第2387話 アイドル達も
宴会を楽しむ夕也達。
☆夕也視点☆
現在「皆の家」では、姫百合さんの歓迎会が行われている。
今月から晴れて、この屋敷の正式な住人となった姫百合さん。
仕事で全国を飛び回る事の多い芸能人ではあるが、比較的自由に休みを取ったりしているので、この屋敷で見かける頻度はそこそこあるだろう。
逆に、「皆の家」から一旦離れる子もいる。
「なあ渚ちゃん」
「はい? 何ですか今井先輩?」
「京都に帰るのはいつなんだ?」
「月曜日には帰ろ思うてます」
「じゃあ明日一日しか残ってないのか」
「なぬーっ!?」
「麻美にはもう話したやんか……」
「たしかにー」
渚ちゃんは、和菓子作りの修行の為に京都にある祖父牧場が経営する和菓子屋へ帰るのだ。
本人が納得するまでは修行を続けるのだとか。
「今井先輩、寂しいんやったらついて来はってもええですよ?」
「渚ちゃんっ!」
渚ちゃんの冗談に亜美が反応して怒っている。
渚ちゃん、そんな冗談も言うようになったんだな。
最近は俺に対してもたまにきつい事を言うようになり、だいぶお姉さんである弥生さんに似てきたと感じている。
「まあ、月一でこっちに来るならそこまで寂しくはないでしょ」
「私は寂しいぞー!」
「麻美ちゃんは渚ちゃんが大好きだもんねぇ」
「うむー!」
麻美ちゃんと渚ちゃんはお互い「親友」と呼べる程仲が良い。
高校一年の入学時に京都から千葉の月ノ木学園にやって来た渚ちゃんは、バレーボール部に入り麻美ちゃんや俺達と交流を持つようになった。
元々は高校三年間だけという約束だったそうだが、こちらの大学に通いたいと両親に話、大学を卒業後もこちらで麻美ちゃんと一緒に暮らしているのだが、月曜日には一旦千葉を離れる事になった。
麻美ちゃんは特に寂しいだろうな。
「離れんかい!」
「嫌だぞー!」
うむ。 仲良いな!
「和菓子修行、頑張って下さい!」
「応援してます!」
ブルーウイングスの子達も話を聞いて渚ちゃんを応援している。
良い子達だな。
「和菓子職人になられるんですね。 凄いなぁ、やりたい事があるって」
「っすねー」
と、羨んでいるのは紗希ちゃんの知り合いでVドルをやっている花風さんと祭火さんだ。
「2人もVドルって仕事をしてるじゃん」
「まあ、そうではあるんですが」
「Vドルって、いつまでも続くコンテンツかと言われるとわからないとこあるじゃないっすか」
「確かにそうだけどねぇ」
ここ最近、急激に増えて成長したコンテンツだ。
巷ではVドルやVストリーマーなんて呼ばれていて、動画配信サイトを利用して生配信や動画配信をしている人達の中でも、バーチャル体を画面に映してやっている人を指す。
実際の顔や身体を晒す事をなく、可愛い女の子やイケメン男子の絵や3Dモデルを利用するのだ。
「まあ、これだけ一大コンテンツにまで成長してしまえば、滅多な事では廃れないと思いますわよー」
「むしろ今は、そっちの方がテレビ業界を食ってる節があるわよね」
時代は変わってきているようだ。
確かに、テレビをあまり見なくなったという人も増えてきているしなぁ。
「とはいえ、先が見えないという怖さがあるのもわかりますね。 私も芸能人やってるので特に」
「うんうん」
リアルアイドルの姫百合さんやブルーウイングスも、同意出来る部分はあるようだ。
「なので、Vドルとはまた別のスキルといいますか、そういうのも考えておかないとなとは常々」
「ふ、風花ちゃん偉いっすね。 私、全然考えてなかったっす」
「ふむ。 確かにそういうのは大事ですわね」
「きゃはー。 さすが私の風花ちゃんね。 で、何か得意な事とかあるのん?」
紗希ちゃんが花風さんに訊くと、「そうですねー……」と、目を閉じて眉をしかめ考え込む。
「歌ーですかね。 やっぱり歌いたくてVドルになったとこあるんで」
「ならば! リアルアイドルの道もありますよ!」
「出たわよ。 姫百合さんの誰でもスカウト病」
「病気扱い……」
「わ、私なんかがリアルのアイドルになれるわけ」
「んんー。 歌は確かに上手いしビジュアルだってイケてると思うっすよ?」
と、祭火さんからの評価は高いらしい。
歌の方は聴いた事が無いから何も言えないが、ビジュアル面は確かに可愛い顔をしていると思う。
それだけでアイドルとして売れるのかは、俺は何も言えないのだが。
「ええ……」
「でも、今はVドルとしての活動が楽しくて仕方ないんですよね?」
姫百合さんが笑顔でそう訊くと、花風さんはきょとんとした顔を見せた後、「はい」と、小さく頷いた。
すぐにどうのこうのという話ではなく、将来的にどうかを考えている段階という事である。
ちなみに、花風さんは19歳で祭火さんは18歳らしい。
2人ともしっかり大学に通いながらVドル活動をしているらしく、偉いもんだなぁと感心させられてしまった。
◆◇◆◇◆◇
宴会も時間が経つといつも通りの感じになってしまう。
もはや最近ではお約束の、紗希ちゃんと麻美ちゃんの簀巻きが出来上がっている。
「きゃはー。 脱げないー」
「なははー。 何で私はいつもついでに巻かれるのかー」
奈々美曰く、「酔った麻美は何をしでかすかわからないから」だそうだ。
いきなり全裸になろうとする紗希ちゃんに比べれば、幾分はマシだろうと思うのだが。
そんな中、リアルアイドルとVドル2人は交流を深めていた。
「コ、コラボですか?」
「そうです! コラボ配信!」
「ひ、姫百合凛とコラボ配信……っすか?」
姫百合さんがまた凄い事を言っているようだ。
「生身の人とVドルがコラボとかって、前例あるの?」
亜美が首を小さく傾げて訊くと、花風さんが「一応無い事も無いですが」と、答える。
「あるんやな」
「はい。 生誕ライブとかの大きなイベントで、そのVドルさんに馴染みがあったりする人をゲストに呼んで一緒に歌ったりとかは」
「例えば、Vドルの子が○○ってアニメやゲームが好きで、その主題歌をライブで歌うってなった時に、その歌を歌った歌手にオファーしたりする事はあるっす」
「へぇ。 そんなこと出来るのね」
「はい。 生身の人の方はそのままカメラに映れば良いだけなので」
よくはわからないが、そういう前例があるらしい。
「まあ、こればかりはお互いの事務所に許可取らないとですね」
「そ、そうですね。 え? 本当にやるんですか?」
「そちらな良ければ是非!」
姫百合さんはやる気満々なようだ。
Vドル2人はというと、さすがにちょっと困っているが、可能ならばやってみたいとは思っているらしく、一旦会社に相談してみるとの事のようだ。
「きゃはー。 楽しみねー」
「紗希は芋虫みたいにクネクネしながら喋るのやめてくれないか……」
「だって、布団でグルグル巻きにされてるしー」
クネクネ……
これはこれで気持ち悪くて目のやり所に困るのだった。
アイドル達にも将来に対する不安はある。
「亜美だよ。 皆、色々悩みを持ってるもんだねぇ」
「私は充実してるよぅ」




