいいんだよ」


 長々と愚痴を話す黒髪の男性にしびれを切らした爆裂卿は黒髪の男性がいる後ろを振り向き、注意する。


 黒髪の男性の気持ちも爆裂卿は分からなくもなかった。闇に生きる彼らにとって堂々と相手の前に立つこの任務は、自分達の今後の人生を揺るがしかねないのだ。


 堂々と表に出れば正体がばれかねない。堂々と表に立てば注目されかねない。

 闇に生きる彼らにとって、正体がばれるということは死ぬも同然の意味を持つ。


「爆裂卿は何も思わないのかよ」


 黒髪の男性が発したその問いの答えだけは、爆裂卿は常に持っている。


「――この任務が巡り巡ってあの方の為になるなら、俺は本望だ」


 その問いの返答を聞いた黒髪の男性と側で聞いていた金髪の男性は、次の言葉を出せなくなった。


 ――それは、自分達も同じ気持ちだったから。

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