第2359話 フルーツパフェ
東京に帰る前に、Vドル2人を緑風に案内する亜美。
☆亜美視点☆
3月4日の金曜日だよ。
2日から「皆の家」に遊びに来ていたVドルの、花風風花さんと祭火つづみさんが東京に帰るとのことなので、その前に是非とも緑風のパフェを味わってもらいたく、2人を緑風に案内するよ。
「きゃはは」
風花ちゃんのキャラクターデザインを手掛け紗希ちゃんも、当然一緒である。
「紗希ママも良く行くの? その緑風っていう喫茶店」
「私はたまにかしらね」
「私は週4回ぐらいは行くよ」
「えぇ……」
「ほぼ毎日じゃないっすか?」
「週4回だからそこまでじゃないよ」
「普通の人は週に4回も喫茶店に行かないのでは……?」
「行くんだよ」
私は緑風のフルーツパフェを食べる為ならば、週7日だって行けるよ。
歩く事10分程で目的地の喫茶店に到着だよ。
「ここが私が通ってる喫茶店『緑風』だよ」
「ここがそうなんですね」
「レトロな雰囲気で、凄く良い店っすね」
「そうなんだよ」
「古いだけって話もあるわよん」
「レトロな雰囲気なんだよ」
さて、では早速入店だよ。
中には今日バイトが入っている夕ちゃん、奈々ちゃん、麻美ちゃんもいるはずだ。
カランカラン……
「いらっしゃいませ! って、まあパフェの人か」
「こんにちは名塚さん」
今フロアに出ているのは名塚さんのようだ。
他メンバーは別の持ち場で仕事中だろうか?
「きゃはは」
「パフェの人?」
「何っすかそれ?」
「んん? 誰さねこの2人は?」
風花さんとつづみさんを見た名塚さんは、首を傾げながら「はてはて?」とか言っている。
「この2人はまあ、私のビジネスパートナー的な人達よ」
「神崎さんのクライアントさんって事?」
「まあそんな感じ」
あまり2人の素性を周りに言いふらすのもよろしくないだろうという事で、少しばかり配慮した紹介になったよ。
「なるほどなるほど。 あ、適当な席に座ってくださいな」
「うむだよ」
4人席に座り、早速注文するよ。
「3人は何にする?」
「きゃはは。 私はレモンティーとパンケーキを」
「えっと私は、清水さんがオススメするフルーツパフェを」
「私もっす」
「ほいほい。 レモンティー1、パンケーキ1、フルーツパフェ3さね」
「あ、あれ? 清水さんには注文聞かないんですか?」
「え? フルーツパフェ以外頼まないから最近は聞いてないけど?」
「うむだよ」
「え、えぇ……」
「パフェの人って呼ばれてるだけあるっすね」
「えっへんだよ」
ちょっと偉そうにしてみたり。
「じゃあ、少々お待ちくださいな」
注文を聞き終えた名塚さんが、カウンターの奥へと消えていく。
「それにしてもお客さん、私達以外居ないですけど大丈夫なんですか?」
心配そうな顔をしながら、周りをぐるりと見渡す風花さん。
どれだけ見渡しても、現在このお店に居るお客さんは私達4人だけである。
「大丈夫だよ。 今はちょうど人が少ない時間なんだよ。 放課後とかになると、近くにある学校の学生さん達が来て賑やかになるよ」
「なはは! その時間帯は忙しくて大変ー」
「うわっ?!」
「びっくりしたっす!?」
いつ間にやら私達の近くに来ていた麻美ちゃんが「なはは! 気配隠し成功ー」と、笑いながら言っている。
やるね、麻美ちゃん。
「本当にここでアルバイトしてるんですね」
「うむー。 お姉ちゃんと夕也兄ぃも居るー」
「奈々ちゃん達は?」
「お姉ちゃんは奥でパンケーキ焼いてるー。 夕也兄ぃはグラス拭いてたー」
「麻美は何してるわけ?」
「休憩ー」
という事らしい。
最近はバイトの子も増えているらしいけど、皆月学生らしいのでこの時間にシフトに入っている事はない。
しばらく待っていると、奈々ちゃんが両手にパフェやらパンケーキを乗せたお盆を持ってこちらへやって来た。
「お待たせ致しました。 こちらご注文の品です。 ごゆっくりどうぞ」
「うむだよ」
「きゃはは」
「マニュアル通りっ感じですね」
「これがこの店のフルーツパフェっすか」
「いただきますだよ! んむんむ……んー、美味しいねぇ!」
テンションも上がるというものだよ。
「ん。 確かに美味しいですね!」
「本当っす!」
「むふふ。 緑風のフルーツパフェは世界一なんだよ。 私の中ではだけどね」
もちろん他人にその感性を押し付けたりするつもりは無いので、これはあくまでも私の中ではという話である。
「でも、実際今まで食べたパフェより美味しいですよ」
「うんうん」
Vドルの2人も緑風のフルーツパフェの味には感動している様子。
また新たな緑風パフェのファンを生み出してしまったよ。
「んぐ。 きゃはは」
スプーンが止まらないのである。
「んむんむ。 んむ? あ、三浦さんこんにちはだよ」
「亜美さんこんにちは。 あれ? 今日は美夕ちゃんは?」
「んむんむ。 今日は『皆の家』にいるよ」
「そっかー。 残念……それでこのお2人が神崎さんのビジネスパートナーさんですね」
「こんにちは」
「初めまして」
「……ん?」
2人の声を聞いた三浦さんは、少し首を傾げて目を瞑りながら何かを考えているような仕草を見せる。
「あの、すいません。 『こん風花ー』って言ってもらっても?」
「んぐっ?!」
「おりょ」
「むむ、だよ」
風花さんは「声はある程度変えてるつもりなんだけどなぁ」と、観念したように言うと。
「こん風花ー! 風の妖精、花風風花だよー!」
「おお! やはり! 昨日オフコラボしてらっしゃるのは見てて知ってたんですが、まさかまさか会えるとはです!」
「三浦さん。 Vドルとかわかるの?」
「スターガールズの子達の配信はよく見てるので。 という事はこちらが祭火つづみちゃん?」
「どもっす」
「おお」
つづみさんは普段の声色と、配信する時の声色をかなり変えているみたいで、普通にしていてもまずバレないらしい。
風花さんも多少変えてはいるみたいだけど、聞く人によるがたまにバレるとの事。
「こちら三浦蛍さん。 緑風のアルバイトさんだけど、夏からは新開店するサイジョーカフェ☆☆支店の店長さんになる人だよ。 ゴールデンウィークの展示会にもついて来るよ」
「す、凄い人だ……」
「いえいえ、私なんてそんな」
「三浦さん。 この2人と、サイジョーカフェに詳しいお仲間さんも展示会に同行してくれるよ」
「おお! その時はまたよろしくお願いします! スタガでサイジョーカフェに詳しいとなると、鳥野さえずりさんですかね?」
「正解っす。 本当に見てる人っすね」
さえずりさんというVドルもいるようだ。
界隈にはあまり詳しくないし、この機会にちょっと勉強しておくのも良さげだねぇ。
こうして新たな交流も増えて、仲間がまた増えた私達。
そろそろ『西條ファミリー』とか名乗っても良さそうな気もする。
緑風を後にした私達はVドルの2人を駅まで送り、ゴールデンウィークの再開を約束し別れるのであった。
彼女達2人のVドルの活躍を祈っているよ。
Vドル2人もこの街が気に入った様子。
「奈央ですわよ。 またいつでも遊びに来ると良いですわよ」
「だよ」




