第2313話 2人の関係
1日の家事分担を決めている今井家。
☆夕也視点☆
1月11日の水曜日だ。
「夕ちゃんは今日は買い出しと洗濯をよろしくね」
「おう」
「私は?」
「希望ちゃんはお仕事頑張ってね!」
「家事はやらなくても良いの?」
「うん。 大丈夫だよ」
「はぅ」
「希望は幼稚園児の相手をして疲れて帰ってくるんだし、帰ってきたらのんびりしてれば良いんだよ」
「わかったよぅ」
希望は休みの日は家事を手伝うが、平日はいつもこんな感じだ。
何か手伝いたいのだろうが、そこまで手が回らないというわけでもない。
「さて。 先に洗濯物を洗濯機に放り込んでから買い出しに行きますかね」
「そっちは任せるよ。 希望ちゃんはお仕事行ってらっしゃい」
「いってきますぅ」
希望を見送ってから俺も洗濯へ向かう。
さて、サクッと終わらせて買い出しだ。
◆◇◆◇◆◇
「じゃあ行ってくらぁ」
「お願いねぇ」
亜美に必要な物を聞いてから買い出しへと出かける。
玄関から外に出ると、偶然にもお隣さんも出かけるところだったようだ。
「あら夕也じゃない? 何処か行くの?」
「買い出しだ。 奈々美は何処行くんだ?」
「同じく買い出しよ」
奈々美もどうやら買い出しらしい。
「そうか。 じゃあな」
「ちょっと待ちなさいよ」
「何だよ? 俺は買い出しに行かなきゃならんのだが?」
「だから私も買い出しだって行ってるでしょうが」
「だから何だよ?」
「一緒に行くのよ」
「……しゃあないな」
「んじゃ行くわよ」
「へいへい」
全くしょうがない奴だ。
1人で買い出しも出来ないのかこいつは。
「あんた、今失礼な事考えたでしょ?」
「何の事だか」
「買い出しぐらい1人でできるに決まってじゃない。 せっかく目的が同じなんだから一緒に行きましょって話よ。 わかる?」
「へいへい」
「なんかムカつくわね」
奈々美は「まあ良いわ」と、小さく溜め息を吐きながら隣を歩き出す。
俺達が住む街で買い物をしに行くとなると、専ら駅前の辺りまで行く事になる。
駅前にはスーパーがあり、駅前商店街に入れば八百屋や肉屋、魚屋等の専門店もあるのだ。
田舎街な方とは言え、その辺が充実しているのはありがたいところだ。
「今井家の夕飯は何なの?」
「ふむ? メモを見た感じ……何だろうなこれ?」
「どれどれ」
俺が手に持っているメモを横から覗き込む奈々美。
無駄に近いな……。
「ふうむ……餃子ね」
「餃子? 餃子なんて冷凍のやつ買えば良いだろ?」
「まあ私はそうするけど、亜美はいつも手作りよ?」
「知らなかった……」
今井家で食べる餃子は亜美のお手製だったのか。
あいつも無駄に拘りが強いよな。
「後はワンタンスープと棒棒鶏かしら。 中華ね」
「なるほどな……。 ところで顔が近いんだが?」
「ん? 別に良いじゃない? 何を今更恥ずかしがってんのよ?」
メモから離れていつもの距離感に戻る。
奈々美は結構距離感バグってるな。
「幼馴染なんてこんなもんでしょ?」
と、今度は腕を組んでこちらに身体を預けてくる。
「おい。 これはさすがに幼馴染の距離感では無いだろ?」
「そう? これぐらい幼馴染なら普通じゃない?」
腕組んで歩くのはもう恋人以上の距離感だと思うのだが……。
奈々美の中ではそうでもないのだろうか?
「大体、私達ってその辺の幼馴染より深い関係でしょ?」
「そうか?」
深い幼馴染ってなんだ?
「キスもしたしアレだって何回かしたわよ? ほら、普通の幼馴染がそこまでする?」
「しないな?!」
「でしょ? 何なら今でもキスとかアレ出来るわよ?」
「お前、旦那いるだろうが。 俺にももう奥さんいるんだが?」
「でも出来るわよ?」
「はあ……この話はもう終わりな」
「わかったわよ」
奈々美は一体何を考えてんだか……。
◆◇◆◇◆◇
駅前に到着し、まずはスーパーで買い物をする事にする。
肉や野菜は後で駅前商店街にある専門店で、新鮮な物が安く手に入る。
だから、スーパーではそれ以外の物を買う事になる。
「なあ、何でついて来るんだ?」
「え? あんたを監視してんのよ。 ちゃんと目的の物を買えるかどうか」
「お前、俺をバカにしてるだろ? 宏太じゃないんだからそんなバカなわけないだろ?」
「比較対象が世界の最低辺の時点でたかが知れてるわよ」
「お前、自分の旦那に対してあまりにも辛辣な評価を下すんだな……」
「事実だし」
宏太よ、お前は本当にこいつと結婚して良かったと思ってるのか?
今頃「ゆりりんか前田さんにしとけば良かった」とか後悔してるんじゃないだろうか?
「あんた、今失礼な事考えたでしょ?」
「何の事だか」
「顔に出てるっつーの。 本当、ポーカーフェイスの出来ない男ね」
「ポーカーフェイスしてるつもりなんだが」
「そんなんだからババ抜きでいつも麻美と最下位争いすんのよ」
「関係無いだろ……おっと、麦茶パックと……」
奈々美とバカみたいな会話をしながら、必要な物を買い物カゴに放り込んでいく。
奈々美はそんな俺を見て「ふむ。 買い出しぐらいは余裕で出来るのね」と、小さく呟く。
やっぱり俺の事をバカにしてやがるな。
◆◇◆◇◆◇
スーパーで買い物をし終えた後は、駅前商店街へ足を向ける。
肉屋と八百屋が目的地となる。
「何処までついて来る気だよ?」
「目的地が一緒なんだから仕方ないでしょ?」
「肉と野菜買うのか?」
「ロールキャベツにするんだもの。 肉と野菜いるでしょ」
「そらそうだ」
「何? 私と歩くの嫌なわけ?」
「嫌じゃないが、何か見張られてるみたいでやりにくいんだよなあ」
「監視してるもの」
「さっき言ってたな……」
「もう忘れたとか、やっぱりバカじゃない」
「うるせぇ」
そうこうしてる間に八百屋に到着。
「おう、らっしゃい! お? 夕坊に奈々美の嬢ちゃんじゃないか? 浮気かい?」
「ちげーよ。 たまたま買い出しのタイミングが被っただけ」
「私は別にどっちでも良いわよ?」
「あのなあ……あ、ネギ下さい」
「こっちはキャベツね」
「あいよ。 しかし、2人も小さな頃から仲良いよなぁ。 2人が結婚してた未来もあったんじゃないのか?」
「あったかもしれないわねー。 ね、夕也?」
「知らん。 まあ、ちょっとは可能性あったかもなぐらいだ」
「はははっ! 2人も結構お似合いだぞ!」
「俺は宏太みたいに頑丈に出来てないからな……奈々美と結婚なんてしたら1日でボロボロになる」
「まるで私が旦那をサンドバッグにするみたいな……」
「してないと言えるか?」
「……あ、キャベツは一番良さそうなのお願いね」
「あいよ!」
話逸らしやがった。
八百屋で買い物を終えた後は、肉屋へ移動。
肉屋のおばちゃ……お姉さんからも俺と奈々美の関係をイジられながら、さっきと似たようなやりとりを交わす。
俺と奈々美って周りから見るとそんな仲が良く見えるんだろうか?
夕也と奈々美の関係は恋人以上夫婦未満?
「奈央ですわ。 確かに異様に距離が近いですわよね?」
「特に奈々ちゃんがね。 まあ私達皆、特別な関係ではあるけどねぇ」




