第二章1 「四人だけのお出かけ」
無事に異能探偵事務所の社員になった四人。
あの見学の日から三日立とうとしている。今は探偵事務所の手続きと制服、スピリツメタル待ちの待機期間といった所だ。
「えっとスマホ持った、財布持った。忘れ物無し!」
慌ただしく持ち物を確認して家を出ようとしている蓮は、今から見学者四人で遊びに行くのだ。
それは待機期間の間に起こったことで、見学が終わった後四人は連絡先を交換していた。
ある日叶愛から一通の連絡が入った。要件は『四人でどこか遊びに行かないか』という内容だった。叶愛の話では既に美琴と琉依には連絡済みらしく、最期は蓮だった。
見学のとき、四人でゲームセンターで遊んだ時間がとても楽しかった蓮はすぐにそのお誘いに了承した。
そして今、そのお出かけに向かっているという訳だ。
集合時間は十一時。電車に乗り、集合場所に向かうと――そこにはナンパされてる琉依の姿があった。
「お兄さん~かっこいいですね~!」
「私達とお茶でもどうですか?」
「ああ、いえ、先約があるので」
ナンパされてる琉依は特に焦っている様子もなく、ただただ普通に誘いを断っていた。
(あれ俺が行っても意味ないよな……もし俺が女性だったら彼女のふりとかして助けられるのに……!)
蓮は陰に潜み悩むが、悩んでいても仕方ないと思い半ば強引に三人の間に入る。
「あの! 友達が困っているので止めてくれませんか!」
精一杯の声を出し、琉依の前に出て発した言葉だが、ナンパしている女性二人にとっては何にも効果はないようで。
「そっちのお兄さんもかっこいい~!」
「この際だから四人でお茶しましょうよ!」
(えぇー……なんか逆に悪化した……)
蓮の予定では、自分がなんとか声を掛けることで女性二人も謝って諦めてくれると思っていたのだが、そう思い通りにもいかなかった。
すると女性二人に気付かれないように、琉依は蓮にこっそり耳打ちする。
「なんで来たんですか! 蓮ってこういう状況に慣れていないでしょ」
「だって嫌がってるかなって……」
「そうだけど、余計に悪化しましたよ。蓮も自分の見た目をよく把握しておいてください」
「別に俺かっこいい訳じゃないし……」
少し呆れた表情をする琉依と、この状況にどうすればいいか分からず、おろおろする蓮。その間にも女性二人は蓮と琉依に話しかけていて、その場から離れてくれない。
「――お姉さーん! 私達が先に誘ったんだから抜け駆けは駄目だよー。私この日すっごい楽しみにしてたんだから!」
そう明るい声が聞こえた。目を向けると、その場には叶愛と後ろに隠れている美琴がいた。
「だから二人から離れて!」
プクーと頬を膨らませ、叶愛なりの怒りを表していた。外から見れば、それはただ可愛いだけだが。
その後女性二人は叶愛と美琴を見るなり、蓮と琉依は彼女持ちと判断したのかそそくさと離れていった。
「ありがとう叶愛、助かったよ」
「そうですね。蓮が来て状況が悪化したときはどうしようかと思いましたが」
「それにしても二人とも早いね! まだ約束の時間じゃないのに」
現在の時刻は十時四十五分。蓮が集合場所に着いたときは十時二十分だった。
「もしかしたら電車が遅延とかして遅れたら嫌だなと思って早く来ちゃってね」
それが蓮の理由だが、少しだけ楽しみだからという気持ちも含まれている。
「なんか私達だけ遅れちゃったね……ごめんね」
そう言って申し訳なく謝る美琴を蓮は「まだ集合時間じゃないから!」と宥める。実際琉依と蓮の二人が早く来すぎただけで、四人とも集合時間に全然間に合っている。
「琉依はなんで早く来たの? やっぱり予想より早く着いちゃったとか?」
蓮はそう訪ねると、琉依は顔を後ろに向けこう言った。
「……少し恥ずかしいですが……この日をすごい楽しみにしてたので……いても立ってもいられなくなったんです」
そう言う琉依の顔は、ほんのり赤くなっていた。
蓮は自分と同じ理由だと分かり、少し嬉しくなった。
「そう思ってくれるのは嬉しいよ! 誘った甲斐があるなぁ!」
叶愛は琉依の理由を聞き、誘った本人としてはとても嬉しい限りだった。
四人は集合場所から歩き出す。メールでは叶愛から映画に行こうと言われていた。そのためにまず昼食を済ませようと飲食店に入った。
注文を頼んでいる間、四人の話は集合場所での出来事に焦点を当てていた。
「実は美琴と二人で行こうとして待ち合わせしてたんだけど……家に財布忘れたことに気付いて急いで取りに行ったら乗る予定だった電車に乗れなかったんだよね」
「二人で行こうとしてたってことは、美琴と叶愛は家が近いんですか?」
「そうだよ、美琴とは中学校が一緒なの! だから家も近いんだ~」
美琴と叶愛は同じ中学に通っていたため、比較的家が近い。中学時代でも時間が合えば一緒に帰ったり、お互いに家に遊びに行ったりしていた。
「そういえば、皆って歳いくつなの?」
「一之瀬さんから俺と琉依は同じ十七ってことは聞いたけど」
「え、なんで一之瀬さん僕の年齢知ってるんですか」
叶愛の疑問に蓮は記憶を思い返し、一之瀬 潤から琉依と同じ年齢であることを伝える。そのことを伝えられた琉依は若干引いていた。
「私は十六だよ!」
「私は十八……」
四人の年齢は皆近く、一番離れていても二歳差だった。
「皆歳近いんだね」
「美琴と叶愛が中学一緒ってことは先輩後輩の関係だったんですね」
「そうだよ!」と元気よく答える叶愛とうんうんと頷く二人を見れば、どれだけ仲がいいのか分かる。その仲の良さに概ね納得していた。
その後も話は続き、注文の品が届いた後も皆食べながら話を続けていた。
昼食を食べ終わり、満腹になった四人は映画館へ移動した。今日見る映画は子供向け番組、某アニメの映画。
映画館についた四人はチケットやジュースやポップコーンなどを売店で買い、席についた。
上映中は静かに。時折隣にいる皆に話しかけ、すごいねなどその場で感想を言ったりする。
そして映画は終わり、四人は映画館から出る。
「すごい面白かったね!」
「うん……感動した」
「CMで知ってはいたけど、予想より面白かったかも」
「最近はこういう子供向けアニメの映画なんて見てなかったので面白いか不安でしたが、中々に面白かったですね。感動もしましたし」
四人は映画館を出た途端、映画に魅入っていたため閉じていた口をこれでもかと動かし、映画の感想を述べた。こういう子供向けのアニメを久しぶりに見れば、やっぱり感動するものなのだ。
「次どこ行く?」
叶愛の問いかけに三人は頭を悩む。今の時間帯は映画が終わり、大体二時くらいだ。叶愛の予定として解散時刻は大体四時過ぎぐらいと考えている。
皆が楽しめて、それなりに時間がかかる所がいい。四人はそんな所あるのかと思いながら必死に悩む。
考えた末、琉依の提案が発表される。
「……だったら、皆でボウリング行きませんか?」
ボウリングは四人でも全然出来るし、四人で三ゲームやれば二時間過ぎくらいの時間を使う。皆が楽しめて、それなりに時間がかかるという項目には当てはまっている。
三人はその提案に賛成。次の目的地はボウリング場となった。
その行く途中、ふと通行人の会話が気になった。
「そういえば、この前から話題になってる事件知ってる?」
「あー知ってる。三日前ぐらいから起こってるやつでしょ? 確かまだ犯人捕まってないんだよね」
その会話をしているのは、飲み物を飲みながら歩く女性二人。
三日前から起こっている事件、という言葉に四人はすぐに頭の中にその事件のことがなんなのか理解した。
何故知っているのかというと、最近テレビを付ければニュースの内容はそれで埋めつくされる。つまり有名だからだ。
それは三つの事件で、この時の四人は思っていなかった。これから自分達でこの事件を解決することになるなんて。




