第2307話 母親談義
宮下と新田を実家に連れて来た亜美達。
☆亜美視点☆
お昼を鰻の六兵衛さんで食べた後、私達は軽く東京ショッピングを楽しんで両親の家に戻って来た。
もちろん、宮下さん、可憐ちゃん、新田さんの3人も一緒だ。
「ただいまだよー」
「ただいまだよぅ」
「お邪魔します」
「うわはは。 お邪魔しますー」
「まーすー」
「賑やかだな」
ちなみに、お父さんとお母さんには先に連絡を入れてあるので心配無いよ。
「あらあら、いらっしゃい。 宮下さんは何年ぶりかしら?」
「何年ぶりですかなー。 うわはは」
「美智香姉……ちょっとは他所行きの顔をしてよ……」
「良いの良いの。 さ、狭い所ですけど上がって」
「失礼します」
「うわはは。 お母さん、相変わらず若いですな!」
宮下さんも相変わらずなキャラである。
「ここどーこー?」
可憐ちゃんは、初めて入った家を見てキョロキョロとしている様子。
ま、それもそうか。
「その子が可憐ちゃんね? 可愛いわねー。 よちよち」
お母さんは可憐ちゃんの前で屈んで、頭をよしよしと撫で回す。
可憐ちゃんはニコニコとしながらそれを受け入れているよ。
「2歳? 大変じゃない? イヤイヤ期」
さすがは育児経験のあるお母さん。
宮下さんの育児に対しても、先輩として相談に乗れるだろう。
「大変です! もう、何でも自分でやりたがるんですけど、一応家の中だけで収まってますかな」
「亜美と一緒ね」
「え、そうなの?」
「えぇ。 外では大人しかったわ。 まるで外では人の目があるのを理解してるみたいに」
「あぅ」
「亜美、その頃から人外だったのか」
「人間だったよ?!」
「は、はぅ」
「可憐ちゃんも頭の良い子なのかしら?」
「どうでしょ。 でも最近は知育玩具で遊ばせたりしてて物覚えも早いような?」
「亜美みたいなのになるのか?」
「まるで私がおかしいみたいに……」
とはいえ、ずっと可憐ちゃんを見てきたけど成長が早いとは感じるね。
数年後にはどうなっているか、楽しみな子である。
「美夕はリビング?」
「ええ。 お父さんが見てるわ」
「2人共、こっちだよ」
「はいなー」
「美夕ちゃん待っててね」
宮下さん、新田さんを連れてリビングへ向かうよ。
可憐ちゃんは何故か私のお母さんが抱っこしている。
い、いつの間に……。
「お邪魔しています」
「お邪魔します! やや! お父さんもお若い!」
「いらっしゃい。 狭い家だけどゆっくりしていってください」
「いやいや、広くて過ごし易い家です!」
宮下さんも一応お世辞は言えるようだ。
「美夕ちゃーん」
「あーう」
「あ、相変わらず可愛い」
2人は早くも美夕にメロメロだ。
遅れて部屋に入って来たお母さんと可憐ちゃん。
可憐ちゃんと美夕を対面させてみると。
「あかちゃ! かれんのあかちゃ!」
「いやいや、可憐の赤ちゃんじゃないわよ?」
「かれんのあかちゃ、ちがう?」
「うん、違うよ」
「はーい」
と、宮下さんと可憐ちゃんのやり取りが何とも微笑ましい。
「イヤイヤ期に入ってるにしては素直で良い子じゃない?」
「家では結構凄いんですよ、これが」
「そうなの?」
「うん。 ジュースをコップに注ぐのをやりたがったり、私が洗濯物を畳んでるのを見てやりたがったり。 それをダメだって叱ると大泣きしちゃってまあ大変」
「でもまだ可愛い方じゃないかしら? 亜美なんて包丁握りたがったりしたわよ」
「うわわ……」
「亜美ちゃんは2歳児の頃から意識高い系だったのぅ?」
「し、知らないよ……わ、私の小さな頃の話はもうしなくて良いよ……」
「うわはは」
◆◇◆◇◆◇
美夕と可憐ちゃんを交互に抱っこしながら、子育て話に華を咲かせるお母さんと宮下さん。
「今後気を付ける事とかありますかね?」
「そうね。 危ない事じゃなければ、可憐ちゃんの『やりたい』を尊重してあげる事ね。 イヤイヤ期っていうのは、自我が育っていってる証拠なの。 それを無理に『ダメ!』っ叱りつける事は、成長の阻害にもなるわ」
「なるほど」
「勉強になるねぇ」
「さすが、天才を育てた母なだけあるな」
「亜美ちゃんの場合は、勝手に天才が育っただけだよぅ」
「そうね」
「うーん。 褒められてるんだよね?」
どういう扱いをされているのか、今一つ判断が難しいのである。
「ただ、ケガしたりして危ないことは叱ってやめさせなきゃダメよ。 ただ叱るんじゃなくて、危ないことなんだって教えながらね」
「なるほど!」
「勉強になるねぇ」
私も2年後には通る道だし、しっかり聞いておかないとだよ。
「ちなみにこのイヤイヤ期って、いつぐらいまで続くものなんですかね?」
「3歳〜4歳ぐらいまで続く子がいるらしいわね。 まあでも、ピークは2歳後半って言われてる通り、少しずつ落ち着いてくる感じよ」
「今が正にピークか……」
魔の2歳と呼ばれる時期のようです。
私も美夕でそれを経験する事になるんだろう。
やはり子育てに楽な時期は無いのである。
「紗希っちなんか双子だし大変そう」
「た、たしかに」
イヤイヤ期も2倍になると考えると、今からゾッとするね……。
「ところで、宮下さんと新田さんは夕飯は?」
「ああ、食べて行きたいのは山々なんですが、旦那が家にいるのでそれまでには帰らなくては」
「呼びなさい」
「お、お母さん?」
「はぅ」
「こうなったら皆で外食よ」
「ええ……」
「うわはは! 亜美っちのお母さん面白いですな!」
全く何を考えてるのかな……。
結局お母さんに言われるがまま、三山君と新田さんの旦那さんを呼ぶ事になってしまうのであった。
◆◇◆◇◆◇
夕方になり、近くにある西條グループ傘下のレストランへとやって来たよ。
「な、何かごめんなさいだよ。 うちの母が無理に呼んじゃって」
「ま、まあ気にしてないが」
「賑やかで良いですし」
「あ、ありがとう」
三山君と新田さんの旦那さんは心が広いねぇ。
「どちらの旦那さんも素敵な方ね」
「ありがとうございます」
「うわはは。 良かったね、大君」
「あのなあ」
「さ、好きな物を頼んで食べてねぇ。 ここは西條グループのレストランだから、これが使えるからねぇ」
と、私は西條グループプラチナカードをチラチラとさせる。
これがあればこのお店の食事代はかなり安く済むよ。
「我が子ながら恐ろしいな……」
「あの西條グループ総帥令嬢の専属秘書なのよね?」
「うむだよ。 ささ、遠慮無く」
私が促すと、皆はそれぞれ食べたい物を注文し始めた。
可憐ちゃんには小さなお子様ランチもあるよ。
夕食中には、お母さんから三山君達旦那組にも育児の何たるかを説いていた。
なるほど、この為に2人を呼んだんだね……。
「あの、私はまだ子供居ないんですけど……」
と、新田さんは小さく手を挙げる。
とはいえ、確か今は妊活中だったはず。
近いうちに必要になる知識だし、今聞いておくのも良いだろう。
結局三山君達が解放されたのは、食後1時間経ってからであった。
皆を車で送り、私達が千葉へ帰れたのは22時を回っていたのであった。
やはり先輩ママの知識は頼りになる?
「奈々美よ。 私のイヤイヤ期ってどんなだったのかしら?」
「ウホウホ期の間違いじゃないかな?」




