第2308話 奈々美と紗希
帰省組も戻ってきて賑わう「皆の家」
☆奈々美視点☆
1月4日の水曜日よ。
帰省していた皆も続々と戻って来て、いつもの賑わいを取り戻している「皆の家」。
やっぱり何だかんだで落ち着くわね。
「おう、宏太はどうしたよ?」
「あら、おはよう夕也。 宏太は今日から仕事よ」
「そうか。 自主練に付き合わせようと思ったんだが……春人も居ないし1人でやるか」
亜美も奈央も春人も、朝から視察の仕事とやらで居ないのよね。
美夕や界人を私達に任せて行っちゃったわ。
「きゃはは。 久しぶりに今井君を襲うチャンスね」
「なはは」
「はぅ」
「あんた達、まだそれやってんの……? てか、紗希はもう二児の母でしょうが」
「きゃは」
「か、勘弁してくれよ紗希ちゃん」
「旦那さんも目の前にいるのによくやるな……」
と、皆に呆れられる紗希。
この子は昔から変わらないわ。
「全く……あら? この映画、今日からなのね」
リビングのテレビでは、とあるアクション映画の続編の番宣が流れていた。
「観に行きたいわね」
「なはっ?!」
「ぬっ?!」
私が見たいって言った途端、麻美と夕也がビクッとしたわ。
私と映画に行くと危ないからだと思うけど。
「別について来なくても良いわよ」
そこまで嫌がられてまで一緒に来てほしくないわよ。
「きゃは。 私が一緒に見に行こっかー?」
「はあ? 真希ちゃん美希ちゃんは誰が見るのよ?」
「そりゃこんだけ人がいれば大丈夫っしょ」
「うーん……」
と、リビングに集まっている顔ぶれを見回してみる。
麻美に夕也、渚、遥に柏原君に、マリア、天堂さん星野さんか。
まあ、こんだけ居れば大丈夫でしょうけど。
「たまには育児を忘れて息抜きして来ても良いんじゃないか?」
「そうだぞー! 蒼井先輩も行ってきてはー?」
「私ゃ息抜きにトレーニングしてるから別に良いんだが」
「じゃあ、紗希と私で行きますか」
「りょ!」
「紗希ちゃん、これはアドバイスなんだが……映画館では席を奈々美から離して座れ」
「きゃは? 何かわからないけど、りょ!」
「本当、離れて座りなさいよ? 私、映画観てる間は暴れるみたいだから」
「きゃ、きゃはは」
◆◇◆◇◆◇
という事で、赤ちゃんズを皆に任せて映画を見に行く事にした私と紗希。
ここから最寄りの映画館は市内まで出る必要がある。
自分だけならバイクで向かうけど、紗希もいるから今日は電車ね。
「そいや、何気にあんたと2人で出かけるって初めて?」
「かもしれないわね」
私が2人で出かけるのって、亜美か麻美が多いものね。
「何か新鮮ね」
「きゃはは。 映画観たらショッピングもするっしょ?」
「当たり前じゃない」
映画だけ観て帰ってくるなんて事は絶対有り得ないわ。
当然、ショッピングモールでショッピングもするわよ。
「ところでさ、あんた映画観る時暴れるって、そんな無茶苦茶暴れるわけ?」
「いや、自分じゃわかんないのよね。 無意識にこう手が出るみたい。 亜美曰く『絶叫マシン』だそうよ」
「きゃはは……助言通り席離して座るわ」
「ケガしたくなかったらそうしなさい」
夕也や宏太なら問答無用で隣に座らせるけど、さすがに女友達はダメね。
◆◇◆◇◆◇
映画館に到着した私達は、早速チケットを買って開演を待つ。
「紗希ってこういうアクション映画観たりするの?」
「まあ、それなりにねー。 このシリーズは前作も観たわよん。 アクション映画ってさ、結構必殺スパイクのヒントとかが見つかるのよ」
「はあ?」
アクション映画からスパイクのヒントとか言ってるけど……そんなのあるわけないでしょ……。
「あのメテオなんちゃらとかいうスパイクも?」
「んや? あれはマンガ」
「あ、そ……」
紗希のバレーボールって意外とファンタジーなのね。
「間もなく6番シアター開演致します。 チケットをお持ちの方は入場をお願いします」
「始まるみたいね。 行きましょ」
「りょ」
紗希と連れ立って劇場へ入っていく。
紗希は私から一つ離れた席に座った。
まあ、これだけ空いてれば大丈夫でしょ。
☆紗希視点☆
奈々美とアクション映画を観に来たわけだけど、今井君や奈々美本人からの助言として、席を離して座れと言われたわ。
奈々美の奴、どんだけ暴れるってのよ。
さて、今日観るアクション映画は有名なシリーズの3作目。
激しいアクションシーンが見所よん。
格闘シーンもあって手に汗握るわ。
シュッ! シュッ!
何か隣から風切り音が聞こえてくるんだけど……。
チラッと左に視線を向けて見ると、奈々美がボクサー顔負けのパンチを繰り出しているのが見えた。
「(なるほど。 そりゃ今井君もあんな助言するわけね)」
納得したところで私は映画に集中することにするのだった。
☆奈々美視点☆
「面白かったわね!」
「そうね。 てか、あんた疲れてないの?」
「何が?」
「ほ、本当に無意識にやってんのね」
「あ、もしかして暴れてた?」
「そりゃもう、チラッと見ただけだけど良い感じのジャブとストレート打ってたわ」
「へ、へぇ」
やっぱりそうなのね。
気を付けようとは思ってても出ちゃうのね。
「ま、気にしたって仕方ないわよ。 ショッピング行くわよん」
「そうね」
「まだ春服とか早いわよね」
「そねん。 まだ出てないわね。 まあまだ冬用の服も着れるっしょ」
「最近は3月でも冷えるしね……」
「きゃはー」
という事で、3月でもまだ着られそうな感じの冬服をメインに見て回るわ。
◆◇◆◇◆◇
「これなんてどうよ?」
「良いわね。 生地も厚すぎないし、かと言って防寒性は十分そう。 見た目も紗希に合うわ」
「ふふん」
「さすがデザイナーね。 センスあるわあんた」
「デザイナーである事が関係あるかは知らないけどね。 奈々美の選んだそれも良いじゃん。 暑い時は袖を外して短くできるやつっしょ?」
「そうみたい」
「あんたは何着ても似合うモデルタイプだから、服選びも楽しいっしょ?」
「それはどうか知らないけど、服選ぶのは楽しいわよ」
亜美にもよく「何でも似合って羨ましい」と言われるけど、そんなにかしらね?
「さ、もっと服買うわよん!」
「妊娠中は我慢してたものね!」
「そそ!」
というわけで、お互いに3着ずつ新しい服を買うのだった。
ち、ちょっと使い過ぎたかしら?
◆◇◆◇◆◇
近くの喫茶店に入ってコーヒータイム。
「いやあ、楽しんだわね」
「そうね。 たまには息抜きしろって言うのも間違いないわ」
「育児、何だかんだ大変だものね。 真希と美希は双子だし」
「苦労も2倍よね」
「そそ」
1人だけでも大変なのに、紗希は双子を面倒見ている。
しかも、もう仕事も再開してるとか何とか。
よくやるわよ本当。
「今度はママさん組皆で息抜きしたいわね。 子供は他の皆に任せてさ」
「賛成ね」
他の3人もちゃんと息抜きさせてやらないといけないわね。
今度、亜美あたりに計画してもらいましょ。
奈々美と紗希も割と仲良し。
「紗希よ。 まあ、色々と張り合う事もあるけどね」
「付き合い長いものね」




