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第2386話 馬のお話

姫百合さんの歓迎会中の皆。

 ☆奈央視点☆


 今日は姫百合さんの歓迎会という事で、これまた凄い人数が集まっている「皆の家」。

 紗希の知り合いのVドルである、花風風花さんと祭火つづみさんも遊びにやって来て、過去一賑やかになっているわ。

 実は渚の送別会も兼ねようとしていたけど、たまに帰ってきたりするからしなくていいと本人に言われてしまったわ。


「なあ西條よ」

「何ですの佐々木君や?」

「明日は競馬なんじゃないのか?」

「あら、良くご存知ですわね」

「西條さんのお馬さんが走るんですか?」


 最近、馬主に興味を持ち馬主登録申請中の姫百合さんが、興味津々に聞いて来たわ。


「亜美ちゃん」

「うむだよ。 明日はクラシック競走の初戦、G I桜花賞なんだよ。 我らがサイジョーレディーが桜の女王を目指して出走予定なんだよ。 更に! 来週は春のクラシック第2弾、G I皐月賞に我らがサイジョーゴールドが挑戦だよ」

「凄いですね! 馬主デビュー2年目でもうそんなレースに出られるお馬さんがいるなんて」

「おほほほ! 私にかかればこのくらい余裕ですわよー」

「お馬さんを選んだのは麻美ちゃんだよ」

「なはは!」

「という事で、明日は私と亜美ちゃんは現地に応援に行きますので、1日居ませんわ」

「現地ってどこなんですか?」


 競馬には詳しくない皆。

 何処でどんなレースが行われるのかなんていうのも当然わからないだろう。


「桜花賞は阪神競馬場。 関西だよ」

「そ、そんな所まで見に行くんですか?」

「小さなレースぐらいではさすがに遠征まではしませんわよ。 だけどG Iともなれば話は別」

「あのー……その『じーわん」っていうのがそもそもわからないんですけど」


 と、ブルーウイングスの朱理ちゃんが手を挙げた。

 ふむ。


「亜美ちゃんっ!」

「うむだよ!」


 説明は全部秘書の亜美ちゃんに丸投げですわよ。

 亜美ちゃんももうわかっているのか何も言ってこないわ。


「G Iというのは『グレードワン』の略なんだよ。 グレードとは、レースの格式を表していて、III、II、Iがあって数字が小さい方が格が高いんだよ。 つまり、G Iは競馬において最高クラスのレースという事だね」

「おお! つまり、西條さんの馬は凄いって事ですね!」


 朱理ちゃんは目を輝かせているわ。


「おーほほほ」

「相変わらず似合わないわね、高笑い」


 紗希にジト目で言われるのだった。



 ◆◇◆◇◆◇



 夕方になると、姫百合さんの歓迎会の準備で屋敷内は慌ただしくなる。

 リビングの飾り付け等の内装は人数がいるので大丈夫だろう。

 しかし、キッチンの方は中々に地獄ですわよー。


「忙しい忙しいだよ!」

「忙しい忙しいですわよー!」

「きゃはは。 そこ空けてちょ」


 とにかく量が多い。

 パーティー料理を人数分となると、とんでもない量を作らないといけないわよー。


「いつに無く地獄絵図ですね」

「何でマリアはそんなにゆったりマイペースなの?!」

「慌てても仕方ないですから」

「いやいや、慌ててちょ!」


 マリアはいついかなる時も自分のペースを崩さない。

 周りがどれだけ慌ててようが、のほほんとしているわ。


「はい! 唐揚げ完成だよ! 次はポテトサラダ作るよ!」

「私はハムエッグ作るわよーん」

「エビチリは任せてちょうだいなー」


 手分けして色々な料理を順番に完成させていくのであった。



 ◆◇◆◇◆◇



 何とか準備を終えて、歓迎会に漕ぎ着けた私達。

 テーブルには所狭しとパーティー料理やジュースにお酒が並んでいる。


「では! 始めますわよ! 姫百合さんの『皆の家』への引っ越しを祝して! 乾杯ー!」

「乾杯ー!」

「奈央ちゃんは明日朝から関西の方に行くんだから、あまり飲んじゃダメだよ」

「わかってますわよー」


 秘書の亜美ちゃんにも釘を刺されたので、今日はジュースで我慢する。


「んぐんぐ」

「ちょっと遥ー。 いきなり簀巻きにしなくても良いじゃんー! 食べられないし飲めないじゃーん!」


 遥は、紗希が酔っ払う前に身動きを封じようとするも、それはさすがに紗希が可哀想だという事で諦めるようだ。

 その隙に紗希はお酒をグビグビ飲んでいる。

 これは時間の問題ね。


「なはは! ぷはーっ!」

「だはは! 麻美っちええ飲みっぷりやな! ぷはーっ!」

「麻美は程々にしときなさいよ」

「わかってるー! んぐんぐ!」

「わかってないじゃない」


 他の皆も思い思いに飲み、食べては談笑している。

 この緩い感じがここの宴会の良いとこよね。


「亜美ちゃん。 明日のレースの前日オッズはどうなってますの?」

「サイジョーレディーは1.7倍で圧倒的一番人気だよ」

「さすがですわね」

「実績が段違いだよ」


 デビューから今のところまだ無敗。

 主な勝ちレースがG IホープフルステークスとG IIIチューリップ賞。

 人気になるのも当然ね。


「明日勝てば牝馬クラシック一冠目。 楽しみだねぇ」


 我がサイジョーレディーならば、きっと勝ってくれますわ。


「あのー、西條さん。 お願いがあるんですが」

「はい?」


 私と亜美ちゃんがレディーの話をしていると、姫百合さんがこちらの話に入ってきた。


「今度、知り合いの牧場へデビュー前のお馬さんを貰いにいくのですが、どんな子が良いのかわからなくてですね。 是非一緒に見に行ってほしいんだけど」

「なら、麻美ちゃんを連れて行った方が良いよ。 レディーとゴールド君を見つけたのは麻美ちゃんだからねぇ」

「ですわね」

「なはは! 匂いでわかるー!」

「に、匂いですか? よくわからないですが、お願いしても?」

「任せたまへー!」


 ふむ。

 私も今度セリへ出かける時は麻美を連れて行きますかね。


「あのー、馬ってそんな安く買ったり出来るんですか?」

「お、風花ちゃんも興味がおありで?」

「あ、いえいえ! 純粋な疑問と言いますか」

「亜美ちゃんっ!」

「うむだよっ!」


 とりあえず亜美ちゃんに丸投げよ。


「まあ、仔馬の取引き額と言ってもピンキリなんだよね。 で、その額を決める上で最も重要なのは血統。 良い血統な程高額になりやすいよ。 安い子は数百万とかで取引きされたりするけど、高額な子は数億にもなるよ」

「数億?! あわわわ……」

「せ、世界が違うっす」

「姫百合先輩はそんなの買えるの?」

「まあ、数億は無理でも数千万ぐらいなら」

「ひぇ」


 さすがに一般人には手の出せない世界ですわね。

 ちなみに、血統が良くて高額ならば勝てる馬なのか、と言うとそうでもない。

 そこが面白いところですわね。

 一般家庭育ちの亜美ちゃんが、一流家庭育ちの私並に優秀なのと同じですわ。


「というか、知らないうちに俺の嫁が競馬博士になってるのは何なんだ……」

「奈央ちゃんの所為だよ。 うむだよ」


 私としては優秀な秘書で助かっているわよー。


 宴会はまだまだ続くわよー。

馬主西條奈央は基本的に秘書任せ?


「遥だ。 亜美ちゃん大変だな」

「慣れてきたよ」

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