第2315話 復帰
緑風からの帰り道にふとした会話をする夕也と奈々美。
☆夕也視点☆
緑風で休憩を終えてようやく帰路に着く俺と奈々美。
今日の奈々美はやけに俺に絡んでくるな。
「ねぇ。 さっきの話どうする?」
「さっきの話?」
一体何の話の事だ?
まさか「入れ替え婚」の話じゃないだろうな?!
「バ、バカかお前? 本気で言ってんのかお前?!」
「バカって言われるような事でも無いでしょ」
「いやいやいや。 有り得ないだろいくら何でも。 お互い子供も居るんだぞ?」
「別にそれはどうにでもなるくない? 私はあんたさえ良ければ良いんだけど?」
「ダメに決まってるだろ……」
「そうなの? ふうむ。 割と時間あるし、私はあり寄りだったんだけど、緑風のバイト復帰」
「……バイトの復帰?」
「そうよ? さっき名塚さん達に言われたじゃない」
何だ……さっきの話ってそっちの事かよ。
紛らわしい話の入り方しやがって……。
「まあ、夕也が復帰しないってなら私もやめとこうかしら」
「何で俺に合わせるんだよ?」
「ん? あんたと一緒の方が気が楽なのよ、何事も」
「わけわからんな」
「自然体で居られるっての? まあ、宏太や亜美達と一緒に居てもそうなんだけどさ」
「ふうむ」
まあ、幼馴染連中と居る時は確かに気楽ではあるが。
奈々美はコミュ力もあるし、別に俺が居なくても何処でも上手くやれるだろうに。
「まあ確かに、チームの練習が無いオフシーズンとかは時間もあるしな……ありっちゃありかもしれん」
「さっき、あんだけ反対してたくせにどうしたのよ?」
「い、いや、まあちょっと考えを改めただけだ」
話題の内容を勘違いしていたとか言えねぇな。
「亜美にでも相談してみるか……家事の分担もあるからな」
「そうね。 私も宏太に話してみるわ。 麻美や渚にも美夜の事見てもらわないといけないかもしれないし相談しないと」
まあ、亜美はダメだとは言わないだろうが。
◆◇◆◇◆◇
という事で、家に帰って来たわけだが。
「長い買い出しだったね」
「ああ、家を出たところで奈々美に遭遇してな。 あいつも買い出しだからって一緒に行ったんだ」
「奈々ちゃんも一緒だったんだね」
「おう。 早く帰って来るつもりだったんだが、奈々美夕の奴が『緑風に寄ろう』って言って俺を引っ張って行きやがってな」
「あはは。 奈々ちゃんらしいねぇ」
「んでよ。 緑風で名塚さん達が『バイト復帰歓迎』って言い出してよ」
「夕ちゃんと奈々ちゃんが復帰って事?」
「ああ、奈々美も俺も家事以外は時間あるし、復帰もありだなとは思ってるんだが。 一応亜美に相談してから決めようと……」
「うん。 良いと思うよ? まあ、うちの家系的にはそんな必要も無いっちゃ無いんだけどね。 夕ちゃんのやりたいようにやると良いよ」
「そうか。 ちょっと考えてみる」
◆◇◆◇◆◇
夕飯の時間になると、隣の佐々木夫妻と向かいの麻美ちゃん、渚ちゃんが我が家に集結する。
「今井家は餃子にワンタンスープに棒棒鶏かー!」
「うん」
「うちはロールキャベツよ」
「なはは。 うちは唐揚げー」
それぞれの家で夕飯を作って持ち寄るのがルールとなっている。
ちなみに何故我が家に集まるのかはわからない。
昔から集まる時は何故か今井家という暗黙のルールが出来上がっているのである。
「んむ……そうだわ。 夕也、亜美には例の話したの?」
「んん? ああ、好きにして良いってよ」
「んむんむ。 家事の分担はしっかりやってもらうよ」
「わかってるよ……」
「はぅ? 何の話してる?」
「緑風のバイトに復帰するんだとよ」
宏太の言葉を聞いた希望は「はぅ! 私もしたい!」と手を挙げたのだが、亜美から「希望ちゃんは幼稚園の先生のお仕事あるでしょ」と言われてしゅんっとなっていた。
「ちなみに私も復帰しよーとしたらお姉ちゃんから、『誰が美夜の面倒見るのよ』って怒られたー!」
「な、奈々ちゃんそれはさすがに理不尽だよ……美夜ちゃんなら私が面倒見てあげるから」
「さすがは亜美姉ー!」
「あんた、バレーボールの他に小説家もやってるじゃない」
「書いてない期間も時間あるぞー」
「まあ、良いじゃないか。 名塚先輩達も人数増えたら喜ぶだろ」
「はあ、好きにしなさい」
「やったー!」
「家事もちゃんとやってもらうで?」
「わ、わかってるー」
というわけで、俺と奈々美に加えて麻美ちゃんも緑風のバイトに復帰する事となった。
◆◇◆◇◆◇
「おっかえりー!」
「いやー、本当に復帰してくれるとは思いませんでした」
「まあ、時間はあるし。 ただ、バレーボールのシーズン始まるとちょっと忙しいから、その時期はシフト減らすけど」
「俺もだな」
「そりゃ仕方ないかー」
「なはは」
「麻美ちゃんまで戻ってくるとはですね」
「明るくなりますな。 他のバイトさんにも挨拶お願いね」
「はい」
ちなみに今日は復帰の挨拶だけして終わりの予定だ。
店長も「今更面接もいらない」とか言って即採用されてしまった。
今月残りのシフト表だけサクッと記入して、今日のところは帰る事にする。
「ふむ。 何か大学生の頃を思い出すな」
「そうね」
「なはは」
「奈々美は明日からシフト入れてんのか?」
「ええ。 早めに勘を取り戻しときたいから」
「まあ、俺もそうなんだが」
「右に同じくー」
という事は明日はこの3人でシフトか……。
名塚先輩と三浦さんは当たり前のように毎日いるし、明日は賑やかになりそうだ。
◆◇◆◇◆◇
今日はそのまま「皆の家」へと向かう俺達。
亜美も渚ちゃんも家事を終えて、既にそちらへ行っていると連絡が入ったからだ。
「実は亜美1人でも余裕で家事回るんじゃないのか?」
「回るでしょうね。 あの子の家事スキルってば異常に高いから」
「何をやらせても迅速丁寧完璧ー」
「どうなってるんだよ俺の嫁……」
ガキの頃からずっと一緒にいるが、本当にとんでもないスペックの持ち主だ。
未だに驚くような事が多々あるぞ。
「だからって家事の手伝いサボったりしないようにしなさいよ? 亜美だって言う疲れたりするんだし」
「そういうとこはちゃんと人間なんだよなあ」
「なははー」
本人に言ったら「当たり前だよ。 私を何だと思ってるのかな?」とか怒ってきそうだ。
「そういえば亜美姉はどうして緑風のバイトをしなかったのかー? あんなに緑風のパフェ好きなのにー」
「あー……亜美はね、食べる専門なのよ。 パフェは好きだけど作ったりするのは違うっていうか……作ってる内に食べたくなるからダメらしいわ」
「なはは!」
「あいつ、そんな理由で……」
確かに目の前にパフェがあったらすぐに食べちまいそうだからなあ……。
多分、緑風では一生働けないな。
「ちなみに甘い物を売るお店は全部無理だって自白してたわよ」
「なははは!」
「甘党過ぎるだろ……」
我が嫁ながら少し心配になるな。
健康とかちゃんと気を付けてるんだろうな?
何だかんだでバイトに復帰したのであった。
「遥だ。 また今度コーヒー飲みに行くぜ」
「フルーツパフェ食べに行くよ」




