第2364話 見学
今日はスパへ職場見学へ行く予定の奈々美。
☆奈々美視点☆
3月12日の土曜日よ。
今日は奈央に連れられて西條グループのスパのチェーン店である「サイジョースパガーデン」に出かける予定よ。
でも今日はスパを楽しむのが目的ではなく、私の職場見学が目的よ。
まだ本決まりではないけど、将来はスパの経営をしようかと考えている。
ブロロロ……
「で、何であんたはついてくるわけ?」
「なはは。 見学を見学ー」
「遊びに行くんじゃないのよ?」
「わかってるー」
何故か知らないけど麻美も見学について来るわ。
というか、こういう時毎回ついて行くわよねこの子。
「まあ、良いじゃないですの。 もしかしたら姉妹で経営なんて展開にもなるかもしれないし」
「なはは。 小説家やりながら温泉施設の経営かー」
「出来なくはないねぇ」
「麻美に経営者なんて出来んの?」
「知らなーい」
要領は良い子だけど、経営者なんてやった事のないものがいきなり出来るわけはないか。
私もやるってなったら何もわからない、全くのゼロからのスタートになるし。
「色々な話を聞いてどうするか考えてねぇ。 もうすぐ着くよ」
「えぇ」
◆◇◆◇◆◇
サイジョースパガーデンに到着した私達は、早速この店舗の店長さんと顔を合わせる。
歳は30前半くらいの女性だわ。
結構若いけど、店長を任されてるって事は優秀なんでしょうね。
「こんにちは。 奈々ちゃん、こちらはこのサイジョースパガーデン☆☆支店長の木村さんだよ」
「木村ですよ。 今日はよろしくお願いします」
「佐々木です。 こちらこそよろしくお願いします」
ぺこりと頭を下げて挨拶を交わす。
「今日は職場見学という事ですが」
「今回彼女に見てもらいたいのは、経営者業務の方ですわ」
「なるほど。 従業員ではなく経営側なんですね。 承知しました。 ではまず会議室へ」
会議室なんてのもあるのね。
まあ、それぐらいはあるか。
木村さんの案内で、スタッフオンリーのフロアにある会議室へとやって来た私達。
店自体は既に開店しており、ほとんどの従業員は持ち場に出ているようね。
「席にお着きください」
「はい」
促されるままに席に着く。
すると、木村さんはすぐにパソコンを立ち上げプロジェクターの画面をスクリーンに映し出す。
「こちらのスクリーンに表示されているのは、現在この店舗で稼働中のサービス一覧や、従業員数、客層のデータ等です」
「おー。 凄いー」
「結構従業員の方が多いですね?」
「広い店舗なのでどうしても人数が必要になるんですよ」
「温泉施設の経営をするに辺り大事なのは、従業員の管理、設備の管理、メンテナンス、安全衛生、サービスの品質、顧客導線等ですね」
「結構管理項目があるんだねぇ」
「それぞれに担当部署を設置しております。 例えば設備管理・メンテナンスには設備技術部門と言った具合ですね」
「だから従業員が多いのかー」
「はい。 それらを一括管理するのが、経営者である私の業務になりますね」
「た、大変そうね」
「慣れてくればそうでもありませんよ。 大体の仕事は担当部署の従業員に任せられますから。 こちらは下からの報告を受け、各部署に連絡指示を回したり、コンサルタントとの会議でサービスの方針を決めたりするぐらいです。 まあ、色々と見る所は多いのですが」
「ふうむ」
従業員と言っても、私達が目にしているフロアのスタッフ以外にも他の仕事をしている人が沢山いるのね。
それらをまとめて管理する能力が求められるわけか。
「コンサルタントっていうのは、各店舗毎についている感じですかー?」
と、麻美が割と前向きな質問を投げている。
何か、私よりやる気あるんじゃないの?
「オーナー、その辺りはどうなっているのか私も詳しくは知らないのですが」
「亜美ちゃん」
「はいはい。 サイジョースパガーデンは基本的に各店舗毎にコンサルタントさんを雇っているよ。 というのも、店舗の立地によっては客層も細々と変わり、必要とされるサービスもそれによって臨機応変にいかなければならないからね」
「とのことです」
「なるほどー」
「例えばこの店舗の客層データと、それに対応したサービスの一覧をご覧いたします」
資料のページを送り、色々なデータをグラフ化したものが表示されている。
「沢山ありますわねー」
「はい。 まずこちらが年齢別のグラフ、こちらが性別毎のグラフ、更にこちらは季節毎や曜日毎といった風になっております。 このデータを元に、コンサルタントさんと協議して課題を解決し、サービス向上を図っております」
「なるほどなるほど」
「な、何だかやっぱり大変そうね」
「まあ、さすがに知識の無い方から見ればそう思われるでしょうね。 ですが、最初に申し上げた通り慣れてしまえばそこまでではないですよ」
「慣れてしまえば……か」
「はい。 では実際に各部署がどのような業務を行なっているか見てまいりましょう」
「お願いします」
「なははー」
会議室から出て木村さんの後について行くわ。
まずは設備技術部からね。
◆◇◆◇◆◇
「こちら設備技術部です」
「結構な人数が居るわね」
「はい。 こちらでは日々、設備の状態を点検しております。 問題が見つかればすぐ私に報告が入り、各部署へ連絡を回し、お客様達への放送を行なってから該当設備の停止指示、修理指示出します」
「ふむふむ。 内作で直せない場合はやはりメーカー修理を依頼する感じかな?」
「そうなりますね」
な、何だか難しい話してる?
「次は安全衛生管理部に行きます」
「はーい」
◆◇◆◇◆◇
「こちらでは、各種サービスにおいて危険箇所が無いかや泉質などをチェックしています。 また、体調を崩されたお客様の対応等もこちらで行っておりますね」
「これ全部監視カメラ映像ですか?」
「はい。 かなり多いですね」
「大変そー」
「そうね」
私達がスパでゆっくり楽しんでる間、従業員の人達って裏でこんなに大変な仕事をしてたのね。
◆◇◆◇◆◇
その後も各部署を周り簡単な業務の説明を受けた後、会議室に戻って来た私は各種資料を受け取った。
温泉施設の経営をするにあたっての基礎知識やらなんかをまとめた簡易マニュアルらしい。
今後、私がこの道を進むなら必要な物という事なので、ありがたく受け取ったわ。
◆◇◆◇◆◇
ブロロロ……
「どうだった奈々美? 少しは将来を考える材料にはなったかしら?」
「そうね。 難しい事ばかりだったけど、為にはなったわ」
「まあ、まだ焦るような時じゃないよ。 ゆっくり考えて決断すると良いよ。 どうせ、まだ新店舗が建つ話も無いしね」
「わかったわ。 もうちょっとゆっくり考えてみる」
中々に大変そうなスパ施設の経営。
今日話を聞いただけだと、私に出来るか自信は無いけど……。
まだ時間はあるしゆっくり考えて結論を出すことにするわ。
色々と大変そうではあるが、手応えはあり?
「奈々美よ。 勉強になったわね」
「後は奈々ちゃん次第だよ」




