第2294話 白百合物語
お笑いライブが終わり、演劇までの幕間。
☆亜美視点☆
大爆笑だったお笑いライブが終了し、次は演劇があるとの事だよ。
現在は幕間である。
「はあはあ。 わ、笑い過ぎでもうダメだよ」
「そんなに爆笑してるのあんただけだと思うわよ? まあ、最後のコンビは面白かったけどさ」
「さ、最後の二人……ぷっははははだよ!」
「ダメねこれは」
私は笑いのツボに入ってしまい、まだ爆笑しているよ。
奈々ちゃんと希望ちゃんは、ちょっと呆れたような顔をしながらこちらを見ているよ。
ピロリン!
「あ、何かメールかな?」
スマホが鳴ったので通知をチェックすると、どうやらベッドからの通知なようだ。
「むむ。 美夕が泣いてるみたいだからちょっとベッド開けるね」
「あら、美夕ちゃんが第一号ですわね」
「うん。 ちゃんと機能してるみたいだね」
ピッ
開閉ボタンを押してベッドを開けると、美夕の泣き声が聞こえてきた。
「凄いわねこのベッド。 全然泣き声聞こえなかったわよ」
「うわーん!」
「よちよち。 オムツかな? ちょっと換えてくるよ」
「いってらー」
泣いている可憐を抱っこしてゆっくりと会場を出る。
「俺も行く」
「夕ちゃん? 別に大丈夫なのに」
「亜美に任せっきりてのもな」
「うーん。 まあ、そこまで気にしなくても大丈夫だよ。 本当に困った時は頼るからね」
「お、おう」
とりあえず、ささっと奈央ちゃんのお部屋に戻り美夕のオムツを換えるよ。
「てやや」
「早業だな……」
「慣れたもんだよ。 夕ちゃんもオムツ換えるのは慣れたよね?」
「まあな」
結構な頻度で夕ちゃんもオムツ交換をしてくれているからねぇ。
助かる助かるだよ。
「ついでだからミルクも上げとこ。 またすぐに泣き出したら大変だからね」
西條グループが開発したミルクセラーなる設備からミルクを取り出す。
まあ、作ったミルクを一定温度で保管しておける恒温槽である。
「ちゅぱちゅぱ」
「西條グループ何でも作るよな」
「まあ、色々な産業に手を広げてるからねぇ。 奈央ちゃんの秘書になってからグループ企業のリストを見てびっくりしたぐらいだよ」
「だ、だろうな」
本当に何でもやってて、本当にこの企業必要なの? とか思ったりもしたぐらいである。
「ちゅぱちゅぱ……きゃっきゃっ」
「お、ミルク飲み終わったみたいだぞ」
「うん。 じゃあ戻ろっか。 劇始まっちゃうよ」
「だな」
「あ、あと、ダンスは一緒に踊ってね?」
「当たり前だろ。 まあ、希望と麻美ちゃんも言い寄って来ると思うが」
「その二人は許可だよ許可」
「相変わらずか」
「うん」
二人の夕ちゃん愛は、私では止められないのである。
◆◇◆◇◆◇
「ただいまだよ。 美夕はここで寝ててね」
「あーう?」
「可愛いねぇ。 後でまた抱っこちてあげまちゅからねぇ」
ほっぺをすりすりしてチューまでしてあげるのであった。
「もうすぐ劇が始まるわよ」
「良かった良かった。 間に合ったよ」
美夕をベッドに寝かせて席に着く。
司会の黛姉妹の場繋ぎがちょうど終わったらしく、舞台から降りてこちらへやって来るところのようだ。
「ほんまに戻って来よった」
「あ、あはは」
弥生ちゃんと黛姉は顔を合わせるとすぐに口喧嘩を始めるんだよね。
まあそれで仲がめちゃくちゃ悪いって事も無いんだけど。
「場繋ぎご苦労様です」
「お、ありがとさんやでゆりりん」
「こんなんに労いの言葉はいらんで」
「何やと?!」
「やるか?」
うーん。 仲がめちゃくちゃ悪いって事も無いはず……。
「劇が始まるわよ」
「お、楽しみね」
「お笑いライブが微妙だっただけにね……」
「はぅ」
「なはは」
舞台上では演劇「白百合物語」の冒頭が始まっている。
主人公は二人、透子と千影という女性。
この二人の同姓恋愛をテーマにしたオリジナル劇なようだ。
私の周りには、所謂同姓恋愛をしている人達は居なかった為、とても興味がそそられるテーマである。
二人は同じ大学に通う先輩後輩の関係のようだ。
同じサークルで活動する仲らしいが、先輩の千影はクールビューティーで、同姓からの人気も高いという設定らしい。
そんな千影に、もう一人の主人公透子も惹かれているというストーリーだ。
透子自身は何処にでもいる普通の女性という感じのようだ。
他人に優しく、誰にでも柔らかく接する人らしい。
「ああ、千影先輩素敵だなー」
「私がどうかしたかしら?」
「あ……す、すいませんでした! 何でもありません!」
ある日、一人でお昼を食べながら独り言を呟いていた透子と、そこに不意に現れた千影。
千影は普段、他の女性から一歩引いた場所から自分を見ている事の多い透子の存在に気付いていたらしい。
次第に二人は学内で共に行動する事が増えるが、透子に対する他の女性からの当たりが冷ややかなものに変化してしまう。
「うーん。 やっかみだねぇ」
「あるあるよね」
次第に傷付いていく透子だが、千影の優しさがそれを救う。
遂に二人は同姓でありながら恋人に。
「う、うわわ! す、凄いキッスシーンだよ」
「じ、女性同士であんなキスすんの、初めて見るわよ……」
「きゃは、あれ舌入ってるわね」
うわわ。 強烈な衝撃を脳天に食らってしまったよ。
ちょっとドキドキしてるよ。
更にその後は女性同士でちょっと際どいシーンなんかもあり、もうこっちは心臓バクバクである!
最終的に二人は大学を卒業後に一緒に暮らす事になり、幸せに過ごしたのだそうだ。
めでたしめでたしだよ。
「はあ……はあ……」
「し、知らない世界だわ……」
「か、身体が熱くなっちゃうわね」
「そこまでかあ?」
この辺は男性と女性で意見が分かれそうではある。
男性組はそれ程の衝撃は受けてはいないようだ。
「私と奈々ちゃんは一歩違ってればあんな風になってた可能性あるのかな?!」
「そ、それは知らないわよ?!」
「きゃはは。 私は遥とならあったかも」
「ね、ねぇよ」
ああ、確かに遥ちゃんは中学高校時代、千影みたいに女生徒から人気があるカッコイイ女子だったからね。
何かそういうロマンスがあった可能性はあるよ。
「いやいや。 ええ劇見せてもろたな」
「さっきの微妙なお笑いライブの口直しには最高だったわね」
お笑いライブをやっていた芸人さん達、ちょっと可哀想だね。
私は結構ウケてたんだけどねぇ。
「さて、この後はビンゴ大会ですわね」
「来たよ来たよ! 遂にビンゴ大会だよ!」
「また亜美ちゃんのIQが下がるよぅ」
「今年もパフェ神様ー?」
「それに加えて美夕もいるからねぇ。 Wパワーだよ」
「今年もビンゴ勝負やで亜美ちゃん」
「むふふ。 臨むところだよ弥生ちゃん」
今年は勝利の女神である美夕まで味方につけている私。
もはや必勝の構えと言える。
「なはは。 今年もナンバープレート賞獲るぞー」
「麻美、任せたで」
「はぅ。 今年も一等賞なのかなぁ……」
この二人にだけは勝てる気がしないのは言うまでもない。
白百合物語を観賞して興奮気味の女性陣なのであった。
「紗希よん。 いやあ、私の知らない世界だわ」
「だねぇ。 まだドキドキしてるよ」




