第2306話 せっかくだから呼ぼう
早朝散歩中の亜美と猫達。
☆亜美視点☆
1月3日だよ。
昨日は東京の両親の家に新年の挨拶に来て、そのまま一晩泊まっているよ。
朝早くに起きて、マロンとメロンを散歩へと連れ出している。
「うぅ。 冷えるねぇ」
1月の早朝は冷え込む。
猫は炬燵で丸くなるなんて歌まであるのに、うちの愛猫2匹は元気に歩いているよ。
「本当に変わった子達だよ」
マロンが私の当時通っていたペットショップへとやって来た時に、私はこの子に一目惚れして足繁くペットショップに通っていた。
マロンも、良く来る私を覚えていたのか私が見に行くと嬉しそうに擦り寄ってきていたっけ。
思えばあの時から賢さの片鱗が見えていたねぇ。
「公園に到着。 んー。 やっぱり朝早くは人が疎らだね」
とはいえ、犬を連れた人や、スウェットスーツを来た中年女性等が見られるよ。
「ここで少し遊ばせてから帰ろ」
マロンとメロンは、私の目の届く範囲で勝手に遊び始めた。
とても賢いので、私が見えない所へは絶対に行かないのである。
「やっぱり変わった猫だよ」
◆◇◆◇◆◇
散歩を終えて帰って来ると、お母さんと希望ちゃんが起きてきて朝食の用意を始めていた。
私は出る幕は無さそうだねぇ。
「あ、そうだ。 お母さん、私達お昼は外に食べに行くからいらないよ」
「あら、そうなの? わかったわ」
「その間はまた美夕の事お願い」
「任せなさい!」
何かやたら張り切ってるよ。
まだ美夕を独占し足りないようである。
「今日夕飯はどうするの?」
「食べて帰るよ」
「了解」
さて。 このまま台所に居ても仕方ないし、リビングにでも行こっと。
「美夕、リビング行くよぉ」
「あー」
うん、まだ寝起きで半分ボケてそうだ。
その内に目を覚まして元気に泣き出すだろう。
リビングはまだ無人のようだ。
夕ちゃんもお父さんもまだ起きてきていないみたいだね。
「全く、お寝坊さんだね」
「みゃ」
「なー」
「おお、マロン達はリビングに来てたんだね」
散歩から帰って来た後は自由に放しておいたんだけど、2匹揃ってリビングの暖かい場所を見つけて丸くなっている。
やっぱり猫は丸くなるのである。
「適当な時間に夕ちゃんとお父さんを起こしに行がないと」
まだ朝食も出来てないし、もう少し寝かせておいてあげるとしよう。
「うー……」
「あ、そろそろだね……」
「うっ……うーっ……うわーん!」
「ほら泣き出したよ」
朝起きて一発目のグズりは大体お腹が減った時のグズりなんだよね。
「ミルク持ってくるからねぇ」
こんな事もあろうかと、散歩に行く前にミルクを作って小型恒温槽に保管してあるのである。
「この小型恒温槽、中々に便利だね」
ミルクを適温で保管しておくだけではなく、色々な物に応用出来る凄いやつなのである。
ちなみに「皆の家」には大型の物があって、皆がミルクを保管していたりする。
「よいしょ」
この小型恒温槽、持ち運びするにはちょっと重いのだけど、車に乗せられるぐらいにはコンパクト。
電源がいるのはネックだけどね。
シャカシャカ……
「粉が沈澱するから振って溶かし直さないとだよ。 よし。 美夕、お待たせぇ」
「うえーん!」
「はい」
「あむ……ちゅぱちゅぱ」
「哺乳瓶咥えたらすぐに泣き止むんだよね……」
実は嘘泣きしているのでは?
いやいや、さすがにそんなわけないよね。
「さて。 今のうちに夕ちゃんとお父さんを起こしに行こうかな」
もう少しで朝ご飯も出来るだろう。
にしても、よく寝るねぇ我が家の男性陣は。
◆◇◆◇◆◇
朝食を食べ終えた私達は、やはりリビングで寛ぎタイムに入る。
私達はお昼前にお出かけする予定があるので、今はのんびりタイム。
「そだ。 せっかく東京に来てるし……」
という事で、パパパッとスマホを操作してみる。
「送信」
「はぅ? 何してるの亜美ちゃん?」
「宮下さんと新田さんに連絡を入れてるんだよ。 2人共東京に帰ってきてるからね。 一緒にお昼どうかなって」
「宮下さんって、あの面白い子よね?」
お母さんは以前にも一度宮下さんに会っているんだよね。
ちゃんと覚えてるんだ。
「そそ。 可愛い子供産んでるんだよ」
「美夕ちゃんより二つ上のお姉さんだよぅ」
「へぇ」
ピロリン!
「お、宮下さんと可憐ちゃんは出て来れるみたい。 新田さんはまだわからないね」
「可憐ちゃんっていうのが宮下さんのお子さん?」
「うん。 えっとね、これだよ」
私が撮影した最近の可憐ちゃんの写真を、お母さんにも見せてあげる。
お母さんは私のスマホを覗き込み、「あら可愛い!」と反応した。
「だよねぇ。 美夕も負けてないけどねぇ」
「そこは親補正が入ってないか?」
「どうだろうね」
確かに我が子が一番だというフィルターはかかっているかもしれないね。
◆◇◆◇◆◇
お昼になったので、歩いて駅まで行き二駅電車で移動する。
ここで宮下さんと可憐ちゃん、そして新田さんと合流した。
「やほほ」
「おー、亜美っち達ー!」
「あーみー」
「ほわわーん」
「あ、亜美ちゃん……あ、新田さんもこんにちはだよぅ」
「皆さん、こんにちは」
「おう」
と、挨拶している間にも宮下さんは私の周りをキョロキョロと見ている。
「んん? どしたの宮下さん?」
「美夕ちゃんは?」
「美夕は両親に見てもらってるんだよ。 ごめんね」
「あちゃー。 せっかく顔が見られると思ったのにぃ」
「じゃあ、お昼食べたら家に来なよ。 お母さんに可憐ちゃんの写真を見せたら、是非実物が見たいって言ってたし」
「おお! 是非行かせていただきたい」
「もう、美智香姉は……ま、まあ私も美夕ちゃんの顔は見たいですけど」
「あはは。 どうぞどうぞ。 さて、お昼食べに行くよ」
「いやいや。 この辺だと鰻の六兵衛かしらね」
「おお! 宮下さん知ってるんだ?」
「都姫女子に通ってた頃はたまに行ってたわよ。 ね、千沙っち?」
「うん。 あそこの鰻も絶品だし」
地元では結構有名なお店らしい。
美味しかったもんねぇ、あそこの鰻重。
という事で移動開始だ。
「亜美や地元民が美味いってんなら、かなり期待出来るな」
「ぅん。 楽しみだよぅ」
夕ちゃんと希望ちゃんも、きっと度肝を抜かれる事間違い無しである。
◆◇◆◇◆◇
「らっしゃいやせ!」
「幼児同席の6人で」
「案内します」
このお店、どうやら幼児が居ると言えばちゃんとそれ用の席に案内してもらえるらしい。
「宮下さん、良く知ってたね?」
「去年来た時に教えてもらってね」
「なるほど」
こういうちょっとしたお客様への気配りも大事だね。
これは西條グループにも横展開出来そうである。
私達は皆で同じ鰻重を注文して待機。
店内には炭火で焼かれる鰻の香ばしい匂いが漂っている。
「この匂いだけでも期待できるな」
「ぅん」
「タレがこの店秘伝なんだって」
「宮下さん、やけに詳しいねぇ」
「学生の頃に通ってた時、店長さんに聞いたのよ。 レシピは教えてくれなかったけど」
「そりゃ、秘伝だからな……」
にしても店長さんとそんなお話が出来るなんて、とんでもないコミュリョクである。
10分後に運ばれて来た、熱々の鰻重に舌鼓を打つ私達。
「美味い!」
「だよぅ!」
「宏ちゃんと遥ちゃんみたいになってるし……」
「うわはは! でも美味しいし仕方ない!」
「しかかかなーい」
可憐ちゃんも、宮下さんから小さな鰻の切れ端をもらって満足そうだ。
「亜美っち達はいつまで東京に?」
「今晩には帰っちゃうよ」
「そか。 まあ、また近いうちに千葉に行くわね。 他の赤ちゃん達も見たいし」
「来月には宏ちゃんの誕生日があるから、集まるとしたらそこかな?」
「ほう。 予定空けとく!」
「私も空けときます!」
どうやら東京の2人も、千葉の赤ちゃんズにメロメロになっているようである。
この後は2人を連れて両親の家に戻るけど、美夕の取り合いになったりしないよね?
宮下さん、可憐ちゃん、新田さんを両親の家にご招待!
「希望です。 美夕ちゃんと可憐ちゃん、どっちも可愛いよぅ」
「うんうん。 でも美夕の方がちょっとだけ可愛いよ」




