第2268話 エースとして恥ずかしい
こちらは試合を「皆の家」で観戦している亜美達。
☆亜美視点☆
こちら「皆の家」のリビングである。 現在私達は、アルテミスドームで行われている千葉西條アルテミスと東京クリムフェニックスの試合を、ネット配信で観戦中である。
リビングの巨大モニターに映し出される試合を、手に汗握りながら応援中だ。
本当はアルテミスドームに行って応援したいところではあるけど、生後間もない赤ん坊達を連れて行くわけにはいかないのである。
「麻美、凄い活躍してますわね」
「本当に亜美ちゃんの代わりみたいになってんじゃん」
「麻美は元々天才肌だからな。 努力の結果が出るのもやけに早いんだ」
遥ちゃんが言うように、麻美ちゃんはかなりの天才肌である。
どんな事でも、教えてあげたり練習したりすると割とすぐに習得してしまう。
今回の試合の為にレシーブの特訓に付き合ったけど、数日であのレベルにまで上がっている。
「麻美先輩もかなりの壊れ選手ですね」
「マリアが言うのはダメでしょ……」
「私は普通側では?」
私達は皆して「無い無い」と、首を横に振るのであった。
◆◇◆◇◆◇
☆渚視点☆
タイムアウト明け、9-8と逆転した私らアルテミス。
その立役者は、清水先輩の代わりとしてプレーしとる麻美や。
ブロック、レシーブ、アタックと、ほんまに清水先輩並みの活躍を見せとる。
尚もサーブは佐伯先輩や。 あの人も色々と小技を使いながらクリムフェニックス相手に健闘してはる。
あのアンダーサーブともサイドサーブともつかん、斜め下からの打ち出しサーブでミアさんを狙い打ちしとる。
「私ももうちょい活躍せな、アルテミスのエースの名が廃るで」
佐伯先輩はまたもやミアさん狙いのサーブを打ち込む。
さすがにクリムフェニックスも嫌になったか、ミアさんが避けてお姉ちゃんが代わりサーブレシーブを受ける。
「ま、そうくるわよね」
佐伯先輩もわかっていたと言わんばかりにそう言いながらポジションにつく。
こうなるとミアさんを起点とした同時高速連携が選択肢に入ってくる。
守る側としては嫌な攻撃や。
やってる方は楽しいんやけどな。
「麻美、頼むで!」
「おー! 頑張ってはみるー」
私には理解出来へんけど、麻美は「匂い」で相手の攻撃を読む事が出来るらしい。
実際に麻美の読みは当たる事が多いし、嘘ではあらへんねやろうけど、意味わからんで。
「むむー! 美智香姉!」
「はい!」
「ワカリマシタ!」
麻美の言葉を聞いて動く天堂さんとマリエルさん。
直後にミアさんが宮下先輩へとトスを上げる。
当たっとるし……。
「うわはは! 無駄よー!」
パァンッ!
しかし宮下さんはお家芸であるブロックアウトプレーで点を取ってくる。
あれをやられたら麻美でも清水先輩でも雪村先輩でもレシーブするんは不可能や。
「美智香ナイスや。 今、麻美っちに対抗出来る唯一の武器やよ」
「うわはは! 任せたまへ」
「なはは。 美智香姉にあれやられたらレシーブにいけないー」
9-9になりサーブはクリムフェニックスに移る。 次のサーブは浜中さんやな。
特別強力なサーブを持ってはるわけやないけど、油断は出来へん。
「このサーブレシーブは任せろー!」
浜中さんがサーブの体勢に入ると、麻美は何か鼻をくんくんさせ始めよった。
多分、嗅覚を研ぎ澄ましとるんやろ。 ようわからんけど。
パァンッ!
「ここー!」
パァンッ!
「なはは! よゆー!」
麻美は事も無げに浜中さんのサーブを拾って見せると、そのまま眞鍋さんの背後に向かって行きよる。
麻美のレシーブの技術が、試合中にどんどん上がっていっとるような気がする。
「おっと、私も行かな」
今回は高速連携のサインは出てへんな。
眞鍋さんもトスの技術はかなりのもんやけど、西條先輩みたいに毎度完璧ってわけにもいかへんらしい。
そやから、頻繁には高速連携のサインを出す事はあらへん。
「和香はん!」
「よっしゃー!」
パァンッ!
佐伯先輩が眞鍋さんからトスを受けてスパイクを打つ。
しかしながら、通常の攻撃ではミアさんにブロックで防がれてまう確率が高い。
今回は……。
ピッ!
「はわ……巧いでス」
佐伯先輩は宮下先輩みたいなブロックアウトプレーで得点してみせる。
こ、この人も飄々としてかなりやらはるなぁ。
ほんま高校時代はほんまに運が無かっただけで、実力は全国レベルやったってのも頷けるで。
これで10-9やけど、私、今んとこあんまり目立った活躍出来てへんな。
こんなんでエースとか言うの恥ずかしいで。
何より、麻美が私より目立つのが何や腹立つわ。
「私も頑張らな」
「なはは! 頑張りたまへ渚ー!」
ポンポンと私の背中を叩きながら爆笑する。
ほ、ほんまに腹立つわー。
「チームプレー大事にしなさいよ」
「はーい」
「わかっとります」
ローテーションしてサーバーはマリエルさんになっとるで。
フランス代表のMBであるマリエルさんは、ブロックの技術は当然世界レベルや。
サーブも結構キレのあるサーブを持ってはるで。
パァンッ!
おお、ええサーブ打たはるわ。 そやけどそのサーブはクリムフェニックスの新田さんに軽く処理される。
あの人も日本代表のL。
レシーブ技術は世界レベルや。
「ナイス千沙っち」
「私が上げまス」
ミアがセットアップするっちゅう事は、クリムフェニックスは高速連携を仕掛けてきよるか。
麻美は既に集中して嗅覚を研ぎ澄ましとる。
あれでほんまに匂いとかわかるんかいな?
「むー! また美智香姉か!」
そう言うと麻美は宮下先輩の走り込んでくるスロットに向かう麻美。
またタイミングがミアさんがトスを上げる寸前ってのが凄いわ。 あのタイミングやったらトスの出し先変えるの無理やろ。
「ミチカさん!」
「任せたまえミアっち!」
「勝負だ美智香姉ー!」
「うわはは!」
何やめっちゃ騒がしいなぁ、あの二人。
まあ、今に始まった事やないか。
パァンッ!
「ぬわー! ストレート抜かれたー!」
ピッ!
ここで10-10の同点。
中々差がつかへんな、この試合。
◆◇◆◇◆◇
その後、16ー15まで試合は進み私らが先にタイムアウトを取る。
「ふぅ……」
水分補給をしながら前田さんの話に耳を傾ける。
「良い流れではあるんですが、クリムフェニックスもさすがに強いですね」
「中々引き離せないー」
「まあ、元々戦力的にはあちらさんが上やし、むしろようリードして終盤に入れたもんですわ」
「確かに」
「麻美と佐伯先輩の活躍のおかげやな」
「なはは!」
「とはいえ、このままじゃやばいわよ。 眞鍋さんの言う通り力はあっちの方が上。 流れを掴めてるはずなのに引き離せないって事は」
「流れがあっちに向いたら、一気にやられてしまいますね」
「ぬー……」
リードしてるとはいえ油断は禁物って事やな。 まずは1セット目を取らなあかんか。
力の差を流れで埋めるアルテミス。
「奈央ですわよ。 一瞬たりとも気の抜けない試合ですわよー」
「アルテミスの皆、精神的に疲れるだろうねぇ」




