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私の大切なたからもの  作者: 黒猫マグカップ
18/40

入院

【18】



大学病院に着き、らいとの治療が始まった。

こーやも異変を感じているのか、起きておとなしくしている。


待合室で、時計の音だけが鳴り響く。

──おねがい、神様。らいとを助けて...


もう何時間経ったのだろう...

時計をみたら、深夜3:00。

──まだ目を覚まさないの?らいと?


先生が出てきた。

「あ。...らいとは?!」

「まだ目は覚ましませんが、もう大丈夫でしょう、今日は遅いのでまた明日お越し下さい。大丈夫ですから、目を覚ましたらすぐご連絡します。」

「でも...」

「下のお子さんもいるでしょう?今日はお帰りください」

「...。 わかりました。息子をよろしくお願いいたします...。」


こーやを抱え、先生にお辞儀をして、家に帰った。

涙が止まらない。

「こーやも心配だよね。ごめんね。...ママがしっかりしなきゃいけないのに」


家に帰り病院からの連絡を待ちながら、こーやの隣でうとうと寝てしまい、朝が来た。


病院から連絡が来たのは10時。

「意識がもどりました、お話もあるので病院に来て下さい。」と。



よかった!よかった!

急いで車に乗り、病院へ向かう。

家から近いはずの病院が遠く感じる。

らいとの姿を見るまでは安心できない。


ナースステーションで案内され、らいとの部屋に向かう。


らいと、らいと、迎えにきたよ!

すると...


「?!」

──その部屋は、重症な患者さん用の病室だった。



不安ばかり募る。部屋の奥へ行くと、目を開けて窓の方を見ながら、らいとが静かに寝ていた。


「らいと!?」

「!!! ママ~!」


あぁぁ...よかった。

「らいと、ママのことわかる?」

「ママ~」

らいとが大泣きする。


らいとはどんなに不安だったか。。

起きたら知らない場所で。パパもママもこーやもいない。

それなのに、私が来るまでは静かに、誰にも迷惑をかけないようにじっと待っていたんだ。

なんでそんなに我慢するんだ...まだ子供なのに。でも...


「らいと、がんばったね」

「ママ~!」


さぁ、おうちに帰ろう──と思った時

先生が「ちょっとお話があります。」

「わかりました。らいと、ちょっと待っててね。」

「うん!早く、戻ってきてね」

「もちろんだよー」



先生のお話はこうだ。

何が原因で、今回の症状がでたのかわからない。

この後ももしかしたら、同じことが起きるかもしれない。

5日か、1週間ほど、入院して脳波など、経過を診させてほしいと。


確かに。。このあとまた同じことが起こったら怖い。

でもらいとはおうちに帰れると思っている。

それでも聞き分けがいいので、我慢してでも入院に対し「わかった」と頷くだろう。


病室に戻り、しばらくらいとと遊んでから、らいとに話をする。

「らいと、ママのお話聞いてくれる?らいとね、ちょっと元気じゃないから、今病院にいるんだ。病院で5回寝たら元気になるから、それまで病院で遊んでてね。わかった?」

「...。それって、ママも一緒?」

「...うぅん。こーやがいると病院に入れないんだ。だから、お泊まりは出来ないけど、お昼にこーやをあーちゃん(おばあちゃん)のとこに預けて、らいとのところに来るから...」

「やぁーだ!!」

「らいと、ママもらいとと離れるの嫌だけど、元気にならないのはもっと嫌だよ」

「やぁーだ!!ママも一緒、ママも...うっ、」


──ずっと我慢してた涙があふれでる。


やっと迎えに来てくれたのに、まだ帰れないことを知らされて、どんなに辛かっただろう。まだ子供なのに。

予想外の反応だった。らいとは聞き分けがいいと思って話してしまったこと、それは、らいとに対して押し付けでしかなかったのかもしれない。でもこれが普通の子供の反応だろう。


「ごめんね。らいと。明日また来るからね。」

「やぁーだ!!ママも一緒、ママも!ママ~!」


看護士さんが目配せをする。

お願いします、と看護士さんに視線を送る。


一緒にいてあげたい。すぐに連れて帰りたい。

らいとの泣き声を聞きながら小児科を出て、廊下を歩く。


らいとが退屈しないように、明日はおもちゃや本を持っていこう。

5日なんて、あっという間だ。うん。きっと、大丈夫!

なんて思いながら、目を腫らしみっともない顔で病院をあとにした。











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