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ゲリラ戦

 ブレイドは、ここまで親切にしてきた見返りを求めるのであろう。


「見ての通り、俺たちは戦闘状態にあるんだが、直近の戦闘で仲間が結構やられてな、戦力不足なんだ。どうせ、お前ら行くあてもないんだろう、飯と寝床を提供してやるから手伝っていけよ」

「いえ、俺たちそんな、戦うなんて……」

「ごまかすなよ、俺も伊達に軍人をやっているわけじゃない、お前らの佇まいを見れば相当ヤるってことくらい分かる」


 クロキは黙ってブレイドを見た。

 ブレイドもまたニヤニヤしながらクロキを見る。


「良いんじゃない? 適当にブラついても帰れるとは限らないし……ここなら寝る所と食べる物には困らないわよ」


 またクロキの思惑を無視してヘザーが賛同した。

 クロキはヘザーを見た。


「……それで、良いのか?」

「何が?」


 ヘザーは何も考えていない様子で答えた。


「嬢ちゃんは決まりだな。それで? お前さんはどうする?」


 ブレイドがクロキに聞いた。

 クロキはヘザーから机の上に視線を移すと少し考えて口を開いた。


「あんたらはどこの軍で、誰と戦っているんだ?」




 クロキとヘザーは馬車に揺られ、戦場に向かっていた。

 馬車の中には昨日同乗した戦闘員たち。金髪のスターク、ショートボブのベローチェ、上半身裸体で痩せぎすのファンザ、そして、黒いコートに身を包み、黒いフードを被り、黒い仮面の人物の姿もある。


 昨日ブレイドから聞いたところによると、この軍はモンテ皇国の南に位置する大陸――クロキの世界で言うとアフリカ大陸――の東海岸を広範囲に支配するマフダリ王国の軍である。

 ブレイドの部隊の隊員は、ブレイドを除き、この戦争のために雇われた傭兵であり、特殊な任務を専属して行う部隊であるという。

 そしてマフダリ王国の目的は、多数の小さな部族が存在するばかりで国家の存在しないレムリア大陸を支配することであるという。


「着いたぞ」


 馬車が停止し、ブレイドの指示に従い隊員たちが馬車を降りると、目の前の森の奥から戦闘音が聞こえて来た。

 既に戦闘は始まっているようだ。

 と、森の奥から数人のマフダリ王国の兵士が必死な様子でこちらに向かって走って来る。


「おう、敵前逃亡か?」


 ブレイドが笑いながら声を掛けると、兵士たちが慄き立ち止まる。


「ぶ、ブレイド隊……」

「地獄のブレイド隊だ……」


 どうやらこの部隊はマフダリ王国軍の中でも忌み嫌われているようだ。


「戦況はどうだ?」


 ブレイドが聞くと兵士は緊張したように答えた。


「は、敵のゲリラ攻撃にやられて、部隊はほぼ壊滅状態です」

「なるほど、ここは特に精強な部族の縄張りだったな」

「は、はい、それもいくつかの部族が連合しており、数も相当です」

「そうか、まあ正規部隊では、無理だろうな」


 そう言うとブレイドはブレイド隊の隊員たちを見た。


「お前ら、準備はできているか、行くぞっ!」


 そう言って、森の中に向かって歩き出した。

 スタークやベローチェらがブレイドの後に続いて歩き出し、集団の一番後ろからヘザーとクロキが着いていく。


「ブレイド隊長ぉ、良いんすよね、好きにやっちゃって」


 裾の長い緑色の上着を来た緑色のストレートロングヘアの男が腰にぶら下げた長い剣の柄をさすりながら笑いながら聞いた。

 ブレイドはチラリと横目で全身緑色の男を見て、口元に笑みを浮かべながら、


「ああ……」


 と言った。その直後、木の上から上半身裸で頬に黒い線をペイントした男がブレイドに向かって跳び掛かってきた。

 ブレイドは男を一瞥もせず。剣で斬り捨てた。


「全員、好きに戦れ」


 その言葉を合図に、ほぼ全員が走り出す。


「み、皆、げ、元気だな……」


 少し遅れて痩せぎすのファンザが歩いて後を追い、さらにその後からブレイドに促されてクロキとヘザーが続いた。


 ゲリラ攻撃を仕掛けてくる屈強な部族の男たちを、ブレイド隊の隊員たちはものともせずに倒していく。


「はっはぁ! 死ねぇ!」


 スタークは身体の周りに数個の氷の球を浮かべ、動き回りながら氷の球を自在に操作して部族の男たちを攻撃していく。

 と、スタークが囲まれ、さらに真上から奇襲されたが、奇襲して来た男の身体が内側から爆発するように破裂した。


「ちょっと、調子乗りすぎ」


 スタークのいる方向にベローチェが腕を伸ばしている。

 しかし、そのベローチェの背後に敵が迫る。


「おい、ベローチェ、後ろ――」


 スタークの声にベローチェが後ろを振り向くと、痩せぎすのファンザが蛇のように敵に巻き付き、敵を絞め殺していた。


「べ、ベローチェさんは、お、俺が守る」

「ふん、ありがと、助かったよ」


 ベローチェに礼を言われ、ファンザは嬉しそうにしていた。


「ははっ、皆、調子が良さそうだな。君らも頑張れよ」


 ブレイドは余裕の表情で迫りくる部族の男たちを真正面から斬り捨てていきながら、クロキとヘザーに向かって言った。


 クロキとヘザーは襲い掛かる敵を迎撃してはいたが、自分たちからは積極的には攻撃せず、クロキは気絶させるばかりで殺すことすらしていない。


「あのおじさん、あんなこと言ってるけど、行かなくて良いの?」


 ヘザーはクロキに聞いたが、クロキは淡々と襲い来る敵に対処するばかり。


「成り行きでここまで来たが、俺が彼らに危害を加える理由はない。まあ、振りかかる火の粉は払うがな……お前も――」


 殺すなよ、と言おうとしたが、ヘザーにそんなことを言う権限はないとクロキは思い、止めた。

 てっきりヘザーは揚々と戦闘に加わるものだと思ったが、ヘザーは笑みを浮かべながらクロキを見つめたまま動かない。


「せっかくクロキと一緒なんだから、私はクロキの傍にいるわ」


 そう言うヘザーの顔を見てクロキは呆れた顔でため息をついた。


 好戦的な女かと思ったが、ただ気紛れなだけで、ほかにやりたいことがあればそちらを優先する。

 何を考えているか分からない近寄りがたい女だと思っていたが、クロキはヘザーの御し方が分かったような気がした。


 敵の攻撃が止む。

 どうやら劣勢と見て敵は撤退したようだ。

 ブレイドは剣を納めて隊員を見回す。


「よし、じゃあ追いかけるぞ」


 ブレイド隊は敵の追撃を開始した。

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