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陽動と奇襲

 その後、ブレイド隊は部族連合軍を執拗に追撃し、ついに1つの村を占拠し、連合軍を構成する部族の1つを殲滅した。


 これにより連合軍は崩壊したが、このまますんなりとレムリア大陸を占領することはできない。

 なぜなら、レムリア大陸を侵略者から守るため、大陸の周辺国が大陸に軍を派遣しているからだ。

 ブレイド隊に下された次の命令は、残存部族の殲滅ではなく、それらの国の派遣軍との戦闘への参加。それも、戦線に加わるのではなく、拠点を奇襲し、派遣軍指揮官を殺害することであった。


「では、作戦を説明する」


 満点の星空の下、森の中のキャンプ地で、ブレイドは隊員を集め翌日の作戦の説明を開始した。


「明日も川を挟んで、我が軍と敵軍が戦闘を行う。その混乱に乗じて敵拠点に接近するが、その際、部隊を2つに分け、1つは正面から本隊とともに攻め、もう1つは南側から拠点の背後を突く」

「それでは、正面部隊は陽動ですな」


 隊員の中で最も年かさのいった老年の男が発言すると、ブレイドはうなずいた。


「そうだ、正面部隊はとにかく好きに暴れて構わない。激しければ激しいほど良い」

「じゃあ、俺が行きますよ」


 前身緑の男が手を挙げて名乗りを上げると、次々に血気盛んな隊員が名乗りを上げた。


「希望にはできる限り応えたいと思うが、部隊分けは俺が決める。以上だ、今日はこれで解散」


 ブレイドがそう言うと、隊員たちは思い思いに休息を取ろうとしたが、ブレイドが思い出したように隊員たちを呼び止めた。


「……ああ、そうだ、くれぐれも脱走など考えるなよ。分かっているとは思うが、脱走した奴は漏れなく殺すからな」


 笑みを浮かべてはいるが、本気の表情である。

 が、隊員は誰一人として委縮することなく、何事もなかったように再び思い思いに過ごし始めた。


「……と、いうことだ、お前らも脱走しようなんて思わない方が良いぜ」


 そう言いながら、キャンプの隅で休んでいたクロキとヘザーに、スタークが金髪をかき上げながら近寄って来た。

 クロキは見下ろすスタークを上目遣いで見上げて、少し間を置いてから答えた。


「……思ってないですよ」

「なら良い、明日も頑張ろうぜ」


 そう言って笑うスタークの後ろから、全身緑づくめの男と露出の多い小柄な女が近付いて来た。


「スターク、その二人といつの間に仲良くなったんだ?」

「良いなぁ、私も話したーい」

「うん? 勝手に話せば良いだろ」


 スタークが面倒くさそうに二人を見た。

 クロキは緑色の男と小柄な女に会釈をした。


「……どうも」

「俺は、緑を愛し、緑を愛する、緑の戦士、グリーンバックライトだ、よろしく頼むぜ」

「私はクッキーよん、お金さえ払ってくれれば何でもしてあげるわよ、何でもね」


 そう言って小柄な女――クッキーはウインクをした。

 クロキは再び会釈をした。


 それにしても傭兵――金で雇われた連中が集まっているだけあって、普通の軍隊では見かけないような個性的な人間が多い。

 緑色が好きでグリーンバックライトという名前とは、どれだけ緑を強調したいのだろうか。


「おい、ビッチ、邪魔」


 そう言ってクッキーを蹴ったのはベローチェであった。


「ちょっとぉ、痛いじゃない、この日照り女」

「あん? 私はあんたみたいに尻軽じゃないのよ、良い男を選んでんの」

「選んでいるって? ウケる~、選ばれていないだけでしょ、キャハハ」

「……あんた、戦場では後ろに気を付けることだね」

「はっ、それはこっちのセリフ」


 一触即発の二人を、スタークとグリーンバックライトが引き離し、それぞれ別の場所へと連れて行った。

 クロキはキャンプ地を見回し、黒づくめの仮面の人物を探したが、どこにいるのか、姿が見えない。

 日中の戦闘でも、他の隊員に見えない所で、手の内を明かさぬように戦っていた。


 クロキは騒がしいやり取りの中も眠りこくっていたヘザーを見た。

 ここまでヘザーと行動をともにしてきたが、今後どうなるのか。ヘザーが破壊の七徒である以上、また敵対することになる。それはいつなのか。もしかするとそれは、明日かも知れない。




 翌日、ブレイド隊は朝早くにキャンプ地を後にし、一旦本隊に合流すると、陽動部隊を残してブレイドを隊長とする奇襲部隊は本隊から離れ、敵拠点の南の森に移動した。

 後は、敵軍が前線に集中し、南側の防衛が薄くなるのを待って奇襲をかける。


 クロキはヘザーとともに奇襲部隊に回された。奇襲部隊には、ベローチェ、ファンザ、そして黒づくめの仮面の人物の姿もある。

 スターク、グリーンバックライト、クッキーは陽動部隊に配属され、陽動部隊の指揮は、部隊で最も年長の老年の男が取ることになっていた。


「そう言えば、ターゲットってどこの国?」


 ヘザーがクロキに聞いた。

 クロキは軽く頷いてから答えた。


「アーミル王国だ」




 午前10時頃、マフダリ王国軍とアーミル王国軍の戦闘が始まった。

 川に沿って平面に展開するアーミル王国軍に対し、マフダリ王国軍は錘状に陣形を組んで突撃する。

 アーミル王国軍は、一旦は押し込まれるものの、左右の部隊でマフダリ王国軍を挟み込みマフダリ王国軍の進撃を止めた。両軍の戦力はほぼ同数だが、部隊の精強さではアーミル王国が勝っており、このままアーミル王国軍がマフダリ王国軍を擦り潰すもの、と思われたが――


「はっはっは、暴れるぜぇっ!」

「これだけの人数を相手にすることなどなかなか無いからな、思う存分やらせてもらう」


 スタークやグリーンバックライトら、ブレイド隊が最前線に躍り出て、アーミル王国軍を蹴散らしていく。

 その勢いは凄まじく、マフダリ王国軍は再び勢いを増し、アーミル王国軍の奥深く、拠点が見える位置にまで迫った。

 当然アーミル王国軍は拠点の前方に戦力を集中させたため、拠点の左右――南北の戦力が薄くなった。


「そろそろ行くぞ」


 ブレイドの合図で奇襲部隊が移動を開始する。

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