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第2384話 アイドル姫百合凛

姫百合凛のライブを楽しむ亜美達。

 ☆亜美視点☆


 今日は姫百合さんの武道館ライブに招待され、宏ちゃん、奈央ちゃん、弥生ちゃんと共に特等席に座っている。

 あー、周りはスタンディングオベーション状態なんだけどねぇ。

 私と奈央ちゃんはこの生ライブ特有のファンのテンションには中々ついていけず、静かにペンライトを振るに留まっている。

 勿論、ライブそのものはちゃんと楽しめているので大丈夫だ。


「ゆーりりん! ゆーりりん!」


 現在姫百合さんが歌っている「めるてぃーきっす」は、可愛らしい歌詞とアップテンポな曲調の人気ソングだ。

 女子高生や小さな子供達に特に人気である。


「めるてぃーきーっすー♪」

「きっすー!」


 所謂合いの手というやつなのだろう。

 姫百合さんの息継ぎの合間なんかにすかさず入れているファンの皆さん。

 宏ちゃんと弥生ちゃんも、漏れなく参加している。

 しかし、この一糸乱れる事の無い周りのファン達の動き。

 まるで訓練された軍隊のようである。


 ステージでは「めるてぃーきっす」が終わり、間髪入れずに次の曲のイントロが入る。

 次の曲は大ヒット映画となった、麻美ちゃん原作の「時を越えて」のオープニングテーマとなった「タイムリーパー」だ。

 こちらもアップテンポな曲調になっており、会場の熱気を高めている。

 曲が変わっても、ファン達の動きはやはり完璧。

 何処かで集まって練習でもしたのではないだろうか?



 ◆◇◆◇◆◇



「はぁ……はぁ……いやいや! アップテンポの曲を連発すると、さすがに息が上がりますねー!」


 姫百合さんの合間のトークタイムに入る。


「実はですねー、今私は馬主について勉強中なんですよ」


 ざわざわ……


 アイドルからいきなり「馬主」という、似つかわしくない言葉が飛び出し、会場内が一瞬ざわつく。


「あ、あれ? 何だか静かに? あのですね、私は馬主になりたいなぁと兼ねてより思っていましてですねー。 その為に色々と勉強中なんですよ」


 会場内のざわめきが落ち着き、姫百合さんの話に耳を傾けるファン達。

 な、何というか、こういう時はまで統率が取れるんだね。


「知り合いに馬主の方がいらっしゃるので、今度詳しく話を聞かせてもらうつもりです。 いずれは『ユリリン』の名前が付いたお馬さんがレースに出るかもしれないので、その時は応援の程をよろしくお願いします」

「うおおおー!」

「任せろー!」


 どんな話でも盛り上がってしまうらしい。

 恐るべしゆりりん親衛隊だよ。


「馬主の知り合いって西條の事だろ? そんな話してるのか?」

「えぇ。 たまに電話とかで」

「本気で馬主になるつもりみたいだよ」

「まあ、芸能人でも馬主やってる人は結構いるからな」

「4月には馬主登録申請を出して、今年はセリとかに参加して来年ぐらいからレースに参加出来るようにしたいって言ってるよ」

「割と本格的にやるんやな……」

「さて、では次の曲いきます! 皆さんお待ちかねの『Blue Sky』!」

「うおお!」


 一際大きな歓声が上がる。

 姫百合凛といえば「Blue Sky」と言われるぐらいには人気の曲である。

 姫百合凛の代表曲であり、彼女がトップアイドルに登り詰める立役者にもなったよ。

 私や奈々ちゃんも大好きな曲で、カラオケに行けば必ず歌うよ。

 私と奈央ちゃんも、生ライブのノリというものに慣れてきて、少し他のファンさん達の動きに合わせて動くようになっていた。

 なるほど、こうやって応援していると、会場全体の一体感が伝わってくるきて楽しくなってくるねぇ。

 宏ちゃんや弥生ちゃんが生ライブに拘る理由が、ようやくわかったような気がするよ。



 ◆◇◆◇◆◇



 その後も合間にトークを交えつつ、計12曲を歌った姫百合さん。

 最後の曲が終わり、本日のライブが終了した後も会場内のファン達は、その余韻に浸っていた。


「いや、今回のライブも最高やったな……」

「だな。 2時間半があっと言う間だったぜ」

「だねぇ」

「さすが、日本のトップアイドルと言われるだけはありますわね。 いくら私でも、これだけのファンをここまで満足させる催しは開けませんわよ」


 天下の西條奈央も、今日の姫百合凛には敵わないと認めざるを得ないようだ。

 ファン達は、それぞれが集まってこの後は何処かの飲食店なんかで、感想会をしたりするのだろう。

 私達はというと……。


「それでは、姫百合さんを労いに行きますわよ」

「やな」


 この後、ライブを終えたばかりの姫百合さんの控え室へ行き、姫百合さんと共に「皆の家」に戻る事になっている。


「今は着替え中みたいだから、宏ちゃんは外で待機ね」

「あいよ」


 男子の宏ちゃんは一旦外で待ってもらい、女子だけで中に入る。


「姫百合さん、お疲れ様だよ」

「お疲れ様でしたわね」

「最高やったで」

「ありがとうございます! すぐに着替えちゃいますね」

「慌てなくて良いよ」

「佐々木君が外で待ってるんじゃ?」

「あんなのは待たせておいても良いんですのよ」

「おーい! 聞こえてるぞー!」

「だはは」


 姫百合さんは「あはは」と、笑いながらドレスから普段着に着替えていく。

 一応、車までは距離もあるので目深に帽子を被り、変装を施している。


「大変だねぇ」

「出待ちする人も多いので、裏から出るしかないのです」

「大人しいファンばかりやないっちゅうことやな」

「まあ、あれだけ居れば厄介なファンも少なからずはいるだろうよ」

「なるほどねぇ」

「西條グループの力で始末してさしあげるわよ?」

「始末はしないで下さいね? 私のファンは比較的大人強い方ですから」

「仕方ないですわね」


 何とかファンから隠れつつ、車の場所までやって来た私達。

 マネージャーさんが待機しており、「凛さんの事、よろしくお願いします」と、頭を下げてから自分の車で帰宅していった。


「何だかもう、姫百合さんの自由奔放なのを諦めてるよねぇ」

「あはは……苦労かけちゃってるなぁ」

「わかってるなら、もうちょっと安心させてやれなよなぁ」

「だはは。 確かそやな」

「善処してみます」

「さ、行きますわよ」

「だねぇ」

「はい。 帰りましょう。 『皆の家』に」


 数日後には本当に「皆の家」の住人になる姫百合さん。

 明日には実家に帰り、4月に入ったら千葉へやって来て「皆の家」で暮らす事になるらしい。


「楽しみです、引っ越し!」

「だねぇ」

「あー、ウチも『皆の家』に引っ越したらゆりりんと暮らせるのにな」

「良いじゃない。 キャミィさんと一緒に引っ越してこれば」

「そないぽんぽん引っ越せるかいな……。 まあ、遊びに来たら会えるんやし気にせぇへんよ」

「毎日会えるとのアイドル感薄れちまうぞ」

「それは困りますね!」

「だはは!」


 来月からはまた賑やかになりそうだゆ。

 姫百合さんはお仕事で全国飛び回るから、居ない事も多いだろう、

 でも、いつ帰ってきても疲れが癒せるようにしておかないとねぇ。

アイドル姫百合凛もライブが終わると亜美達の仲間の姫百合凛に。


「奈央ですわよ。 アイドルも人間ですもの」

「私も人間だよ!」

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