第一章14 「犯人の姿」
六人全員で移動し、一之瀬 潤オススメのファミレスに到着。流石にこんな大人数なので、分かれて座ることに。
一つのテーブルに一之瀬 潤と白山 ゆか。もう一つのテーブルには見学者四人で座る。テーブル同士は遠いわけでもないため、いつもの声量でも全然会話はできるし声もちゃんと聞こえる。
「ここの料理本当に美味しいんですよね~」
「私ここ初めてです!」
隣のテーブルにいる一之瀬 潤と白山 ゆかの会話をそれを聞きながら、見学者グループも会話が繰り広げられていた。
「皆何食べる? 私ステーキにしちゃおっかなぁ~」
「じゃあ私は……オムライスにする」
「僕はパスタにします」
「俺も琉依と同じのにしよう」
蓮も食べてみたいものが複数あったが、これから犯人を捕まえるのだと思うとすぐに食べられるものの方がいいんじゃないかと考えた。蓮の勝手な考えだが、麺類の方が急いでるときでもすぐに食べられるという考えの元、琉依と同じパスタを選んだ。
時間が立ち、それぞれ頼んでいた料理が運ばれてきた。
六人は頼んだ料理を受け取り、早速食べる。味は絶品で、一之瀬 潤がオススメすることはあるという感じだった。
「わぁ~、とっても美味しい!」
「このオムライスも……ふわふわで美味しい……」
このファミレスのステーキとオムライスに絶品の声を上げる叶愛と美琴。
隣のテーブルにいる一之瀬 潤は自分の店じゃないのにどこか誇らしげだ。
パスタを食べ進めていた中蓮は店の入口が目に入る。たまたま目に入っただけだったが、そこで衝撃的な光景が目に入る。
店の入口で店員と話していたのは先程このファミレスに行く前、蓮と目が合ったあの灰色パーカーの男性だった。
さっきとは違いその男性はパーカーのフードを下げ、顔が見えている。店員は普通にその男性に店としての対応をしていて、席に案内していた。
そして運悪く、灰色パーカーの男性が座ったのは比較的蓮達と近い席に案内された。
(さっきの人……なんでここに? 目が合って、昼食の場所も一緒……そんな偶然、あるのか?)
もしかしたら一之瀬 潤みたいにショッピングモールではなく、ここのファミレスのご飯が美味しいからここに来たという人はいるかもしれない。
そう、偶然かもしれない。
だけど蓮はさっき目が合ったとき、普通の人とは違うナニカを一瞬だが感じた。それもただの一瞬の考えに過ぎないが。
この時、本能的にだがあの灰色パーカーの男性が『危険』な人物だということを蓮の頭の中に刻みつけた。
ここから蓮はあまり楽しい昼食の時間ではなくなってしまった。四人のテーブルは叶愛を中心に会話が広げられ、蓮も他の三人もこの時間が楽しいものだと感じていた。
だけど向かいにいるあの灰色パーカーの男性がたまにだがこちらの方を見てくるのだ。席の位置的に灰色パーカーの男性からゆかは多分見えていない。叶愛と美琴も座っている位置が灰色パーカーの男性に背中を向けているからこの二人も見えない。だとしたら琉依が可能性として気付くかもしれないが、琉依は先程の蓮の出来事を知らない。蓮はさっきの出来事があったから、灰色パーカーの男性に対して警戒モードでいれる。
そんな警戒モードましましの蓮に気付いてくれたのは隣に座っている琉依だった。
「あの、さっきから顔が怖いですけど大丈夫ですか?」
琉依はあまり大事にしたら駄目だと感じたのか、蓮に耳打ちでこっそり喋りかけてくれた。
「……ここから灰色のパーカーを着てる男性見える?」
「灰色のパーカー……?」
琉依は蓮が言った通り、向かいの席に座っている灰色パーカーの男性を探す。
そこで琉依も気付いた。蓮がずっと警戒している理由を。
「……いますね」
「俺……あの人少し怪しいと思ってる」
「……ええ、こっちを見てますね。一瞬目が合いそうになりましたよ。だけど男性の視線的に僕ら四人じゃなくて……隣にいる一之瀬さんと白山さんの席の方を見ているような気がします」
「ただの想像でしかないんだけど……あの人が犯人なんじゃないかって思ってる自分がいるよ」
「犯人じゃないにしろずっとこっち見てますし、違う意味で怪しいですよ」
蓮と琉依二人でこっそり小さな声で話し合っていると、ずっとこっちを見ていた灰色パーカーの男性が立ち上がり、レジの方へ向かっていった。
灰色パーカーの男性は普通に会計し、そのままこのファミレスから去っていった。怪しい見た目なのに何もしないことに驚いた二人だった。ここは店であって公共の場でもあるこのファミレスで目立つようなことをすれば一発で通報確定だが。
あの怪しい視線が無くなってホッとした二人だったが、ふと隣にいた一之瀬 潤の方の席を琉依は蓮と顔を見合わせたときに見た。
そこにはゆかには見えないように、スマホが四人に見えるように置かれていた。スマホの画面には『今店から出ていったやつを追って』と書いてあった。
二人はスマホのメッセージに気付きすぐさま行動を開始した。
「……あれ、すいません一之瀬さん。さっき雑貨屋で買ったものがカバンに無くて……ちょっと探してきていいですか?」
「すいません僕も少しショッピングモールで忘れ物が……」
二人は雑貨屋で商品は見ていたが何も買ってはいない。だけどファミレスから抜け出すには忘れ物したという理由が一番出やすい。
「じゃあ私一緒に探してきまーす!」
「わ、私も……」
昼食を食べていた叶愛と美琴もあからさまな理由に察したのか、蓮と琉依に合わせてくれた。
颯爽と四人はファミレスを出て、さっきの灰色パーカーの男性を探す。
・・・・・・
「私達はどんな人を探せばいいの?」
「灰色のパーカーを着てる男性! 俺と琉依は分かるから怪しそうな人いたら俺達に言って!」
「おっけー!」
叶愛と美琴は席の位置的に灰色パーカーの男性を姿は見えていないため説明をする。こんなときまで叶愛の言葉と返事は元気がよかった。
建物の隙間に入ってしまえば路地のようになっている。
定番か分からないが、犯人は目立ちたくないのがほとんどだと思うため、路地に逃げるんじゃないかという安直な考えだった。
「あの人じゃない!?」
叶愛が大きな声を上げる。四人は路地に入り、そのまま灰色パーカーの男性を探し回る。叶愛の目線の先には、蓮と琉依が見た灰色パーカーの男性背中を向け、そこに立っていた。
「……お前ら、なんなんだ」
灰色パーカーの男性が言葉を発する。その一言だけでは灰色パーカーの男性の意図は分からない。
「今日は全然上手くいかない……ゆかちゃんが探偵事務所に行ってから……ずっと……能力を使おうにもゆかちゃんの側にいる紫の髪のやつからずっと強い圧を感じて近づけない…………なんなんだよぉ!!」
ずっと独り言のようにブツブツと喋り、最後は四人がいる路地の空間に響くような大きい声。最後の声には驚いたが、灰色パーカーの男性から『ゆか』という言葉を発した。これは何かしら関係がある、無関係とは思えなかった。
「全部お前らのせいだ……全部全部全部!!!」
叫びに近い声でそう発した直後、灰色パーカーの男性はこちらの方へ振り向く。その手にはスピリツメタルの原石が握られていた。灰色パーカーの男性はぎゅっとスピリツメタルをいっそう強く握る。
その瞬間、灰色パーカーの男性の背後が闇に包まれ、その中から赤い眼の漆黒の大蛇が現れる。
「お前ら四人も……あの紫の髪のやつと知り合いなんだろ? ショッピングモールにいたとき、ずっと側で楽しそうに話してたもんなぁ……?」
そう言った灰色パーカーの男性は一之瀬 潤も含めて、四人に対して強い殺意、悪意を向けた。




