第2271話 自分のプレースタイル
華麗にメテオストライクを決めた渚だが?
☆渚視点☆
クリムフェニックスとの試合も2セット目に突入や。
まず浜中さんサーブから始まるプレーを一本で切り、その後の眞鍋さんのサーブから始まるプレーでブレイク。
しかも私が華麗に決めたで。
「ナイス渚ー! メテオストライクとはやるなー!」
「ああ、神崎先輩の見様見真似やけどな」
ハッキリ言うて、私の高さから打つ真下打ちは神崎先輩程の威力はあらへんけどな。
そやけどまあ、意表を突くぐらいは出来たやろ。
「そやけど、何や私には合わへんな」
「そりゃそうでしょ」
私の呟きに佐伯先輩に反応する。 一体どういう意味なんや?
「あなた、自分のプレースタイルはわかってるでしょ?」
「私のプレースタイル……?」
「なはは! 眞鍋さんナイサー!」
「あとは自分で考えな」
「は、はい」
パァンッ!
眞鍋さんのサーブで試合再開。 今回もフローターで揺さぶりにいかはったけど、やはりというか簡単に拾われる。
新田さん、もうサーブほとんど落とさへんな。
「……」
にしても、私のプレースタイルてか……。
「渚、集中しろー」
「っと! すまん!」
考え事しとる場合やなかった。
試合に集中せなあかんわ。
ボールは既に浜中さんの頭上に上がっとって、アタッカーがテンポをズラして助走に入っとる。
麻美は得意の嗅覚とやらで既に宮下先輩の前に移動しとる。 二枚ブロックには天堂さんが入っとるから、私はクイックに対してブロックに入ろか。
クイックに来とるんはミアさんか。
「よっ!」
ミアさんのジャンプに合わせて私もブロックに跳ぶも、こっちにトスは飛んで来ず。
やっぱりというか、麻美が先読みした宮下先輩の方にトスが上がっとるわ。
「うわはは!」
「ちょいさー!」
さ、騒がしいな、あの二人は……。
パァンッ!
「ぬわわー!」
麻美と天堂さんのブロックは、ストレートを塞ぐブロックでクロス打ちを誘導しとったみたいやけど、宮下さんはそれでもストレートに打って綺麗にブロックアウトにしてはる。
あれが宮下先輩のプレースタイルっちゅうわけや。 高校時代からブレへん人やで。
「美智香姉は相変わらず癖だらけで攻撃が読めぬー……何であんなフォームからあの技巧派になるのかー」
「謎やな」
「バカと天才は紙一重なんや」
ネットの向こうからお姉ちゃんが笑いながら返してきた。
さ、さすがにそら言いすぎやろ。
「うわはは」
笑ったはるはし……。
とりあえずこれで1-2。 ブレイクが出来た分リードや。
クリムフェニックスの次のサーバーはお姉ちゃんやな。
1セット目で高速ナックルサーブを打ってきたけど、雪村先輩は簡単に拾ってはったし、ここは任せて大丈夫やろう。
「ほないくでぇ!」
こっちにまで聞こえる声を出してサーブのモーションに入るお姉ちゃん。
あの感じは小細工無しのパワーサーブやな。
パァンッ!
雪村先輩はそれに対しても慌てずに反応し、無駄の無い動きでサーブを拾う。
パァンッ!
「ナイスやよ雪村はん」
「本当、安心して見てられるわね」
「凄いです……」
雪村先輩はお姉ちゃんの強烈なパワーサーブも難なく上げて見せる。
この人ももう完全に天井人やな……。
さて、攻撃に集中せな。
今回も同時高速連携のサインは無し。
普通に助走に入るか。
「渚はん!」
また私やな。
エースとして信頼してくれとるんやろうか?
「ブロックはミアさんとキャミんの二枚……」
「ほなここはこれや!」
ストレートを塞がれてクロスに打ちたくなるとこやけど、あえてのストレート打ちや!
ブロックアウトプレー狙うたるで!
パァンッ!
「ワハハ! シャットアウト!」
「くっ!? あかんかー!」
やっぱり宮下先輩のようにはいかんな。
「こら!」
ポカッ……
「へっ?」
プレーが途切れたタイミングで後ろから頭を小突かれた。
後ろを振り返ると、そこには眉を吊り上げた佐伯先輩が腕を組んで立っていた。
「何してんのよあなた」
「いや、ストレート行けるかと思いまして……」
「あれ、宮下さんの真似でしょ」
「うっ……エースやったらあれぐらいは出来んとあかんかと……」
「はあ……」
佐伯先輩は小さく溜息を吐いて首を横に振る。
な、何や?
「渚ー。 交替だってー」
「は、はあ? わ、私が交替?」
「うむー。 高嶺さんと交替ー」
今のプレー、そんなあかんかったやろか?
「ちょいと頭冷やして考えてきなさいな。 自分のプレースタイルってのをね」
「プレースタイルて……」
交替の指示が出た以上しゃーない。
ベンチに戻るしかないか……。
◆◇◆◇◆◇
高嶺さんと交替してベンチに座ると、前田さんが話しかけてきはった。
「どうして下げられたかわかりますか?」
「さっきのプレーが良くなかったってだけやないんですか?」
「それだと50点ですね」
「50点なんか……」
「今日の渚さん……というか、今シーズン全般なんですが、らしくないプレーが多いです」
「らしくないプレー……?」
「はい。 さっきのブロックアウトを狙ったプレーといい、その前の神崎さんの真似をしたプレーといい」
「ポイントを取ったプレーもダメ出しされるんかいな……」
「はい。 ダメ出しします」
「佐伯先輩にも、自分のプレースタイルを考えろて言われたけどやな……」
「佐伯さんはさすがにわかってらっしゃいますね」
「わからん」
「わからんかー……」
「ナギサはもっとパワーでおしていくプレーヤーだとオモイマス」
マリエルさんにそう言われると、確かそやけどとはなる……。
けど、パワーで押していくだけやったらその内に壁にぶつかると思うんやけど……。
「マリエルさんのおっしゃる通りです。 渚さんは本来パワーで勝負するプレースタイルです。 神崎さんみたいな高さで勝負するタイプでも、宮下さんみたいなテクニックで勝負するタイプでもないんです」
「うっ……。 そら、私には神崎先輩みたいな高さも、宮下先輩みたいなテクニックもあらへんけどやな」
「だからこそパワーで押していくんですよ。 それが渚さんの一番強いプレーなんです」
「ウムウム」
マリエルさんもそれには同意してはるらしい。
「渚さんが目指すのは、神崎さんでもなければ宮下さんでもない。 パワーだけで世界と渡り合っている奈々美さんのようなプレーです」
「あ、藍沢先輩みたいなて……さすがにあそこまでのゴリラパワーはありませんて」
「確かに、あれはゴリラですが……渚さんもちゃんと体幹を鍛えてフォームを正せば十分にパワーアップは可能です」
「ほ、ほんまかあ?」
「ほんまです。 私のデータを見ても、まだそこら辺の伸び代満点なので」
ま、前田さんがそう言うんやったら信用してもええか?
私が目指すべきプレーは藍沢先輩か……。
佐伯先輩もそう言いたかったんやろうな。
ピッ!
佐伯先輩がスパイクを決めて2-3になったところで選手交替のブザー。
「もうわかりましたね?」
「へ? もう戻ってええの?」
「当たり前です。 エース抜きで勝てる程の余裕がある相手ではないですから」
「そやな。 よっしゃ、行ってくるで!」
「はい」
私のプレースタイルはパワーで押していくか。
エースに抜擢されて、ちょっと器用な選手にならなあかんと焦ってもうてたんやな。
もう迷わへんで!
自分のプレースタイルを再認識する渚であった。
「遥だ。 まあ奈々美みたいには無理だろうけどな」
「ゴリラだからね」




