第2303話 希望の中には
希望の祖父母の家で過ごす亜美達。
☆亜美視点☆
元日の今日は、希望ちゃんの祖父母の家に新年の挨拶に来ているよ。
「美夕ちゃんは可愛いのぅ」
「ですねー」
先程から2人は美夕にベッタリである。
美夕も相手してもらえてかなり喜んでいるようだ。
「今日は夕飯食べ行くのよね?」
「ぅん」
「明日は東京の両親の家に挨拶に行ってくるよ」
「美那さん達は元気かえ?」
「うん。 元気元気。 早く美夕を連れて来いって言ってる」
先月にどうしても顔が見たいと言うから連れて行ったばかりなんだけどねぇ。
「孫が可愛いのはもう仕方ない事なんじゃよ。 のんたんが産まれたと聞いた時のワシらもそんな感じじゃった」
「ですねー」
やっぱり皆そうなんだねぇ。
「亜美も友人の子供が産まれた時はそんなんだっただろ」
「……たしかに!」
可憐ちゃんが産まれた時は私も「すぐ会いたい」思っていたもんねぇ。
なるほど、お父さん達の気持ちが今完全に理解出来たよ。
「亜美ちゃんは子育てで何か困ってる事は無いかい?」
と、お婆さんが優しく訊ねてくれる。
思い返してみても今のところは特に思い当たらないね。
「大丈夫だよ」
「亜美ちゃんは子育ても完璧なんだよぅ。 夕也くんもちゃんと協力してるし、私もいるからね」
「うんうん。 助かってるよ」
「おお、そうかいそうかい。 家族で力を合わせていくのは大事な事さね」
「まあ、俺が出来る事なんて知れてますけど……」
「そんな事無いよぅ! 出来なかったお掃除やお料理だって、一杯練習して出来るようになったよぅ! 夕也くんは凄い!」
「サ、サンキュー希望」
「ふんす」
「う、うわーん」
「おお……美夕ちゃんが泣いてしもうた」
「あ、あはは。 希望ちゃんの声にびっくりしたのかな?」
「は、はぅっ。 ご、ごめんね」
お爺さんから私の腕に移される美夕。
「よーしよし。 怖かったねぇ」
と、優しくあやすと、あっさりと泣き止む。
「さすがは母親ですねー」
「さのう。 あの小さかった子が立派になったもんだ」
お爺さんの中では、初めて会った小学6年生の頃の私の姿が印象に残っているのだろう。
当時の私の利口さには、お爺さんもかなりの衝撃を受けたらしい。
「時にのんちゃん。 今でも亜美ちゃんの旦那さんに横恋慕しとるのかの?」
「は、はぅっ?!」
私のいるところで何て質問をしてるんだろ?!
「あ、う、は、う」
「あはは。 希望ちゃんは今でも夕ちゃんの事が大好きなんだよ。 ね?」
「う、うん……」
「そうか。 いや、良い見合いの話もあってのう……のんちゃんにその気があればと思ったんじゃが」
と、頭をぽりぽりと掻きながら、お爺さんは「この話はお断りするしかないのう」と、苦笑いする。
「お、お見合い?」
希望ちゃんが首を傾げる。
「そうじゃ。 ワシが通っとる病院の院長の孫での、中々の良い若者なんじゃが」
「おお……これまた凄い人が候補に挙がったねぇ」
「お見合いはしないよぅ」
「わかっておるよ、のんちゃん。 ちゃんとお断りしておくから安心おし」
「ご、ごめんね。 せっかく持ってきたお話を」
「ええんじゃ。 のんちゃんの気持ちが一番大事なんじゃ」
希望ちゃんの気持ちは今でも夕ちゃんへと向いている。
私と夕ちゃんが結婚し、子供も産まれた事で何か気持ちに変化が起きるかとも思ったけど、全くそんな事は無くて今も夕ちゃんだけを見ている。
未だに私は希望ちゃんに甘くて、「たまには夕ちゃんと2人で出かけて来なよ」みたいな事を平気で言う。
まあ、正妻の余裕とも言うのかな?
「にしても、院長の孫なんて中々の人だよ。 希望ちゃん、玉の輿だよ」
「お金はいらないよぅ……」
「ふん。 可愛い希望を何処ぞの馬の骨ともわからん男にやれるか」
「夕ちゃんは希望ちゃんの何なの?」
「何だろうな? 大事な人って感じだ」
「は、はぅ」
夕ちゃんも相変わらずです……。
◆◇◆◇◆◇
夕飯をお爺さん達と一緒に食べる頃には、夕ちゃんもかなりお爺さん達と打ち解けたみたいです。
「飲めるなあ、旦那さんは」
「いやいや……」
お爺ちゃんと一緒にビールなんか飲んじゃってるよぅ。
お婆ちゃんはちょっと困ってるし。
「ごめんなさいね」
「あ、あはは……大丈夫だよ。 多分」
「普段こんなに飲んでないよぅ? もう止めた方が良くない?」
「だ、だねぇ。 夕ちゃん、それくらいにしとかないと帰れないし、明日に響くよ」
「お、おう……そうだな……」
「ははは。 付き合わせてすまんかったのう」
「いやいや! 楽しく飲ませてもらいました」
「仲良くなっちゃって」
「だね」
「さて、そろそろ私達はお暇するよぅ」
「おお、そうか。 また来なよ」
「家がすぐそこだから、いつでも来れるよぅ」
本当に近くに引っ越して来てくれて助かるよ。
◆◇◆◇◆◇
お酒で酔っ払っている夕ちゃんを何とか支えながら、とりあえずは家より近い場所にある「皆の家」へとやって来ました。
さすがに誰もいないかと思いきや?
「きゃはは!」
「なはは!」
「騒がしいわね……」
「何で2人でこんなうるさく出来るんだよ……」
「何かごめん」
何と、紗希ちゃん、麻美ちゃん、奈々ちゃん、宏ちゃん、柏原君がリビングで寛いでいた。
更に玄関の名札を見ると、遥ちゃんとその旦那さんも来ているはずだ。
「皆、何でここに集まって?」
希望ちゃんが首を傾げる。
「帰省っつっても、実家すぐそこだからな」
「そうそう。 夕飯食べてとりあえずお暇しちゃったわ」
「きゃはは。 いつでも帰れるし」
「なはは、そゆことー」
という事みたいです。
何だかんだ考える事は一緒みたいだよ。
「遥ちゃん達は?」
「2人ならトレーニングルームに居るんじゃない?」
「こんな時間からトレーニングしてるんだねぇ……」
「本当、筋肉バカよねー」
遥ちゃんと旦那さん、暇があったら何かトレーニングしてるからねぇ……。
「あら、夕也どうしたのそれ?」
希望ちゃんに肩を借りながらフラついている夕ちゃんを見て、奈々ちゃんが心配そうに訊いてくる。
「お爺ちゃんに沢山お酒を飲まされてね」
「酔い潰されちゃったんだよぅ」
「うぅ……気持ち悪い」
「うわわ……」
「なはは!」
「きゃはは!」
「た、大変ね」
「まあ、その内に治ると思うよ」
とりあえず夕ちゃんをソファーに寝かせて自分達も座る。
いつもに比べると随分と少人数ではあるけど、それでもこうやって集まってくるこのお屋敷。
本当に私達にとっては無くてはならない物となった。
「亜美姉達は明日は東京行くのー?」
「うん。 お父さん達にも挨拶しに行かないと」
「はぅはぅ」
「これ、お母さんからおばさんにって」
奈々ちゃんは何やらお土産袋を私に手渡してくる。
どうやら年末に何処かに旅行へ行ったらしく、そのお土産だそうだ。
「らじゃだよ。 ちゃんと渡しておくよ」
お母さんと藍沢家のおばさんも、いつまでも仲が良いなぁ。
羨ましいよ。
「おえ……気持ち悪い……」
「うわわ……大丈夫?」
「うぅ」
夕ちゃん、明日は本当に大丈夫かなあ?
希望はまだ夕也の事が大好きなようだ。
「遥だ。 いやー、一途だなぁ」
「凄いよねぇ」




